いつの間にか異世界転移してイケメンに囲まれていましたが頑張って生きていきます。

アメショもどき

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第3章 学園に通おう

74話 犯罪

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 前にみたいに屈強な男性従業員さんが、手枷と足枷をはめられた奴隷さんを連れてくる。

 連れてこられたのは茶色い髪のちっちゃな男の子で、怯えたように縮こまって部屋を見回している。

 頭から生えている長い茶色いウサ耳も怖がるように伏せられてプルプル震えている。

 可愛らしい顔には涙を浮かべているし、実に庇護欲……お兄ちゃんセンサーが反応する子だけど……。

「奴隷商さん、あんな小さい子にその格好はいかがかと」

 その子はパンツ一枚しか着ていなかった。

 しかも、布面積がやたらと小さくてお尻から可愛いしっぽが見えている。

 前には年齢不相応の可愛くない尻尾がパンツの下から存在を主張していた。

 どう見てもかなり小さい子にさせる格好じゃない。

「それが、ある意味この格好が問題そのものでして……」

 いや、たしかに大問題だけど、奴隷商さんがいいたいのはそういうことじゃないのだろう。

 結構深刻な顔しているし、どうしたんだろう?

 『そうですか、大変でしたね』で済ませるべきなのはわかっているのに好奇心が……。

「も、問題とは?」

 聞いちゃった。

 なんか奴隷商さんが、我が意を得たりとでも言うように一瞬ニヤリと笑った気がする。

「まず、この商品なのですが、ラビィ種という種族の人間でございまして……。
 覚えておいでですか?
 前回当店の商品を紹介させていただいたときにも1人おりましたのを」

 ああ、そういえばいたなぁ。

 やっぱりこの子とおんなじくらいの年なのに、やたらとエロい目線送ってきてた子。

「ラビィ種という種族はある程度成長いたしますと、その後ほとんど見た目の変わらない種族でございまして……。
 あの時の商品はああ見えて25才でございました」

 はあっ!?あの子が25っ!?

 僕より相当年下にしか見えなかったのに……。

 ちょっと、僕の年齢を知ったときのユニさんの驚きがわかった気がする。

「……ん?
 ラビィ種の人は25才でも珍しいんですか?
 たしかあの時そんな事言ってましたよね?」

 確か、奴隷として出回るのも珍しいけど、年齢はさらに珍しいとか?

 なんかそんな謳い文句だった気がする。

「それはもう、珍しゅうございます。
 なにせラビィ種の寿命が80才として25才と言ったら80分の1の確率でございますから」

 …………?

「詐欺だよね?それ」

「セールストークでございます」

 しれっと言い切る奴隷商さん。

「実際、あの商品をお買い上げになられたお客様は、結局本当の年齢を知らずに『希少な年齢』のラビィ種として睦み合っているとのこと。
 お客様も商品も、そしてもちろん私も皆幸福になった良いお取引でございました」

 ……いや、まあ、うん、本人たちが満足ならそれでいいのか。

「ということで、その『類まれな』容姿と、生来の淫乱……失礼、『人懐っこさ』で人気のラビィ種でございますが、その人気さ故に市場に出回るのは稀でございます。
 しかも、逆らうことの出来ない犯罪奴隷となりますと……」

