いつの間にか異世界転移してイケメンに囲まれていましたが頑張って生きていきます。

アメショもどき

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第3章 学園に通おう

106話 ガラス

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 なんとかみんなが正気を取り戻したあと、今いるのはやっぱりお屋敷の裏側だということなので表玄関の方に回ることになった。

 ……なんか、地下室含めて建築?にかかった時間より呆然としていた時間の方が長い気がする。

 くるっと半周して分かったけど、お屋敷自体は普通の2階建てのお屋敷みたいだった。

 あえて言えば、お屋敷の両端が森に突き刺さるように前に出っ張っていて、コの字型になっているのが特徴かな?

 表玄関に回る途中に何人かがお屋敷の木の壁を拳で軽く叩いて『本物だ』と呟いていた。

 僕も真似して壁を叩いてみたけど、やたらと固くて木を叩く『コンコン』という音じゃなくって金属を叩いた『カンカン』という音がした。

 しかも、そんな音がするくらいだから金属みたいに冷たいのかな?と思って手をつけてみたら、なんかほんのり暖かかった。

 とりあえず、僕には不思議素材としか分からない。

 あまり深く考えるのはやめとこう……。



 表玄関につくと、またみんなして少しの間呆然としてしまう。

 いや、もう見とれてるって言ってもいい。

 こちらから見たお屋敷は、真っ白に塗られた壁が木々の緑を映しているように見えて見とれてしまうほど美しかった。

「うむ、良い感じだな」

 アッキーも満足そうに頷いているけど、森のそばにこだわると思ったらこういうことをやりたかったのか。

 正面から見たお屋敷は真ん中に大きな表玄関があって、その上に大きなバルコニーが張り出していた。

 玄関の扉、その横に立ってバルコニーを支える柱、そしてバルコニーの柵。

 その全てに精緻な彫刻が施されている。

 ここからだとよく見えないけど、窓枠にも彫刻が施されているようにみえる。

 表玄関に来る途中に見たコの字の先端の2階部分もルーフバルコニーになっているみたいで、やっぱり彫刻の施された柵があった。

 見るからにテキトーに作ったって感じじゃない。どう見てもものすごい手間がかかっている。

「あの……アッキー、この彫刻は……?」

「ん?爺共の中に彫刻趣味にしてるのがいるから彫ったんじゃないか?」

 すごい軽く言うけど……爺って長老様のことだよね?とんでもない腕してるよ、その人。

 柱に掘られた絡みついたイバラとか、真っ白に塗られているのに本物にしか見えない。

 あ、なんかかわいい動物いるーとか思ってたら、彫刻だった。

 こっちも真っ白なのに動かないのを不思議に思うまで気づかなかった。

 みんなも彫刻眺めてはたまに『ギョッ』とした顔をしているのでおんなじような体験をしているんだと思う。

「さて、そんなに外ばかり見てても仕方ないだろう。
 中に入るぞ」

 そう言って扉を開いてお屋敷の中に入っていくアッキーについていく前に、ユニさんの袖を引っ張って話しかけた。

「ユニさん……お屋敷交換しない?」

「……ハルには悪いですが、絶対にイヤです」

 ですよねー。



 ユニさんにお屋敷を押し付けたかったけど無理っぽいので諦めてアッキーについてお屋敷の中についていく。

 みんなも凄い恐る恐るって感じでついてくるけどこれからみんなもここに住むんだからね?

 僕と一緒に諦めよう?

