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2話
しおりを挟む一番上のお兄様は次期侯爵家の当主となるべく努力をされており2番目のお兄様は騎士となり、家を支えていた。
侯爵家の3男に生まれ優秀なαの兄とは違い僕は特に秀でた部分もなかったしΩとして生まれた。
だから、お父様は僕を政略結婚の道具だとしか思っていなかったのだろう。
小さい頃から僕の周りには誰もいなかった。
お兄様もお父様もお母様も誰も構ってくれなかった。
お父様はいつも冷静で落ち着いており、仕事もできる。けれど僕を見る目は冷ややかでいつも恐ろしかった。
母は自分の立場を気にしてΩを産んでしまったことを気に病んでいるのか一度も会いに来てくれなかったし会わせてももらえなかった。
お兄様のことはよく分からない。いつも離れの部屋から庭園で見たことしかなかった。
けれど使用人の噂話から兄がとても優秀であることだけは知っていた。
それに、使用人たちも必要最低限のことでしか接してくれなかった。
だけど僕は皆の役に立ちたくてできる限り努力した。
マナーに勉学、護身術も少しだったらできるようになった。
それでも誰も見てくれなかった…
僕が13歳の時婚約が決まった。
政略結婚ではあったけれど、僕達なりにうまく寄り添っていたと思う。
好きだという気持ちは分からなかったけれど、それでも彼と一緒にいれてこんなにも穏やかな心地よい日々が続くのだとそう思っていた。
なのに…彼は相手の人を掻き抱いてた。ずっと会いたかった、愛してやまない、満たされた気がするって言ってた。
僕じゃ代わりにはなれなかったんだろうな…
誰にも必要とされない。いてもいなくても変わらないような僕には無理だったのだろう…
________________
あれから数日が経ったらしいが僕は今も部屋の中に閉じ込められている。
食事も日に一回でこの部屋は離れに近く陽の光もあまり入らない。
このままぼうっと時間が過ぎていくのかとそう思っていた。
突然ノックの音が聞こえた。
「ご当主様がお待ちです。すぐにご準備を。」
扉の外から声が聞こえた。
僕は準備を済ませ、と言っても何も持ち合わせてはいないので髪を軽くといて急いで父の元へ向かった。
ノックをし、返事が返ってきたため入室した。
「座れ」
「はい」
「彼の相手は運命だったらしい。そのため今回は婚約を破棄することとなった。お前は辺境伯の元へ嫁がせる。明日には出発になるから準備を済ませておけ」
「え…」
「何かあるのか?」
鋭い目で見つめられる。
「いえ…」
「話は以上だ。もう戻ってもらって構わない」
「はい。失礼します」
部屋を出て僕はそそくさと元の道を戻っていった。
辺境伯…まるで熊のように大きな体で大剣を使い敵を諸共葬ると言われている。
結婚適齢期になっても誰とも結婚せずにいて婚約の話が上がったこともあるがその姿を見た婚約者が卒倒したという話も聞いたことがある。
そんな…そんな人のもとでやっていけるのかと不安にもなったが、どうすることもできない僕はただ明日を待つばかりだった。
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