底辺地下アイドルの僕がスパダリ様に推されてます!?

皇 いちこ

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#12 乳首は財産

12-4 乳首は財産

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買い物袋を提げ、預かっていた合鍵でエントランスを通り抜ける。
玄関でインターフォンを押す瞬間は、ライブ直前よりも緊張してしまう。今日こそはミスの無いよう、気を引き締めなければならなかった。

今夜の献立は、卵粥、豚汁、りんごヨーグルト。
昨夜のお詫びも兼ねて、紫音はアップグレードしたレシピに挑戦する目論見だった。
奏多との調理シミュレーションも完璧だ。りんごに関しては、八百屋の店長のおすすめにつられ、一玉400円近くの品種を奮発した。まずは、彼の胃袋に満足してもらう作戦だ。

「次からはそのまま上がっていい」

出迎えた主人は、普段とは違うラフな部屋着で現れた。
モノトーンのセットアップに、清潔なカーディガンを羽織った着こなし。一瞬覗いた鎖骨に、紫音の心臓が跳ね上がる。

「今日はえらく大荷物だな」

直矢はリビングへと案内する途中、背負われたバックパックを見遣った。
早速大胆な決意を見透かされたようで、紫音は頬を染める。

「今日は……泊まり込みでお世話をしても良いでしょうか」

この時間を選んだのは、会社から特別に許された休日を邪魔したくなかったから。
そして、実践してみたい試みがあったのだ。もちろん、彼の体調を案じてのこと。
主人の快諾を受け、安堵したのも束の間。

「直矢さん……!あれだけ安静にと言われていたのに……」

書斎スペースに広げられた書類の束。
そして、起動中のパソコンが目に入り、紫音は血相を変えた。一方、直矢は宥めるように肩を抱いた。

「しばらくリモート勤務にさせてもらったんだ。どうしても力を入れたい案件があってね」
「そう……だったんですね。でも、本当に無理はしないでください」

一ハウスキーパーが主人の行動を制限することはできない。
家で過ごす時間が増えるなら、くつろげる環境を整えるのが役割だ。作り置きを山のように作って、床をピカピカに磨き上げ、部屋着をふかふかに洗い上げて。
早急に仕事に取り掛かるべく、紫音は腕を捲った。

「ありがとう。夕飯がまだだったら、一緒に食べないか」
「え……僕もいいんですか?」

当初、食事は別々で構わないという話だった。
世間のハウスキーパーも同席しないのが常だが、主人のプライベートな時間を確保するためでもある。瞳を瞬かせる紫音に、直矢は困ったような微笑を向けた。

「付き合わせて悪いな。やはり……一人の食事は味気ないんだ」

涼し気な目元を緩ませた表情に、断れるはずもない。
直矢が先に入浴を済ませる間、無事に夕食は完成した。
紫音は食器を並べる最中も、喜びを隠すことができなかった。仕事とはいえ、憧れの男性の日常に入り込む権利を与えられたこと。そして、もう一度食卓を囲んで和やかな会話を交わせることが。

文字通り手間暇かけて作り上げた豚汁を、主人は絶賛した。
寝る間も惜しんで、ゴボウのささがきを練習した甲斐があったものだ。
こうしていると、直矢は随分とくつろいでいるように見える。スーツという鎧を脱いだせいもあるのだろうか。紫音はもっと彼の素顔を知りたくなった。

「さっき……力を入れたい案件って言われていたのは、どんなお仕事ですか?」

食後の茶を淹れた紫音も、つい気が緩んでしまったらしい、踏み込み過ぎた質問を、慌てて謝罪した。

「あ……ごめんなさい!守秘義務がありますよね」
「いや、いいんだ。ある商店街からの依頼でね。近くに大型商業施設ができるから、顧客の流出を止めたいのだと」

しかし、意外にも詳細な返答が返ってくる。
一転して熱の籠もった口調に、紫音はうっとりと聞き入った。

「イベント会社と連携して、色々企画を練っているところだ。
財務担当だったのに、いつの間にか便利屋みたいな感じになっているよ」
「そんな……すごいことですよ。地域のPRを任されるなんて、かっこいいです」

コンサルの仕事については未だに謎に包まれているが、情熱と矜持をかけていることは確かだ。
自分の事を省みずに没頭するのも、理解できる気がした。立つ舞台は異なれど、夢や野心を抱いていればこその覚悟だ。

