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絶命
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同時刻。黒い影との戦いで力を消耗しつくしたアンズは、途中何度も倒れそうになりながらもやっとの事で陸上部部室の前まで辿り着いた。
『…はぁ、はぁ』
そして、開きっぱなしのドアから中へと足を踏み入れると顔をあげた。
アンズは鼻につく、何ともいえない匂いに顔を背けたくなる。
部室の電気をつける事も忘れ、窓から差し込む明かりだけを便りにアリサの姿を探す。
カツンッ
アンズの足に何か硬い物がぶつかる。
『…?』
アンズは気になり、屈(かが)んでそれを拾い上げる。
ぬめりという嫌な感触が全身を駆けめぐる。
『なにっ?』
カシャンッ
驚いたアンズはそれを放り投げる。
それはくるくると何かの上を回転しながら滑ってゆくと、
コンッ
と小さな音を立てる。何かにぶつかったのだろう。
『うっ…何これ』
赤くぬめぬめしたもの。アンズがそれを人間の血と理解するのに、大して時間はかからなかった。
(まさか…アリサ!?)
アンズの脳裏にアリサの笑顔がうかびあがる。
『アリサっ、アリサっ!!』
冷静さを無くし取り乱したアンズの両足は忙(せわ)しく動き回る。
ビチャッ、ツルッ
『きゃあぁぁっ』
ビチャンッ
アンズは何かに足を取られ、後ろに転ぶ。
学生服が液体を吸い取り、赤く染まる…それもまた人間の血だった。
『いやああぁぁぁっ、いやっ、いやっいやああぁぁ!!』
血で出来た赤い池の中でもがくアンズ。
丁度そんな時、アンズの視界に一人の人影が映った。
『ひっ…』
気持ちを落ち着かせ、人影を確認する。
『…アリサっ!?』
眠ったように床に座っている人影。…アンズの会いたかった親友、アリサに違いなかった。
『…アリサっ!!』
アンズは涙をぼろぼろとながしながら、アリサに抱きつく。
『…アリサっ…アリサっ…心配したんだから…うぅ』
アンズは感激のあまり更に抱く力を強める。
グラリッ
その力に耐え切れなかったのかアリサの体と共にアンズも前のめりに倒れ込んだ。
『…いや…いや…あ…いやああぁぁ!!』
…確かにアンズの腕の中にアリサという人間は存在していた…しかし器のみであった。
肉体の冷たさと、体重の軽さ、体にぽっかりと空いた複数の風穴から流れ出ている血液や混じっている臓器が彼女の死を物語っていた。
カチッ
スイッチを切り替えるような音と共に部屋全体が明るくなる。
『今の声どうしたの…うっ…き、きゃああぁぁっ!!』
様子を身に来た陸上部顧問の教師が目前に広がる地獄絵図に恐怖をいだく。
そして逃げるようにその場から離れた。
『…うぅ…あ…あぁ…アリ…サ…』
『…はぁ、はぁ』
そして、開きっぱなしのドアから中へと足を踏み入れると顔をあげた。
アンズは鼻につく、何ともいえない匂いに顔を背けたくなる。
部室の電気をつける事も忘れ、窓から差し込む明かりだけを便りにアリサの姿を探す。
カツンッ
アンズの足に何か硬い物がぶつかる。
『…?』
アンズは気になり、屈(かが)んでそれを拾い上げる。
ぬめりという嫌な感触が全身を駆けめぐる。
『なにっ?』
カシャンッ
驚いたアンズはそれを放り投げる。
それはくるくると何かの上を回転しながら滑ってゆくと、
コンッ
と小さな音を立てる。何かにぶつかったのだろう。
『うっ…何これ』
赤くぬめぬめしたもの。アンズがそれを人間の血と理解するのに、大して時間はかからなかった。
(まさか…アリサ!?)
アンズの脳裏にアリサの笑顔がうかびあがる。
『アリサっ、アリサっ!!』
冷静さを無くし取り乱したアンズの両足は忙(せわ)しく動き回る。
ビチャッ、ツルッ
『きゃあぁぁっ』
ビチャンッ
アンズは何かに足を取られ、後ろに転ぶ。
学生服が液体を吸い取り、赤く染まる…それもまた人間の血だった。
『いやああぁぁぁっ、いやっ、いやっいやああぁぁ!!』
血で出来た赤い池の中でもがくアンズ。
丁度そんな時、アンズの視界に一人の人影が映った。
『ひっ…』
気持ちを落ち着かせ、人影を確認する。
『…アリサっ!?』
眠ったように床に座っている人影。…アンズの会いたかった親友、アリサに違いなかった。
『…アリサっ!!』
アンズは涙をぼろぼろとながしながら、アリサに抱きつく。
『…アリサっ…アリサっ…心配したんだから…うぅ』
アンズは感激のあまり更に抱く力を強める。
グラリッ
その力に耐え切れなかったのかアリサの体と共にアンズも前のめりに倒れ込んだ。
『…いや…いや…あ…いやああぁぁ!!』
…確かにアンズの腕の中にアリサという人間は存在していた…しかし器のみであった。
肉体の冷たさと、体重の軽さ、体にぽっかりと空いた複数の風穴から流れ出ている血液や混じっている臓器が彼女の死を物語っていた。
カチッ
スイッチを切り替えるような音と共に部屋全体が明るくなる。
『今の声どうしたの…うっ…き、きゃああぁぁっ!!』
様子を身に来た陸上部顧問の教師が目前に広がる地獄絵図に恐怖をいだく。
そして逃げるようにその場から離れた。
『…うぅ…あ…あぁ…アリ…サ…』
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