いつの間にか異世界転移してイケメンに囲まれていましたが頑張って生きていきます。

アメショもどき

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第3章 学園に通おう

72話 外出

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 午前中のうちにマリーナさんに寮で働いてほしいという話をした。

 嬉しいことに快諾してくれたので、これで使用人1人確保だ。

 料理が得意な子なので、そのまま調理担当になってもらってもいいかもしれない。

 朝会えなかった分、お昼にみんなといろいろ報告しながらご飯を食べて、午後。

 とりあえず今日は奴隷商さんのところに行くことになっている。

 昨日家臣のみんなと相談した結果、使用人ギルドに頼むのは最終手段ということになった。

 やっぱり、無名の家だとまともな人が来てくれるか怪しいらしい。

 領地の人を募集するのも後回しということになった。

 領地の人を雇うとなると、僕が表に出られないせいでユニさんちで雇ってもらうか、そう嘘をついて雇うしかなくなる。

 それはちょっと踏ん切りがつかなかった。

 僕が領主になる覚悟を決めればいいだけの話なんだけど……情けなくて申し訳ない。

 あとはみんなの知人なんだけど……。

 ミゲルくんたちの心当たりはみんなそれぞれの実家やユニさんちに勤めてしまっていた。

 ヴィンターさんやツヴァイくんたちはそもそも知人さんがどこにいるのか、からだからなぁ。

 ということで、まずは奴隷商さんにあたってみることになったのである。



 前回と同じく使用人に扮して馬車で貴人街の外れまで送ってもらった。

 今日のお供はムーサくんとツヴァイくんだ。

 ツヴァイくんはもちろんだけど、今日はムーサくんも剣を帯びている。

 体格のいいムーサくんが剣を帯びていると、実にかっこいい。

 4人衆の中で一番体格のいいムーサくんは、剣の腕も1番らしい。

 最近は空いた時間にツヴァイくんたちに稽古をつけてもらっているらしくて、ツヴァイくんも『実戦に出しても問題ない腕です』って言ってた。

 そんな2人に挟まれて、人混みも安心して歩いているんだけど……。

 なんか、アレクさんに案内してもらってたときより、人目が気になる。

 ただでさえ、ドラゴニュートのツヴァイくんはいるわ、イケメン2人に囲まれてるわで人目を集める要素は十分なのに、街になれた先導役だったアレクさんがいなくなったせいか僕が人にぶつかりかけたり、転びかけたり、迷子になりかけたり散々な有様だ。

 それだけならまだしも、そのたびに両隣のイケメンさんたちが甲斐甲斐しく僕の世話を焼いてくれるので……。

 実に恥ずかしいことになっている。

「あっ、ハルさん、足元に気をつけてくださいね」

 言ったそばからなにかにつまずいた僕をムーサくんが抱きとめてくれる。

「あ、ありがとう、ムーサ」

「お館サマ、そこで立ち止まってはいけまセン」

 ムーサくんにお礼を言っていたらツヴァイくんに肩を抱き寄せられた。

 数瞬前まで僕がいたところを早足の人が通り過ぎていく。

「……ありがとう、ツヴァイ」

 今度は人が来ないことを確認しながらツヴァイくんにお礼をいう。

「まったく、ハルさんは危なっかしいんですから。
 し、心配なので、て、手を繋いでいましょう」

 そう言ってムーサくんは僕の手を握ってくる。

 しかも、指を絡める恋人つなぎだ。

「本当デス。
 お館サマは危なっかしくていけまセン」

 ツヴァイくんも同じことを言って、腕をくんでくる。

 え?このまま行くの?