「えっと、逆らえないって言うと?」

 いくら逆らえないって言っても奴隷さんを保護する法律も有るらしいし、そこまでの無体はできないと思うんだけど……。

 怯えて縮こまっている彼を見ていると、たしかにちょっと可哀想になってくる。

「犯罪奴隷の場合、罰の一部として絶対服従の印を入れられることになります。
 あの商品の首に入っている印が分かりますでしょうか?」

 あー、たしかに赤い線みたいのが首をくるっとひと回りしているな。

「もし、主人の命に逆らったり、他の人間に危害を加えたりするとあの印の効果で首がキュっと締まります」

 なんかコミカルにすら聞こえる奴隷商さんの説明だけど……。

「えっと、キュって締まると……」

「当然死にます」

 だよね、予想はついてた。

「ということで、色々見越して犯罪奴隷は収容施設から出る時点から三種奴隷となることが決まっております」

 言われて足首を見ると、たしかに三種奴隷の証である3本線がすでに入っている。

 線の感じがツヴァイくんなんかのとは違うけど……あれが焼印なのかな。
 
「もちろん奴隷印と合わせ罪人印……首の印でございますな、こちらも隠すことは禁じられておりますので、もし外などを出歩いたりでもすれば……」

「いや、でも、流石になにかしたら犯罪になるんじゃ……?」

「表向きは当然罰せられることとなっておりますが、罪人印のついたものについては殺害や後遺症の残るような重い傷害以外は罪に問われないのが通例となっております」

 ……可愛くって抵抗できなくって大抵のことやっても罪に問われない子が出歩いたりしたら……。

 まあ、酷いことになるのは目に見えてるよなぁ。

「ですので、犯罪奴隷を買ったものは敷地内から出さないのが普通ではございますが、そこはお客様次第ですな」

 この子がいいご主人さまに出会えることを祈るしか無い。

 ……いや、そんな縋り付くような目で見ないで、ほんと。

「それにしても、犯罪奴隷さんの扱いがいくら何でもひどすぎません?」

 いくら犯罪者とはいえ日本なら人権問題になっていただろう。

 異世界だし、そこら辺の意識が違うとはいえ流石にひどすぎる気が……。

「犯罪奴隷になるのは、死罪かそれに準じる罪を犯したものでございますからなぁ」

 はぇ?

「え!?この子なにやったんですかっ!?」

 死刑相当の罪って……。

 びっくりしてあげてしまった僕の大声にもビクついているこの子がそんなだいそれた事出来るとは思えないんだけど?

「罪状としては貴族を襲った罪でございます。
 念のため申し上げますと、平民が貴族を害した場合問答無用で死罪でございます」

「マジですか……」

 そんな事する子には見えないけど……。
 
 まあ、人は見た目によらないとはよく言うけどなぁ……。

「罪状と判決についてはマジでございます。
 ただ、本当に襲った……あるいは誘ったのが商品の方だったのか貴族の方だったのか、それは不明でございます」

「えっと、それはどういう……?」

「商品の罪状を細かく申しますと、伯爵家の若いご子息を性的に襲った罪でございます。
 本人は否定しておりましたが、ラビィ種というのは非常に精力旺盛なことも有りそういう問題を起こしやすいこと。
 また、なんと言いますか……犯行発覚時の体位から見られる加害者被害者の類推。
 そしてなにより罪を訴える伯爵夫人の強硬な態度も有り、判決が確定いたしました」

 うわぁ……。

 そう言う系の犯罪者さんかぁ。
 
「それで『問題のある商品』ということなんですね」

 流石に無罪かそれに近い状況から死刑相当まで落とされたんだとしたら可哀想だ。

「ああ、いえ、そうではございません」

 同情してたけど違うらしい。

「このような商売をやっていますと、この件に限らず同じような『憐れな』商品はいくらでも取り扱うことになります。
 この商品の件についても本人がそう言っているだけで、実際誰に罪があったかは分かりませんし、本来でしたら情状を鑑みて出来るだけ良さそうなお客様にご紹介する程度でございます」

 さすが奴隷商、シビアな世界に生きている。

 そりや、奴隷になる理由なんてそれぞれ皆悪い話だらけだろうからなぁ。

「でも、そうなるとなにが問題なんですか?」

「実は、この商品の年齢が……」

 なんか身を乗り出して耳打ちしてくる奴隷商さん。

「え?それって大丈夫なの?」

 思わず敬語を忘れるくらい驚いた。

「ダメでございます」

 だよね。

 流石にそうだよね。

「本来なら年齢を鑑みて、罪を一等減じられるか、それが無理なほどの重罪の場合、素直に死罪にしてさしあげるものなのですが……。
 この商品の場合、書類上は成人となっておりまして……」

「なんでそんなことに……。
 本人はなにも言わなかったんですか?」

「この件が発覚した際に裁判記録を取り寄せましたが、商品は実年齢をきちんと申告していたそうでございます。
 しかし、それによって罪が減じられるとなった際に件の伯爵夫人が成人であると言いはりまして……」

 うわぁ……。

 そこまでお母さんの恨みを買ってしまったのか……。

「実際に年齢をごまかしていると言う可能性は?」

「ございません。
 先程専門家に確認していただいた結果が届きましたが、商品の主張している年齢で矛盾は一切ないと」

 さすが奴隷商さん、そこらは抜かりなかったか。

「ということで、つい先程まで『そちら』を売りとしておりました商品ゆえあのような格好をしている次第でございます」

 なるほど、それであんなハレンチな格好を……。

「分かった時点で衣装替えてあげることできましたよね?」

「はっはっは、これはお手厳しい」

 参ったって顔してるけど、きっと全部狙い通りだな。

 まずエロい格好ってことで目は引くし、事情を知ったあとだとあんな格好させているのが可哀想になってくる。

「えっと……この話を僕にしてきたってことは……」

「ぜひともサクラハラ様にお買い上げいただけないかと」

 向かいのソファから立ち上がって、半分に折れ曲がるんじゃないかってくらい深く頭を下げてくる奴隷商さん。

 だ、だよねー。
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