「今日も思ったんですが……商店街って温かくて素敵な場所ですよね。何気ない買い出しも楽しくて」

初めて立ち寄った店でも、朗らかな笑顔でサービスを惜しまない大将や女将。
地域の財産は受け継がれるべきだと、紫音は強く感じた。

「僕も応援してます……上手くいくといいですね」
「ああ、必ず成功させてみせるよ」

そんな余裕のある言葉を断言できる大人になれたら。
紫音の中で、憧憬の念はますます深くなる。少しでも近づきたいと思うのは、身分不相応かもしれないが。

「ひと段落ついたら、風呂に入っておいて。俺は仕事の続きをしているから」

紫音が後片付けをしていると、穏やかな声が掛かる。
同時に、お泊まりという事実を改めて意識させられた。自分から言い出したにもかかわらず、いざとなると清水の舞台から飛び降りる心地だ。念入りな準備も必要だった。

掃除を済ませて寝室に入った時、直矢はタブレットで資料を読み耽っていた。
紫音の気配に気づくと、PC眼鏡を外してベッドに招き入れる。すぐさま、落ち着きのない様子を察したように苦笑を漏らした。

「今更、緊張することもないだろう」

さらに濃密な時間を共にしたというのに、自意識過剰だ。
紫音は躊躇いがちに素足をシーツに滑り込ませ、照明が落とされるのを横目で盗み見た。

「……おやすみ、紫音」

今夜は例の薬を飲んだのか、などと聞く勇気はない。
だが、常用すべきでないことは素人にでもわかる。主人の体力が落ちている今こそ、健康を育まなければならない。逞しい胸板に縋りつきたい衝動を抑え、紫音はおもむろにパジャマをたくし上げた。

「……!」

薄闇の中で、息を呑む音がする。
バスルームで丹念に磨き上げた乳首が、ふるりと顔を出した。

「っ、その……こうするとグッスリ眠れると小耳に挟んで」

ママ友の会話以来、授乳中の睡眠は広範囲の哺乳類で確認された事象だと判明した。
成熟した男性相手では確証がないが、長い夜の苦しみから解き放たれるよう願っての試みだった。

「なるほど……試してみる価値はあるかもしれないな」

主人は鼻で笑うことなく、切なる提案を快く聞き入れてくれた。
形良い唇が薄い胸元に吸い寄せられる。そして、二粒実ったさくらんぼを優しく食んだ。

「ふあ……っ……!」

濡れた舌先が蠢き、紫音の背中に電流が走る。
授乳とは程遠い、熱烈な愛撫。まるで、己が赤子のように翻弄されている錯覚に陥ってしまう。

「ん……あぅ……激しっ……!」

――――ちゅッ……ピチャ……つぷん!
縁取りからなぞり、そそり立つ頂きへと。空いた片手で突起を捻られ、無遠慮にこね回される。巧緻な舌と手によって、淡色の乳首はすくすくと成長した。

執拗な攻め立ては、否応なく熱を引きずり出す。血を沸騰させる劣情は、腹の下にも集中し始める。

あえなくズボンごと毛糸のパンツが抜き取られた。
緩やかに勃ち上がったベビーキャロットが現れる。主人は腹の窪みにキスを落とし、紫音の両脚を大きく開かせた。

「この間の……お返しだよ」
「はっ……!?ああん……ッ///」

未だかつてない快楽の津波が紫音を襲う。
胸への愛撫は序曲に過ぎなかった。直に性感帯を飲み込む、荒れ狂う小夜曲セレナーデの訪れ。

欲望に耽溺する男の姿もまた美しい。
夢でも見ているのか。浴室での奉仕の見返りにと、主人が使用人の秘部に顔を埋め、背徳に勤しむとは。
だが、靄がかかる意識の中で、温もりや息遣いは現実だった。

「ぁ……ああ!きたないから……ダメぇ……///」
「綺麗だよ……どこもかしこも……」

あられもない声は、未知の音域に到達していた。
生娘のように甲高い声は、ベッドの中でしか出せないだろう。しかし、リズミカルな刺激は、性に目覚めたばかりの肉体には強すぎたようだ。

「はぁ、ふぅ……!もう……っ、お乳が出ちゃいます……///」

ぱくぱくと震える火口は、すでに解放を待ち望んでいた。
紫音は乱れたシーツを掴み、必死に絶頂の波に堪えた。

「っ……君のミルクならいくらでも飲もう」
「や―――ぁ……!イくッ……はああん……っ♡♡♡」

――――ぴゅるっ……!ジュッ、じゅぷぷぷっ……!!
勢いよく溢れ出た蜜乳を、主人は一滴も溢さず搾り取る。
二人の心臓は壊れそうなほど脈打ち、嵐の余韻に浸っていた。
深い眠りに落ちるまで、抱き合って火照りを冷まさなければならなかった。

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