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ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれ
第28話 ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれ
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切り落とされたカグツチの腕は、ピクリとも動かない。
あれほど再生能力に自信を持っていたカグツチは、その額には滝の如く脂汗を浮かべていた。
「な、何故だ!!何故俺の腕は治らない!?」
「人ならそれが普通だっての」
「俺の身体はナノマシンだろうがっ!!」
「言ったろ?生きてんなら殺しゃいいんだよ。そのナノマシンとやらが攻撃されたことに気付かない速度でな。楽に死んだぜテメーら」
「バ、バケモノがァ!!」
「テメーが言うかァ?」
逆にナギヨシは汗ひとつ零すことさえ我慢していた。精神的優位に立つことは勝利への絶対条件。これを好機と見たナギヨシは、すぐさま攻撃に転じた。
「オイオイ、どうしたァ?こっちは全身テメーの病原菌塗れで、超辛いんだぜ?」
「うるさいっ!!残り僅かの余生を静かに生きようとは思わないのか!この獣がァ!!」
カグツチにとって、アダホムラの弱点を突かれることは想定外だった。
何故ならば、ナノマシンの再生力そのものを殺す存在がいるなど思わなかったからだ。というより、最初から想定など出来るはずがなかったのだ。
これ以上ナギヨシの命を刈り取る一撃を食らうわけにはいかない。片腕では受け切ることが不可能と判断したカグツチは、情けなく、見苦しく、逃げの一点に集中する。
「テメーの脚を削ぎ落せばよォ!?この鬼ごっこも終わりだよなァ!素直に往生しやがれェ!!」
「……お前、まだ俺が逃げ続けてると思っていたのか?」
「ッ!?」
突如、強大な殺気をナギヨシは頭上に感じた。
彼は最小限の動きで体を逸らす。視界の端に捉えた拳は、頬掠めた。
その拳は地面に着弾し、大地を大きく揺らす。
「流石だな。手負いの獣よ……」
ミサイル如し拳の正体は、かつて戦ったロック族のオコイエだった。
ナギヨシのら連撃を受け、地に伏した男は屈辱を晴らさんと目の前に立ち塞がった。
「国に帰ったんじゃねーのかよ……オコイエくん」
「私は借りは返す律儀な男でね。君を沈めないと気が済まないんだ」
「オイオイ、テメーの雇い主は俺と一緒で異人類を殺し回った男だぜ?尊厳はねーのかよ」
「貴様たちと一緒にするなッ!!この男は我が仲間の支えとなった者だ」
「そうかい。だがな、一度裏切ったヤツはまた裏切るぜ。一生蝙蝠野郎だ」
「関係ない。私は貴様を殺すだけだァ!」
ナギヨシにオコイエが飛びかかる。気は纏っていない。だが、その体術は前回以上のキレを見せていた。
更に逃げ道を塞ぐようカグツチが立ち回る。
オコイエとカグツチの連携は、確実にナギヨシの行動を制限していく。
「……脚がっ!?」
極めつけはナギヨシの体内に蔓延るアダホムラ。ナギヨシは誤魔化しに誤魔化しを重ね、早期決着を狙っていた。
しかし遂に酷使され蝕まれた身体は彼の言う事を聞かなくなる。
ナギヨシの片膝が地に着いてしまったのだ。
「タイムリミットだ。平坂ナギヨシィ!」
それを見逃す程、彼らは甘くは無い。
有り余るほど明確な隙に、カグツチは残る左腕で身体に触れる。ナギヨシに寄生するアダホムラは活性化され、激痛を齎し、死へのカウントダウンを早めた。その証拠に斑模様は著しく増え、その勢いは顔半分に迫っている。
「壊れてくれるなよ?」
間髪入れずにオコイエの重い蹴りが、身体を貫く様な威力でナギヨシを襲う。
重力のまま壁面に叩きつけられ、ナギヨシはぐったりと力を失った。
「ヒヤリとはさせられた。だがさせられた程度だ。平坂ナギヨシ、安心しろ。お前が望む通り、もうすぐ女の元へ逝ける。あの世で俺の事を話すがいい。仇が取れなかったこともなッ!!」
オコイエは鋭い手刀で、ナギヨシの首をへし折ろうと攻撃をする。
確実な死が迫るナギヨシの目は……鋭く輝いていた。
カグツチは気付いてしまったのだ。それは決して死ぬ男の目では無いことを。この男にはまだ生きる術ががあることを。
それと同時に伸ばした腕があらぬ方向へ曲がっていることを理解した。
「ナギさん……1人でカッコつけてそのザマですか?」
「これだから格好つけるヤツは……。今のナギ、ちょーダサい」
カグツチの攻撃を止めたのは、ケンスケとニィナの2人だった。
『おらぁぁぁぁぁっ!!』
ニィナの蹴りとケンスケの木刀が、カグツチを吹っ飛ばす。ナギヨシの目には、その姿がやたら大きく映っていた。
「来るなら最初から言えよ」
「アンタが勝手に出ていったんでしょうが」
「だいたい、ナギが来るって言った。このダブスタ野郎」
2人は両手をナギヨシの前に差し出す。ナギヨシは、ニヒルに笑いその手を取って立ち上がった。
「いいのか?これは依頼でもなんでもねーぞ」
「だから僕たちがナギさんの依頼を受けます。報酬はボーナスの確約。それとクビの撤回」
