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合流
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だが、悲しみに溺れているアンズの耳にはそんな顧問の教師の声など届く事はなかった。
丁度その頃、お互いの誤解がとけたノエルと謎の女生徒コウ。スズフミ、イフ、ジェネの三人。
いきさつは簡単なものだった。かまが風陣剣に姿を変えたのはまだ辺りに残っていた黒い影の邪気に反応した為だった。
対するコウの方はいきなり剣を構え、自分に歩み寄ってきたノエルに恐怖を覚えたのだ。黒い影との戦いの後だ無理もない。
そしてスズフミ、イフ、ジェネの三人はノエルがコウの妄想を具現する化能力で体育館の壁に叩きつけられたさいに生じた大きな音に驚き真理の身を案じて駆けつけたのだ。
ユウナはノエルにどんな顔をして会えばいいのかわからなく体育館裏には現れなかった。
『それで…そのあんたの言うアンズ先輩っていうのが追い返した…と』
『…はい』
ノエルの言葉にコウは頷く。
『私達以外にもいたんだ…不思議な能力を持つ人たち…』
スズフミがノエルの方をみる。
『そうみたいだね…でも今は、そんなことよりコウちゃんの言う先輩の方が心配だよ』
『うん』
『ノエルの言うとおりだね』
ノエルの言葉にジェネとスズフミもうなずく。
『ん…イフ、どうかした?』
ノエルは先ほどから元気なく俯いているイフに向かって問いかける。
『…えっ』
イフが顔をあげるとノエルはイフが腹に手を添えているのに気付いた。
『お腹…痛いのか?』
ノエルが心配そうに声をかける。
『…ううん…うっ』
イフの何かに耐えるような口調。
『ふう…イフはここで休んでな』
『…えっ…わたしなら大丈夫だよ』
『…スズ、イフをお願い』
ノエルはスズフミの方に振り返ると言った。
『わかった。ノエルも気をつけて…イフ歩ける?』
スズフミはノエルと顔をあわせ、頷きあった後、イフに歩み寄り手を差し伸べた。
グゥゥ~
『…あ』
他の者達の視線が、顔を赤くしたイフに集まる。
『……。』
ひと時の沈黙。
恥ずかしさから顔をあげる事の出来ないイフ、泣き出しそうになる。
『ふふっ、イフはお腹が空いてたんだ』
『…うぅ』
そんなスズフミの言葉にイフの顔は更に赤みを帯びる。
『…はぁ、イフらしいっていうかなんて言うか…まぁ、何でもなくてよかったよ…』
『ごめんなさい』
ノエルの言葉にイフは照れくさそうに頭をさげる。
『あのね、アンズちゃん達の様子を見に行ったらみんなでどっか食べに行きませんか?』
ジェネが笑顔を浮かべながら皆をぐるりと見回した。
『さんせー!!』
イフが満面の笑みで手をあげる。
『おいっ…ていうかアンズちゃんってコウちゃんの言うアンズのこと…ジェネしってんの?』
『うん知ってる。わたし達二年生の間では有名…えっとねぇ、常に成績はトップで、運動神経も抜群、それに空手が茶帯でトロンボーンが…』
長くなりそうなジェネの話を途中で終わらせるべくノエルは口を挟む。
『ありがとうジェネよ~くわかった。でも、そんな凄い奴がうちの学校にいたなんてわたし知らなかったな』
『私も知らなかった…すごいね』
『うん』
『あの…』
感心しあうノエルとスズフミの会話にコウが遠慮気味に介入する。
『コウちゃん、どうかした?』
『コウでいいです』
『…わかった…で、なに?』
『…そろそろいきませんか、アンズせんぱいが心配…です』
消えてしまいそうなコウの言葉。涙声にも聞こえる。
『あっ…ごめんコウ。イフ、ジェネ、みんなで食べるって話はあと。スズ行こうっ』
『うん』
ノエルは捲し立てるようにそう言うと、
