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第3章 学園に通おう
103話 建設
しおりを挟む ユニさんちの裏庭にある森、その前の広場にみんなが集まっていた。
広場と言っても、本当にその言葉の通り『広い場所』なだけで特になにがあるわけでもない空き地だ。
「えっと、ここが話にあった場所なの?」
みんな思い思いのことをしているので、アッキーと図面を見合っているユニさんとイヴァンさんのところに歩いてく。
アッキーの姿を見て繋いだままのエミールくんの手がまた固くなったので、安心させるために優しく握るとエミールくんも握り返してくれた。
バナくんはエミールくんをかばうように前に出てきてて、相変わらず男前だ。
「うむ、ここがお前の屋敷の建設予定地となる」
僕の問いかけに答えてくれるアッキーも、そんなバナくんの様子を微笑ましげに見てる。
全体的に華奢で小さく見えるアッキーも、ここらへんはさすがに600才の大人?だな。
「本当はもっと、私の屋敷の表玄関に近いところに建てるつもりだったんですけどね。
師匠の『森のそばが良い』という希望でここになりました」
ユニさんの言葉を聞いてお屋敷の敷地を思い出してみるけど、言われてみるとかなり奥まったところだな、ここ。
お屋敷の表玄関から離れているのはもちろん、敷地の壁にある表門なんてお屋敷を挟んで反対側って言ってもいいくらいだ。
「えっと、大丈夫なの?ここで?」
「うーん、そうですね、裏の森を少し進んだ先にうちの表門につながるのとは別の公道がありますから、そちらの方の壁に門を作って、そこから森を通して屋敷までの道を作れば問題はないと思います。
森を向いて表玄関があるっていう変なお屋敷になっちゃいますが」
……あー、玄関開けたら森か。
ユニさんが微妙な顔しているのも分かる気がする。
「なにを言っている、いいじゃないか木々の清浄なる空気が身近に感じられて。
本来ならもっと森の中に建てたかったくらいだ」
それに比べてアッキーは、ノリノリで嬉しそうだ。
同族からは変わり者判定受けてるみたいだけど、なんやかんややっぱりアッキーもエルフなんだなぁ。
「お師匠様、これ以上森の中となりますと搬入や維持管理等に問題が出てきますから勘弁してくださいませ」
「ほら、こうやってイヴァン坊がうるさく言うから我慢してやってるんだ。
ありがたく思うがいい」
本当にありがたい。
アッキーの暴走を止めてくれているイヴァンさんが実にありがたい。
「はいはい、ありがとうございます、お師匠様」
アッキーの対応しているイヴァンさんは、いつもは見ない感じの態度になっててちょっと面白い。
なんやかんや言って、仲いいんだと思う。
さて、このままアッキーとイヴァンさんの師弟関係を眺めていたくもあるけど、そうもいかない。
「えっと、でも、本当にどうやって建てるの?
資材もなにもないんだけど」
なんせ1日でお屋敷を建てるっていうんだ、そうのんびりとお話もしていられないだろう。
みんなも気になっていたのか、あたりを見回していたり森の中を覗き込んだりしていた子たちも集まってきた。
「ふっふっふっふっ、そこは後でのお楽しみとさせてもらおうか」
「師匠、私達にも細かいところは教えてくれないんですよね。
設計図も師匠が全部変えちゃいましたし」
ドヤ顔で笑っているアッキーを見て、苦笑いしているユニさん。
「え?設計図変えちゃったって大丈夫なの?」
たしかにこの間イヴァンさんと設計図見てなんかやり取りしてたけど。
2人で打ち合わせして変えてるのかと思ったら、今の言い方だとアッキーが勝手に変えたみたいな感じだな。
「間取りにつきましては少々建築様式が古いように見受けられましたが、ごく一般的なものでしたので問題はございません。
それより問題は上モノの間取りが全て変わったために地下も変える必要が出たことでございますね」
「い、入り口の場所を変えてもらっただけだろ?」
「それでも、手間は手間でございました。
ひとつ貸しでございますな」
「く、くうっ……仕方あるまい、認めよう」
珍しくしたり顔をしているイヴァンさんと、悔しそうな顔をしているアッキー。
本当に仲いいなー。
「それで、そこまで言うなら地下の設計図は出来ているんだろうな?」
「もちろんでございます。
忙しい中、睡眠時間を削って泣きながら作った設計図でございます」
「ぶふっ!」
ろうそく1本の明かりで泣きながら書物をしているイヴァンさんという有り得なさすぎる絵面が思い浮かんで思わず吹いてしまった。
ユニさんも吹き出しこそしなかったものの肩を震わせている。
「くそぅ、しつこいぞ。
どれ、見せてみろ」
「こちらでございます」
受けてしまっている僕たちを軽く睨みながら、アッキーはイヴァンさんから設計図を受け取って眺めている。
「うむ、よかろう。
逆に聞くが、これを決定稿として作ってしまって大丈夫なのだな?」
「はい、大丈夫でございます。
場合によっては後々掘り広げる事もあるかと思いますが、当面はこれで事足りるはずです」
最終確認をするアッキーに、頷き返すイヴァンさん。
僕は大まかにしか聞いていないけど、地下は貯蔵庫的な場所になっていて、もしいっぱいになったらさらに掘って拡張する予定らしい。
まあ、数十年単位で考えても今のままの面積で大丈夫ってイヴァンさんは言ってたけど。
「ふむ、では早速はじめてしまうか。
お前ら、地下室を掘るから我の後ろまで下がれ」
いよいよ始めるらしいアッキーの指示に従ってみんながアッキーの後ろに避難する。
さて、建設って言ってもなにをするんだろう?
