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11話
しおりを挟む《ウィル視点》
ユリと一緒にいたいが発情期間中とはいえ長い間騎士団を離れていたから一度顔を出さなけらばならない。
面倒臭いことこの上ないが仕方がない。
処理すべきものは全て副団長に任せておいたし顔を出したらすぐに帰ろうと思い急いで向かった。
騎士団の執務室の扉を開くとそこでは半泣きになりながら書類を片しているリムルがいた。
「リムル、戻った。書類はどのくらい進んだんだ」
「団長~!!終わらないです!全然終わらないです!」
「はあ。なんで終わってないんだ…」
「この量を今まで逆にどうやって捌いてたんですか!終わらないですよ!」
「仕方ない。急ぎのものだけ寄越せ。俺は早く帰りたいんだ。」
「あ!団長!番の子は大丈夫でしたか!」
「ああ、だがまだ心配だからすぐに帰りたいんだ。」
「急ぎのものはあと数枚なので大丈夫です!早く帰ってあげてください」
「ありがとうリムル」
そう言って急いで屋敷に戻った。
何か話もあるようだし聞いてあげたいしな。
屋敷に着くとユリは庭園にいると聞いたのでそのまま向かうことにした。
遠くからでのユリが見えた。
まるで天使のようなホワイトブロンドの髪、淡いグリーンの瞳がユリの美しさを際立たせる。
妖精のようにいつか消えてしまうんじゃないかと思うこともある。
ユリはあの日からずっと俺が渡した金木犀の髪飾りをつけてくれている。
そのことが嬉しくてたまらない。
「ユリ」
声をかけるとぱっとこっちを見て優しく微笑んでくれる。
「おかえりなさい、ウィル」
「ああ、ただいま。何をしてたんだ?」
「本を読んでいました」
「そうか。肌寒くはないか?」
「はい、大丈夫です。ここは暖かいので」
「それならよかった」
「あ、あの…」
緊張した面持ちでユリが見上げてくる。
視線を合わせるために跪いた。
「ん、どうした?」
なるべく怖がらせないように、ユリが話しやすいようにと笑う。
「え、と、発情期の時、ウィルに全部やらせてしまってごめんなさい」
「え…ああ、気にしなくていい。むしろ世話をさせてくれてありがとう。ユリの隣に入れて幸せだったよ」
「え…その、でも、ウィルに迷惑をかけたくないです。なので婚約破棄してください…」
消え入りそうな声でユリが言う。
「ユリ、俺はユリと入れて幸せだと思っている。迷惑だなんて思っていない。何度でも言う。ユリを…愛しているんだ。だから君が嫌でないのなら隣にいる権利をくれないだろうか」
ユリに伝わるようにと真剣な声音で伝える。
「あの、でも、ウィルには僕よりもお似合いの人がいると思います…。だってウィルはこんなにも優しいんだもの…」
「いやそれはユリの方だ。それに俺は優しくない。他の人に聞いてみてくれ。こんなにも優しくするのはユリにだけだ。ユリのことを愛してるんだ」
「いいんですか、本当に僕でも…こんな僕でもいいの…?」
「ああ、ユリがいいんだ。他はいらない。ユリだけがいいんだ」
そう伝えるとユリは肩を震わせて泣いてしまった。
俺が抱き締めてもいいかと問うと小さくコクリと頷いてくれた。
優しく抱きしめるとユリも控えめに俺の背中に手を回してきゅっと握ってくれた。
《ユリ視点》
僕が緊張しながらも伝えるとウィルは真剣な目で伝えてくれた。
それが僕には嬉しくて奇跡のようで、涙が止まらなかった。
その日からずっと愛を毎日のように囁いて時間の許す限り僕の近くにいてくれる。
僕はまだ恥ずかしくて上手くウィルに返せそうにない。
それでもウィルは表情で伝えてくれるし言葉にしづらかったら少しずつでいいんだよと言ってくれる。
こんなに幸せでいいんだろうか。
こんな幸せな日々が続けばいいと、続いていくとそう思っていた。
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