『…陸上部部室だよね?』
とコウに付け足すように確認を促した。
『はい』
場所は変わって、陸上部部室。
丁度その頃、お互いの誤解がとけたノエルと謎の女生徒コウ。スズフミ、イフ、ジェネの三人。
いきさつは簡単なものだった。かまが風陣剣に姿を変えたのはまだ辺りに残っていた黒い影の邪気に反応した為だった。
対するコウの方はいきなり剣を構え、自分に歩み寄ってきたノエルに恐怖を覚えたのだ。黒い影との戦いの後だ無理もない。
そしてスズフミ、イフ、ジェネの三人はノエルがコウの妄想を具現する化能力で体育館の壁に叩きつけられたさいに生じた大きな音に驚き真理の身を案じて駆けつけたのだ。
ユウナはノエルにどんな顔をして会えばいいのかわからなく体育館裏には現れなかった。
『それで…そのあんたの言うアンズ先輩っていうのが追い返した…と』
『…はい』
ノエルの言葉にコウは頷く。
『私達以外にもいたんだ…不思議な能力を持つ人たち…』
スズフミがノエルの方をみる。
『そうみたいだね…でも今は、そんなことよりコウちゃんの言う先輩の方が心配だよ』
『うん』
『ノエルの言うとおりだね』
ノエルの言葉にジェネとスズフミもうなずく。
『ん…イフ、どうかした?』
ノエルは先ほどから元気なく俯いているイフに向かって問いかける。
『…えっ』
イフが顔をあげるとノエルはイフが腹に手を添えているのに気付いた。
『お腹…痛いのか?』
ノエルが心配そうに声をかける。
『…ううん…うっ』
イフの何かに耐えるような口調。
『ふう…イフはここで休んでな』
『…えっ…わたしなら大丈夫だよ』
『…スズ、イフをお願い』
ノエルはスズフミの方に振り返ると言った。
『わかった。ノエルも気をつけて…イフ歩ける?』
スズフミはノエルと顔をあわせ、頷きあった後、イフに歩み寄り手を差し伸べた。
グゥゥ~
『…あ』
他の者達の視線が、顔を赤くしたイフに集まる。
『……。』
ひと時の沈黙。
恥ずかしさから顔をあげる事の出来ないイフ、泣き出しそうになる。
『ふふっ、イフはお腹が空いてたんだ』
『…うぅ』
そんなスズフミの言葉にイフの顔は更に赤みを帯びる。
『…はぁ、イフらしいっていうかなんて言うか…まぁ、何でもなくてよかったよ…』
『ごめんなさい』
ノエルの言葉にイフは照れくさそうに頭をさげる。
『あのね、アンズちゃん達の様子を見に行ったらみんなでどっか食べに行きませんか?』
ジェネが笑顔を浮かべながら皆をぐるりと見回した。
『さんせー!!』
イフが満面の笑みで手をあげる。
『おいっ…ていうかアンズちゃんってコウちゃんの言うアンズのこと…ジェネしってんの?』
『うん知ってる。わたし達二年生の間では有名…えっとねぇ、常に成績はトップで、運動神経も抜群、それに空手が茶帯でトロンボーンが…』
長くなりそうなジェネの話を途中で終わらせるべくノエルは口を挟む。
『ありがとうジェネよ~くわかった。でも、そんな凄い奴がうちの学校にいたなんてわたし知らなかったな』
『私も知らなかった…すごいね』
『うん』
『あの…』
感心しあうノエルとスズフミの会話にコウが遠慮気味に介入する。
『コウちゃん、どうかした?』
『コウでいいです』
『…わかった…で、なに?』
『…そろそろいきませんか、アンズせんぱいが心配…です』
消えてしまいそうなコウの言葉。涙声にも聞こえる。
『あっ…ごめんコウ。イフ、ジェネ、みんなで食べるって話はあと。スズ行こうっ』
『うん』
ノエルは捲し立てるようにそう言うと、
『…陸上部部室だよね?』
とコウに付け足すように確認を促した。
『はい』
場所は変わって、陸上部部室。
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