「ワダツミのツケ3倍返し。あとブランド品」
「随分と理不尽な輩だな。なんて店の名前なんだ?」
ケンスケとニィナはニヤリと笑い、ナギヨシに向き直った。
『ゆりかごから墓場まで。この世にあるものなんでもござれの岩戸屋2号店だ馬鹿店主ッ!!』
あれほど再生能力に自信を持っていたカグツチは、その額には滝の如く脂汗を浮かべていた。
「な、何故だ!!何故俺の腕は治らない!?」
「人ならそれが普通だっての」
「俺の身体はナノマシンだろうがっ!!」
「言ったろ?生きてんなら殺しゃいいんだよ。そのナノマシンとやらが攻撃されたことに気付かない速度でな。楽に死んだぜテメーら」
「バ、バケモノがァ!!」
「テメーが言うかァ?」
逆にナギヨシは汗ひとつ零すことさえ我慢していた。精神的優位に立つことは勝利への絶対条件。これを好機と見たナギヨシは、すぐさま攻撃に転じた。
「オイオイ、どうしたァ?こっちは全身テメーの病原菌塗れで、超辛いんだぜ?」
「うるさいっ!!残り僅かの余生を静かに生きようとは思わないのか!この獣がァ!!」
カグツチにとって、アダホムラの弱点を突かれることは想定外だった。
何故ならば、ナノマシンの再生力そのものを殺す存在がいるなど思わなかったからだ。というより、最初から想定など出来るはずがなかったのだ。
これ以上ナギヨシの命を刈り取る一撃を食らうわけにはいかない。片腕では受け切ることが不可能と判断したカグツチは、情けなく、見苦しく、逃げの一点に集中する。
「テメーの脚を削ぎ落せばよォ!?この鬼ごっこも終わりだよなァ!素直に往生しやがれェ!!」
「……お前、まだ俺が逃げ続けてると思っていたのか?」
「ッ!?」
突如、強大な殺気をナギヨシは頭上に感じた。
彼は最小限の動きで体を逸らす。視界の端に捉えた拳は、頬掠めた。
その拳は地面に着弾し、大地を大きく揺らす。
「流石だな。手負いの獣よ……」
ミサイル如し拳の正体は、かつて戦ったロック族のオコイエだった。
ナギヨシのら連撃を受け、地に伏した男は屈辱を晴らさんと目の前に立ち塞がった。
「国に帰ったんじゃねーのかよ……オコイエくん」
「私は借りは返す律儀な男でね。君を沈めないと気が済まないんだ」
「オイオイ、テメーの雇い主は俺と一緒で異人類を殺し回った男だぜ?尊厳はねーのかよ」
「貴様たちと一緒にするなッ!!この男は我が仲間の支えとなった者だ」
「そうかい。だがな、一度裏切ったヤツはまた裏切るぜ。一生蝙蝠野郎だ」
「関係ない。私は貴様を殺すだけだァ!」
ナギヨシにオコイエが飛びかかる。気は纏っていない。だが、その体術は前回以上のキレを見せていた。
更に逃げ道を塞ぐようカグツチが立ち回る。
オコイエとカグツチの連携は、確実にナギヨシの行動を制限していく。
「……脚がっ!?」
極めつけはナギヨシの体内に蔓延るアダホムラ。ナギヨシは誤魔化しに誤魔化しを重ね、早期決着を狙っていた。
しかし遂に酷使され蝕まれた身体は彼の言う事を聞かなくなる。
ナギヨシの片膝が地に着いてしまったのだ。
「タイムリミットだ。平坂ナギヨシィ!」
それを見逃す程、彼らは甘くは無い。
有り余るほど明確な隙に、カグツチは残る左腕で身体に触れる。ナギヨシに寄生するアダホムラは活性化され、激痛を齎し、死へのカウントダウンを早めた。その証拠に斑模様は著しく増え、その勢いは顔半分に迫っている。
「壊れてくれるなよ?」
間髪入れずにオコイエの重い蹴りが、身体を貫く様な威力でナギヨシを襲う。
重力のまま壁面に叩きつけられ、ナギヨシはぐったりと力を失った。
「ヒヤリとはさせられた。だがさせられた程度だ。平坂ナギヨシ、安心しろ。お前が望む通り、もうすぐ女の元へ逝ける。あの世で俺の事を話すがいい。仇が取れなかったこともなッ!!」
オコイエは鋭い手刀で、ナギヨシの首をへし折ろうと攻撃をする。
確実な死が迫るナギヨシの目は……鋭く輝いていた。
カグツチは気付いてしまったのだ。それは決して死ぬ男の目では無いことを。この男にはまだ生きる術ががあることを。
それと同時に伸ばした腕があらぬ方向へ曲がっていることを理解した。
「ナギさん……1人でカッコつけてそのザマですか?」
「これだから格好つけるヤツは……。今のナギ、ちょーダサい」
カグツチの攻撃を止めたのは、ケンスケとニィナの2人だった。
『おらぁぁぁぁぁっ!!』
ニィナの蹴りとケンスケの木刀が、カグツチを吹っ飛ばす。ナギヨシの目には、その姿がやたら大きく映っていた。
「来るなら最初から言えよ」
「アンタが勝手に出ていったんでしょうが」
「だいたい、ナギが来るって言った。このダブスタ野郎」
2人は両手をナギヨシの前に差し出す。ナギヨシは、ニヒルに笑いその手を取って立ち上がった。
「いいのか?これは依頼でもなんでもねーぞ」
「だから僕たちがナギさんの依頼を受けます。報酬はボーナスの確約。それとクビの撤回」
「ワダツミのツケ3倍返し。あとブランド品」
「随分と理不尽な輩だな。なんて店の名前なんだ?」
ケンスケとニィナはニヤリと笑い、ナギヨシに向き直った。
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