 今度はどんな途方もない物が出てくるか覚悟しながら入った玄関は思ったより普通のお屋敷の玄関だった。

 玄関入ってすぐはちょっとしたホールになっていて、その先に左右に分かれた廊下と2階に上がる大階段が見える。

 天井から吊るされた立派だけど派手すぎないシャンデリアといい、見慣れた雰囲気……というか、ユニさんちを小さくしたような感じだ。

 エルフさん達は家を建てる習慣がないらしいし、本当にユニさんちを参考にしたのかもしれない。

「師匠、内壁や階段、手すりといったものも……」

「ああ、内装含めて全て天空樹だな」

 まあ、そこら辺に生えてる……というか、むしろそれしか生えてないらしいしね……。

 とりあえず建材の値段を考えるのはやめよう。

 丈夫な建材で作ってくれてありがとうっ!それだけ覚えておこう……。

「あと、師匠……あのシャンデリア、ガラスじゃないですよね?
 まさか水晶……い、いや、まさかまさかのダイヤじゃないですよね」

 ……ユニさん、そこ触れちゃうか。

 ファンタジー世界ではガラスですら高級品なことが多いし、エルフさんたちのことだからガラスどころかなんか途方も無い宝石とか使っちゃってるに違いない。

 なんかうっすら光ってる気もするし、出来るだけ触れないように……視界にも入れないようにしていたのに……。

「ああ、安心するがよい。
 さすがに我々も宝石の価値程度はわかっているからな。
 そこらで見かけるようなものでもないし、そんな大層なものは使っていない。
 全部自前の有りものを使っているぞ」

 宝石じゃないと聞いてちょっと安心した。

 そういえば、アッキー自身紅茶の代金で困ってたことあったし、純粋にお金って意味ではエルフさんたちあんまり持ってないのかもしれない。

「有り物……ですか?」

 こわごわという表情から不思議そうな表情に変わったユニさん。

 確かに有りものってなんなんだろう?

 砂溶かしてガラス作ったとか?

 確かガラスってそんな感じに作るんだよね?

 魔法の得意なエルフさんたちなら簡単に作りそう。

「ああ、気を遣わせないように金をかけずに自前のものをということでな。
 魔力結晶だ」

「「「「ぶふっ!」」」」

 アッキーの言葉を聞いて、ユニさんとイヴァンさんをはじめ、何人かが吹いた。

「あ、有り物だぞ……?」

「げほっ!げほっ!げほっ!……た、たしかに有り物ですけどぉ……」

 ユニさんはむせて苦しそうにしているので、吹いた中でも比較的大丈夫そうなミゲルくんに聞いてみる。

「ミゲルくん、魔力結晶って?」

「え、えっと、魔力を特殊な儀式を用いて結晶化させたものです。
 儀式や大魔法など個人の魔力だけでは足りない場合に使うのですが、作成の際の変換効率が大変悪く、常人の倍は魔力を持つものでないと作ることすら出来ません」

 おおっと、ただ事じゃない感じだぞ、これは。

「普通は親指の爪くらいの大きさのものが一般的で、それでも1個金貨10枚はします。
 当然ながら大きければ大きいほど価値は高く、大きさと比例……いえ、指数関数的に高くなります」

 親指の爪大で金貨10……ここから見るだけでもシャンデリアの玉、こぶし大以上ありそうだけど……。

 それが……数えるのはやめよう。

 中心部に核のように頭大のものがあるけど……見なかったことにしよう。

「べ、別に魔力なんてすぐに回復するから構わんだろ?」

「お師匠様、そういう問題ではございません」

 すぐ身の回りに希少品がある人の価値観は狂っていると思う。



「あ、あの……お兄様……」

「ん?どうしたの?エミールくん」

 お屋敷の裏にいたときから、腰を抜かしたように僕の腕にしがみつき続けるエミールくんがおどおどと僕の腕を引っ張っている。

「あの……皆様、どうして『あれ』に触れないんですか?」

 あー、言っちゃったかー。

 みんな、頑張って目をそらしていたのに言っちゃったかー。

 エミールくんの反対の手を握ってるバナくんも不思議そうな顔で見つめているし、素直な子たちだなー。

 すごくいい子で可愛いんだけどなー。

「それはね、エミールくん。
 みんな現実から目をそらしたいからだよ」

 そう言って、諦めて、柱の陰に隠れてこっちを見つめてる、明らかに人間サイズじゃないちっちゃい人影を視界に入れた。
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