 僕が危なっかしいのは確かだし、2人とも楽しそうにしているしでやめろとも言えない……。

 見られてるのは気の所為。みんな見てない。見られてるのは気の所為。みんな見てない。

 そう念じながら奴隷商さんのお店まで歩いていった……。



 ――――――



 奴隷商さんのお店について、要件を伝えようととりあえず名前を名乗ったら、すぐに前に案内された豪華な部屋に案内された。

 なんでも、今、奴隷商さんは外せない要件中らしくて、ここで少し待っていてほしいと言われた。

 他に接客をしている店員?さんもいるし、お忙しいなら奴隷商さんでなくてもいいんだけど……。

 そう伝えたら、僕の担当は奴隷商さんだからと平謝りされた。

 なんかアポ無しで来ちゃってかえって申し訳ない。

 とりあえず、前回と同じく置いてあるやたらと美味しいお菓子を食べながら待つとしよう。

「主さま、なんですかこれっ!?すごい美味しいですっ!」

「お館サマっ!?これはワレワレが食べてもいいものなのデスかっ!?」

 ムーサくんもツヴァイくんも驚いている。

 ね?なんか色々不安になるレベルの美味しさだよね。

 大丈夫、多分これサービスだから。

 あるだけ食べよう。



 お菓子を食べ終わるのを見計らったようなタイミングで、ドアが開いて奴隷商さんが入ってくる。

「いやいやいやいや、おまたせしてしまい申し訳ありません」

 相変わらず見惚れるくらい優美な仕草だ。

 顔はカエルなのに……っていうのは失礼か。

 心のなかで奴隷商さんに謝る。

「いえ、こちらこそ突然出向きまして申し訳ありません」

「いえいえ、サクラハラ様でしたら、いつお越しいただいてもお時間をお作りいたしますとも。
 なんでしたらお声がけいただきましたら、こちらから出向きますのに」

 なんかやたらと気に入ってくれているふうな奴隷商さん。

 社交辞令なのは分かるけど、こういうふうに対応されると悪い気はしない。

「そちらは前回お買い上げいただいた当商会の商品でございますな。
 その後の様子はいかがですかな?」

 僕の隣に座るツヴァイくんのことを興味深そうに見ている奴隷商さん。

 当時とは比べ物にならないくらい元気そうなことに驚いているのかもしれない。

 あのときは本当に死にかけていたからなぁ。

「はい、実に優秀で、忠誠心に溢れたいい子です」

 さらにいえば実に可愛いです。

 そう思ってることまで伝わったのか、ツヴァイくんがちょっと照れてる。

「それはようございました」

 実に嬉しそうに笑う奴隷商さん。

 見た目は笑うカエルという不可思議な感じのものなのに、なんかお爺ちゃんが笑っているような空気になるから不思議だ。

「さて、それで、本日はどのようなご要件で?」

 にこやかな顔のまま本題に入る奴隷商さん。

 なんか雰囲気も和やかで、ホイホイ買わされちゃいそうだ。

「実は……」

 気を引き締め直して簡単に事情を説明する。

「ほぉ、使用人に出来る商品を2人……ですか」

 話を聞いて少し考え込む奴隷商さん。

 話してるときは『それならすでにご用意しています』とか言われるんじゃないかって心配してたけど、流石にそんなことはなかった。

 この奴隷商さん得体の知れない情報網を持ってるからな。

「学生寮の管理のできる使用人となりますと、年を経たものがよろしいでしょうな。
 力仕事には向きませんが、それについては問題ないはず。
 学生の世話ということを一番に考え、何かと気がつくものがよろしいでしょう」

 ほーら、寮のことなんて言ってないのに知ってるし。

 力仕事のことも、ツヴァイくんたちがやるって織り込み済みなんだろう。

 それにしてもベテランさんか。

 確かに、寮母さんとかって言うと恰幅のいいおばちゃんとかってイメージだな。

「では、それでお願いしたいと思います。
 良さそうな人はいますでしょうか?」

「もちろんでございます」

 奴隷商さんは笑顔でそう言うと、パンパンと2度手を叩く。

 それ以上何もしない奴隷商さんをムーサくんが不思議そうな顔で見ている。

 大丈夫、なんか知らないけどあれだけで話はちゃんと進むから。

「さて、では、商品のご用意をしている間にちょっと世間話でもしておりましょうか」

 はぇ?

 奴隷商さんのことだから、すぐに『商品』が来ると思ったのにそんな事いいだした。

 なんか話があるのかな?
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