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5話
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次の日、ウィル様と朝食を取った。
「今日は休みなんだ。何かしたいことはあるか?」
「え、と。まだここのことを知らないので色んなところを見て回りたいです」
「ならそうしようか。その前に話しておかないといけないことがあるから庭園で話さないか?」
「うん」
朝食を食べ終え、僕たちは庭園へ向かった。
庭園は温かく辺りは花の匂いで満ちている。
メイドが紅茶を用意してくれたあと、席を外し、僕らは二人きりでゆったりとしていた。
「まず…そうだな。一応もう一度自己紹介からするな。辺境伯で辺境の騎士団長もしている。普段は騎士団の方で訓練や執務をしている。
ユリは?」
「えっと、ウィンドブルム侯爵家の3男です。普段は本を読んだり勉強を少ししていました。」
「ん、そうなんだな。ここにも図書室があるから好きに読んでくれ。あとで君の世話係を紹介するから身の回りのことや普段私がいない時に何かわからないことがあれば彼に聞いてくれ。」
「はい。ありがとうございます」
「敬語…抜けないな」
「あ…!」
「別にいいんだが少し寂しいなと…。気にしないでくれ。嫌な言い方になってしまってすまない」
「あ、えと、ううん。ただ慣れなくて…もしかしたらウィル様に失礼な言葉を使ってしまうかもしれないです…」
「なら、俺と二人きりの時にだけでも敬語で話すのをやめてみないか?それなら誰かに咎められる心配もないし」
「いいんですが?」
「ああ、俺はユリと仲良くなりたいからな。それにユリも俺に様付けはしなくていい。俺は君と対等な関係でいたいから」
ニッと笑った姿が少し幼くて可愛らしく思ってしまった。
「うん。わかった。ありがとう」
「それと本題なんだが、契約では君との婚約期間は半年となっている。半年間過ぎてユリが俺と婚約しても構わないと思ったら婚姻する流れになっている。俺と過ごすのが嫌になったら期間も短くできるし半年過ぎても決めきれなかったら長くもできる。ここまでは大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ」
「よし。次にこれは少し言いづらいかもしれないが大切なことなので聞くな。俺はαで君はΩだ。だから発情期の間についての過ごし方を聞いておきたい。それと普段からされて嫌なことも。君の望まないことはしたくない。言いづらければ紙に書いてくれてもいい。ただ君の意見を間違えて伝達されないように俺に伝えることにはなってしまうが…」
「え、と」
内容が内容なので少し戸惑ってしまった。
「ユリがいいのなら一緒に過ごしたいと思っている。ただ無理強いはしない。返事は今しなくてもいい。ただ発情期中だと理性がなくなってしまうこともある。本来君が望んでいない、嫌なことはしたくないと思っている。隣にいることだけもできる。だから発情期の前には聞いておきたい。」
「うん」
優しくゆっくりと話してくれている。
「悪いな。言いづらいとは思うが大事なことだから…」
「あの…」
「ん?どうした?」
「ウィルは…僕と過ごすことになるのは嫌じゃないんですか…?」
驚いたような顔をした後スッと立ち上がり僕の椅子の近くで跪いた。
僕の手を取り真剣な目で僕に語りかける。
「俺は…ユリのことを好ましく思っている。初めて君を見た時、天使が舞い降りてきたのかと思った。口下手で上手く伝えられないだろうが俺はユリと仲良くやっていきたいと、君をできる限り幸せにしたいと思っている。だが、君に気持ちを強要したいわけじゃない。だから、ただ、俺が嫌がっているわけではないと知っていてくれるだけでいい」
「はい。あ、りがとうございます」
僕は恥ずかしくなってしまい、視線を逸らしてしまった。
「よし、真面目な話はこれで終わりにしよう。ユリのことを教えてくれるか?」
「うん」
その後は騎士団の話や僕が普段読んでいる本の話、どんな食べ物が好きなのか、そんな他愛もない話をした。
少しづつではあるが僕も敬語を外して話せるようになってきた。
「この後は…まだ午前中で時間もあるし、街の方に行ってみるか?それとも屋敷の中をもう少し見て回るか?」