広場と言っても、本当にその言葉の通り『広い場所』なだけで特になにがあるわけでもない空き地だ。
「えっと、ここが話にあった場所なの?」
みんな思い思いのことをしているので、アッキーと図面を見合っているユニさんとイヴァンさんのところに歩いてく。
アッキーの姿を見て繋いだままのエミールくんの手がまた固くなったので、安心させるために優しく握るとエミールくんも握り返してくれた。
バナくんはエミールくんをかばうように前に出てきてて、相変わらず男前だ。
「うむ、ここがお前の屋敷の建設予定地となる」
僕の問いかけに答えてくれるアッキーも、そんなバナくんの様子を微笑ましげに見てる。
全体的に華奢で小さく見えるアッキーも、ここらへんはさすがに600才の大人?だな。
「本当はもっと、私の屋敷の表玄関に近いところに建てるつもりだったんですけどね。
師匠の『森のそばが良い』という希望でここになりました」
ユニさんの言葉を聞いてお屋敷の敷地を思い出してみるけど、言われてみるとかなり奥まったところだな、ここ。
お屋敷の表玄関から離れているのはもちろん、敷地の壁にある表門なんてお屋敷を挟んで反対側って言ってもいいくらいだ。
「えっと、大丈夫なの?ここで?」
「うーん、そうですね、裏の森を少し進んだ先にうちの表門につながるのとは別の公道がありますから、そちらの方の壁に門を作って、そこから森を通して屋敷までの道を作れば問題はないと思います。
森を向いて表玄関があるっていう変なお屋敷になっちゃいますが」
……あー、玄関開けたら森か。
ユニさんが微妙な顔しているのも分かる気がする。
「なにを言っている、いいじゃないか木々の清浄なる空気が身近に感じられて。
本来ならもっと森の中に建てたかったくらいだ」
それに比べてアッキーは、ノリノリで嬉しそうだ。
同族からは変わり者判定受けてるみたいだけど、なんやかんややっぱりアッキーもエルフなんだなぁ。
「お師匠様、これ以上森の中となりますと搬入や維持管理等に問題が出てきますから勘弁してくださいませ」
「ほら、こうやってイヴァン坊がうるさく言うから我慢してやってるんだ。
ありがたく思うがいい」
本当にありがたい。
アッキーの暴走を止めてくれているイヴァンさんが実にありがたい。
「はいはい、ありがとうございます、お師匠様」
アッキーの対応しているイヴァンさんは、いつもは見ない感じの態度になっててちょっと面白い。
なんやかんや言って、仲いいんだと思う。
さて、このままアッキーとイヴァンさんの師弟関係を眺めていたくもあるけど、そうもいかない。
「えっと、でも、本当にどうやって建てるの?
資材もなにもないんだけど」
なんせ1日でお屋敷を建てるっていうんだ、そうのんびりとお話もしていられないだろう。
みんなも気になっていたのか、あたりを見回していたり森の中を覗き込んだりしていた子たちも集まってきた。
「ふっふっふっふっ、そこは後でのお楽しみとさせてもらおうか」
「師匠、私達にも細かいところは教えてくれないんですよね。
設計図も師匠が全部変えちゃいましたし」
ドヤ顔で笑っているアッキーを見て、苦笑いしているユニさん。
「え?設計図変えちゃったって大丈夫なの?」
たしかにこの間イヴァンさんと設計図見てなんかやり取りしてたけど。
2人で打ち合わせして変えてるのかと思ったら、今の言い方だとアッキーが勝手に変えたみたいな感じだな。
「間取りにつきましては少々建築様式が古いように見受けられましたが、ごく一般的なものでしたので問題はございません。
それより問題は上モノの間取りが全て変わったために地下も変える必要が出たことでございますね」
「い、入り口の場所を変えてもらっただけだろ?」
「それでも、手間は手間でございました。
ひとつ貸しでございますな」
「く、くうっ……仕方あるまい、認めよう」
珍しくしたり顔をしているイヴァンさんと、悔しそうな顔をしているアッキー。
本当に仲いいなー。
「それで、そこまで言うなら地下の設計図は出来ているんだろうな?」
「もちろんでございます。
忙しい中、睡眠時間を削って泣きながら作った設計図でございます」
「ぶふっ!」
ろうそく1本の明かりで泣きながら書物をしているイヴァンさんという有り得なさすぎる絵面が思い浮かんで思わず吹いてしまった。
ユニさんも吹き出しこそしなかったものの肩を震わせている。
「くそぅ、しつこいぞ。
どれ、見せてみろ」
「こちらでございます」
受けてしまっている僕たちを軽く睨みながら、アッキーはイヴァンさんから設計図を受け取って眺めている。
「うむ、よかろう。
逆に聞くが、これを決定稿として作ってしまって大丈夫なのだな?」
「はい、大丈夫でございます。
場合によっては後々掘り広げる事もあるかと思いますが、当面はこれで事足りるはずです」
最終確認をするアッキーに、頷き返すイヴァンさん。
僕は大まかにしか聞いていないけど、地下は貯蔵庫的な場所になっていて、もしいっぱいになったらさらに掘って拡張する予定らしい。
まあ、数十年単位で考えても今のままの面積で大丈夫ってイヴァンさんは言ってたけど。
「ふむ、では早速はじめてしまうか。
お前ら、地下室を掘るから我の後ろまで下がれ」
いよいよ始めるらしいアッキーの指示に従ってみんながアッキーの後ろに避難する。
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