いつの間にか異世界転移してイケメンに囲まれていましたが頑張って生きていきます。

アメショもどき

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第3章 学園に通おう

79話 子爵

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 最後に2人にお礼を言ってから奴隷商さんと一緒にソファに戻った。

 いつの間にか、食べきってたショートケーキが補充されてたので、また僕の膝の上に乗って抱きついているバナくんの口にひとくち放り込む。

「おにいちゃん、なにこれおいしいっ!」

 目を見開いて驚いているバナくんの口にもうひとくち放り込んだ。

「んんーっ!」

 ちょっと紅潮している頬を押さえてショートケーキの甘さを噛み締めてるバナくん。

 耳も興奮したようにピンと立っている。

 うんうん、喜んでくれたようで何より。

 奴隷商さんにお礼を……言うのは、隣で口を開けている僕の恋人2人にケーキを放り込んでからにしよう。

 甘えたい欲を我慢できなくなっちゃったらしい2人の口にケーキを放り込む。

 ムーサくんはそれで満足してくれるけど、ツヴァイくんは物欲しげに僕の唇を見てる。

 ツヴァイ、ステイ。

 流石にここでそれは恥ずかしいから、ステイ。

 手を繋ぐことでなんとか我慢してくれた。

 ム、ムーサくんも?

 いや、望むところだから、どんとこい。

「えっと、ケーキ美味しかったです、ありがとうございます。
 ……それとお恥ずかしいところお見せして申し訳ありません」

 いや、本当に申し訳有りません。

「いえいえ、お気になさらずに。
 しかし、早くもお買い上げいただいた商品をハーレムに組み込んでいるその度量、お見事でございます」

 奴隷商さんが気にしてないみたいで良かった。

 ハーレム云々は聞かなかったことにする。

「さて、では、お聞きになりたいことが有りましたらお答えいたしましょう。
 ああ、そのままでかまいません」

 ごめんなさい。

 真面目な話をする雰囲気じゃなくて本当にごめんなさい。

 しかし、『お聞きになりたいこと』か。

 奴隷商さんが全部説明してくれるわけじゃないのか。

 僕が聞いたことには答えるよ、と。

 まあ、逆に考えれば奴隷商さん的には説明したくないことも答えてくれると言っていると考えよう。

 と、言っても、どうしたものか。

 僕が迷っていると、奴隷商さんがパンパンと2度手を鳴らす。

 それを聞いた従業員さんが、クラウスさんたちを連れて部屋から出ていく。

 いや、ありがたい。

 これでクラウスさんたちの前じゃ聞きづらかったことも聞ける。

 ……あと、このみっともない姿を見せなくて済む。

 そう考えながら、ムーサくんの差し出しているフォークに乗ったケーキを口に入れる。

 いや、バナくんが両手のふさがってる僕に差し出してくれたケーキをつい食べちゃったら、こうなった。

 いっその事、クラウスさんたちに見てもらって今のうちにあちらから辞退してもらった方が良かったかもしれない……。

 とにかく、答えてくれると言うんだから質問しなければ。

 ツヴァイくんの食べさせてくれたケーキを咀嚼しながらそう考える。

 まず最初に聞かなきゃいけないことは決まってる。

「一体クラウスさんたちの主だったっていう子爵様はなにやらかしたんですか?」

 話を聞いていると、突然お取り潰しになったり、使用人さんまで借金背負ってたり、使用人のトップの人達ですら仕えていた家の子供の安否が分からなかったり、主だという子爵様が相当ろくでもないことやったとしか思えない。

 『いわく』とやらもこの子爵さんのこと絡みなんだろう。

「子爵閣下……いえ、元子爵閣下ですが、横領事件を起こしまして」

 え?

「それだけでしたら、お取り潰しとまではいかなかったのでしょうが、横領発覚後なにを血迷ったか領内の鉱山の発掘権をカタに本来の寄り親の政敵に身売りをしようとまでいたしまして。
 結果としてお取り潰しとなっております」

 えーと……。

「そ、その元子爵閣下の名前って……」

「スカルドーニ子爵閣下でございます」

 おおう。

 ユニさんちの話かい、これ。

 そりゃ、クラウスさんも『お許しいただけるなら』とかいい出すよ。

「な、なるほど……。
 それが『いわく』ですか」

「さようでございます。
 不祥事を起こしてお取り潰しに……しかも、家の後始末もつけられないほど早急なお取り潰しになるほど寄り親の怒りを買った家でございます。
 同じ寄り子たちはもちろん他の貴族たちも怒りが自分の家に及ぶのを恐れて援助の手など差し伸べません」

 そう言われるとたしかにそのとおりだろうな。

 あの時ユニさんはそんなに怒っていたようには見えなかったけど……。

 家の事……お仕事のことだから僕に見せないようにしてくれてただけで、内心煮えくり返ってたのかもしれない。

 ほんと、そんな風には見えなかったけどなぁ。

「しかも、その寄り親は国内でも有数の大貴族。
 そうなりますとその忌避感は子爵閣下御本人のみならず、ご家族、ご親族、そして、主だった使用人にも向けられることになります」

 それはちょっと行きすぎな気が……。

 そう思わなくはないけど、偉い人が激怒している人の関係者と考えると……まあ、関わりを絶ちたくなるのも分からなくはない。

 どんな火の粉が飛んでくるか怖い。

「事実、スカルドーニ家は親族や親しくしていた家全てから絶縁を言い渡されております」

「えっと、取り入ろうとしていた政敵さんはどうしているんでしょう?」

 具体的にはスレイくんのお母さんの実家さんは手を差し伸べたりしてないのかな?

 そう思って聞いてみるけど、奴隷商さんは黙って首を横に振る。

 美味しいところが無くなったらなったらあとはポイかぁ……。

 貴族の世界はシビアだなぁ。

「ご一族だけでなく、使用人たちに対する風当たりも強く、皆、スカルドーニ家で働いていたことは隠して仕事を探しているようでございます。
 しかし、家令などといった名の知れた上級使用人はそれも難しく……」

 な、なんというかいたたまれないことになってるなぁ……。
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