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第1章 (1回目の人生とすれ違い期間)
4話
しおりを挟む《ギル視点》
初めて会ったときのフィルはうつむいており、自信がなさそうだった。
黒髪に碧眼で目は大きく鼻は小ぶりながらも通っており、唇は赤くとても可愛らしい見た目をしていた。
フリフリとした服は少し彼の雰囲気とはあっていないように感じたが、まあそういう服が好きなのだろう。
公爵家の三男であるフィルといえば家格はいいが悪い噂ばかりが飛び交っているような男であった。
男をたぶらかしているだとかとんでもなく我が儘だとか…学園に通っていないのは手がつけられないから屋敷にいるだとか…
実際に会ってみるとその噂とはかけ離れているように感じるがどうなのだろうか…。
まあこれから生活していけばわかるだろう…
しかし、屋敷についたときも嘘をついているようには見えなかった。公爵家の方が大きな屋敷にもかかわらず、まるで今まで大きな屋敷には住んだことがないような言い方だったな。
ただ、忠告だけはした方がいいだろうな…
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「すまない。待たせたな。」
「いいえ、大丈夫です。お忙しいのに、お時間をとらせてしまって申し訳ありません。」
「あ、ああ。気にするな。」
「あの…お話をうかがってもよろしいですか?」
「話な…。いい忘れていたから伝えようと思ってな。
君との結婚は断れなかったからだ。好きに過ごしてもらってかまわない。だが、俺には構うな。それだけだ。」
「え…あ…わかりました…。少しでもギル様の邪魔にならないように過ごさせていただきます。屋敷にいさせてくださりありがとうございます。」
「それならいい。なら私はもう行く。」
やっぱりそうだよね。あの素敵なギル様が私との結婚を望んでるわけなんてなかった…。
こんなにも愚図で体に痣がある僕のことなんて好きになんてならないよね…。
それでも僕はどこにも行くことができないから…少しでもギル様の邪魔にならないように過ごすしかない。
どこにいても僕は愛されない。
ギル様と会ったとき優しくしてもらったからって勘違いなんかしちゃいけないな…。ギル様と結婚できるときいてどこかで舞い上がってしまったのかもしれないな…。
きっとあの日の出来事なんてよくあることだったんだろう。
そう思ってもなぜか涙は止まらなかった…。頭ではわかってるつもりでも言われたことが悲しくて辛かったのだ…。
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