「街の方に行ってみたいです!」
「なら用意をして街に行ってみるか」
そうして僕らは一度お互いの部屋に戻っていった。
「今日は休みなんだ。何かしたいことはあるか?」
「え、と。まだここのことを知らないので色んなところを見て回りたいです」
「ならそうしようか。その前に話しておかないといけないことがあるから庭園で話さないか?」
「うん」
朝食を食べ終え、僕たちは庭園へ向かった。
庭園は温かく辺りは花の匂いで満ちている。
メイドが紅茶を用意してくれたあと、席を外し、僕らは二人きりでゆったりとしていた。
「まず…そうだな。一応もう一度自己紹介からするな。辺境伯で辺境の騎士団長もしている。普段は騎士団の方で訓練や執務をしている。
ユリは?」
「えっと、ウィンドブルム侯爵家の3男です。普段は本を読んだり勉強を少ししていました。」
「ん、そうなんだな。ここにも図書室があるから好きに読んでくれ。あとで君の世話係を紹介するから身の回りのことや普段私がいない時に何かわからないことがあれば彼に聞いてくれ。」
「はい。ありがとうございます」
「敬語…抜けないな」
「あ…!」
「別にいいんだが少し寂しいなと…。気にしないでくれ。嫌な言い方になってしまってすまない」
「あ、えと、ううん。ただ慣れなくて…もしかしたらウィル様に失礼な言葉を使ってしまうかもしれないです…」
「なら、俺と二人きりの時にだけでも敬語で話すのをやめてみないか?それなら誰かに咎められる心配もないし」
「いいんですが?」
「ああ、俺はユリと仲良くなりたいからな。それにユリも俺に様付けはしなくていい。俺は君と対等な関係でいたいから」
ニッと笑った姿が少し幼くて可愛らしく思ってしまった。
「うん。わかった。ありがとう」
「それと本題なんだが、契約では君との婚約期間は半年となっている。半年間過ぎてユリが俺と婚約しても構わないと思ったら婚姻する流れになっている。俺と過ごすのが嫌になったら期間も短くできるし半年過ぎても決めきれなかったら長くもできる。ここまでは大丈夫か?」
「うん。大丈夫だよ」
「よし。次にこれは少し言いづらいかもしれないが大切なことなので聞くな。俺はαで君はΩだ。だから発情期の間についての過ごし方を聞いておきたい。それと普段からされて嫌なことも。君の望まないことはしたくない。言いづらければ紙に書いてくれてもいい。ただ君の意見を間違えて伝達されないように俺に伝えることにはなってしまうが…」
「え、と」
内容が内容なので少し戸惑ってしまった。
「ユリがいいのなら一緒に過ごしたいと思っている。ただ無理強いはしない。返事は今しなくてもいい。ただ発情期中だと理性がなくなってしまうこともある。本来君が望んでいない、嫌なことはしたくないと思っている。隣にいることだけもできる。だから発情期の前には聞いておきたい。」
「うん」
優しくゆっくりと話してくれている。
「悪いな。言いづらいとは思うが大事なことだから…」
「あの…」
「ん?どうした?」
「ウィルは…僕と過ごすことになるのは嫌じゃないんですか…?」
驚いたような顔をした後スッと立ち上がり僕の椅子の近くで跪いた。
僕の手を取り真剣な目で僕に語りかける。
「俺は…ユリのことを好ましく思っている。初めて君を見た時、天使が舞い降りてきたのかと思った。口下手で上手く伝えられないだろうが俺はユリと仲良くやっていきたいと、君をできる限り幸せにしたいと思っている。だが、君に気持ちを強要したいわけじゃない。だから、ただ、俺が嫌がっているわけではないと知っていてくれるだけでいい」
「はい。あ、りがとうございます」
僕は恥ずかしくなってしまい、視線を逸らしてしまった。
「よし、真面目な話はこれで終わりにしよう。ユリのことを教えてくれるか?」
「うん」
その後は騎士団の話や僕が普段読んでいる本の話、どんな食べ物が好きなのか、そんな他愛もない話をした。
少しづつではあるが僕も敬語を外して話せるようになってきた。
「この後は…まだ午前中で時間もあるし、街の方に行ってみるか?それとも屋敷の中をもう少し見て回るか?」
「街の方に行ってみたいです!」
「なら用意をして街に行ってみるか」
そうして僕らは一度お互いの部屋に戻っていった。
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