いつの間にか異世界転移してイケメンに囲まれていましたが頑張って生きていきます。

アメショもどき

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第3章 学園に通おう

61話 冒険

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 凹んでションボリしている僕をみんなが優しい目で見ている。

 もう完全に扱いが世間知らずの子供だ。

 いや、その通りなんだけどさー。

 僕のあとに手を上げたのはアッキーだった。

「では、我からの案を述べさせてもらおう」

 椅子から立ったアッキーは1度みんなを1周り見回してから口を開く。

「この際、皆でこの世界を冒険しようではないか」

 ほぉ、冒険とな?

 しょんぼりしていた僕の中で小学生が騒ぎ出す。

「皆で一緒にこの世界を回って生きるのだ。
 生活は狩りや採集で何とかなるし、人里に行ってトラブルを解決すれば金も手に入る。
 なに、そこらのことに関しては我は慣れたものだからいくらでも教えてやろう」

 人里にあまり出ないとは聞いていたけど、アッキーそんな風にして生活してたのか。

 しかし、いわゆる冒険者生活かぁ。

 なんていうか男の子としては1度は憧れたことがある。

 世界を自分たちの腕ひとつで巡って、土地土地の風情を楽しんで、ときにスリルの中に身を置く。

 安定なんてものはないだろうけど、飽きることはない生き方だろう。

 特にみんなと一緒に行けるなら楽しい未来しか思いつかない。

「北部の大雪原。西部の大森林。東部の古代都市群。南部の砂漠地帯。
 他にも大小様々な冒険がお前たちを待っているぞ」

 アッキーの話を聞いてムーサくんとメファートくん、それに、僕が通訳したのを聞いたゼクスくんとノインくんの目が輝いている。

 やっぱり、冒険は男の子の心を躍らせる。

 僕もワクワクしてきてしまったところで、ユニさんが小さく手を挙げる。

「それって、師匠が人里にいたくないだけですよね?」

「ぐっ」

 ユニさんに突っ込まれて言葉に詰まるアッキー。

 え?そうなの?

 いやいや、それでも、やっぱり冒険生活は楽しそう。

「それに、道中のモンスターや、各地での安全対策はどうするんですか?」

 さらに、手を上げたミゲルくんが追い打ちをかける。

「そ、それは、我も弟もいるから問題ない。
 それにお前たちも下等種としてはそれなりに腕の立つ方だから問題ないだろう」

「ボクは主さまを危険に晒す可能性と同時に、ボクたちが危険なことをした際に主さまが心を痛める可能性を問題にしています。
 前者はボクたちが命をかけても守るとしても、後者の可能性がある限り進んで危険に飛び込んでいくような行為はあまりしたくありません」

「ぐうっ……」

 ミゲルくんの言葉にうなずいているユニさん、ヴィンターさん、ツヴァイくん、ドライくんたち精神大人組。

 アッキーも言い返せないところを見ると、そういう懸念が皆無ではないみたいだ。

 まあ、そりゃ、冒険イコール危険、危険なことこそ冒険って感じな所あるからなぁ。

 たしかに、みんなにそんな危険な事はしてほしくないかも。

 ユニさんが意識を取り戻さないかもって思ってたときの気持ちがちょっと蘇ってくる。

 もうあんな思いはしたくないなぁ。

 ミゲルくんの言う通り、やむを得ない場合ならともかく自ら進んで血なまぐさいことはしないでほしいな。

 そういう事考えると、やっぱりアッキーの案にはちょっと反対かな。

 それはそれとして、やっぱりこの世界にモンスターとかいるんだ。

 冒険暮らしは置いといて、いつかちょっとそういうの見に行きたい気はする。

 いつかアッキーに相談してみよう。



 僕の中で落選扱いにしてしまったので、ちょっと思考がズレた。

 アッキーもガックリしているからもう諦めてるっぽく見える。

 と思ってたら、僕の膝の上に乗っていたミッくんが手を上げた。

「お、おおっ、弟よっ!お前も、冒険生活良いと思うだろう?
 な?な?」

 思わぬ援軍に目を輝かせるアッキー。

「あ、いえ、そうではないです、兄上」

 と思ったら、あっさり援軍がいなくなった。

 またガックリと肩を落とすアッキー。

 南無。

 それにしても、それじゃミッくんはどうしたんだろう?

「ようやく我が派遣された意味が分かった」

 『派遣された』?

 アッキーが久しぶりに僕と会わそうと思ったとか思って連れてきてくれたわけじゃなかったのか。

 一応アッキーの顔を見てみるけど、アッキーも顔にはてなを浮かべているのでやっぱり違うっぽい。

 ミッくんは僕の膝の上に乗ったままで言い放つ。

「下等種共よ、貴様らにエルフの里の意志を伝えよう。
 エルフの里はサルを少子化対策担当顧問として招聘することを決定した。
 伏して我らの意志に従うがいい」

 高慢な態度で、臣下にでも言い放つかのようなミッくん。

 途端にみんなの表情が固くなる。

「……それは決定事項なのですか?」

 ユニさんの声も硬い。
 
 そりゃ、アッキー1人でも大問題になるエルフさんたちだ。

 エルフの里に何人いるのか分からないけど、人間なんて何人束になってもかなわないのだろう。

「うむ、もちろんだ」

 みんなを見下した笑いを顔に浮かべながらうなずくミッくん。

「ああ、これ、嘘だぞ」

 そしてすぐさまアッキーに否定されるミッくん。

「長老会には我がはっきり伝えておる。
 『ハルの機嫌を損ねたら全部パーになるから変なことやんじゃねえぞ』とな。
 基本、エルフの里の方針はハルのご機嫌を伺いながらとなっているはずだ。
 こんな強硬策に出るはずがない」

 ジト目でミッくんを見たら目をそらされた。

「ミッくーん、どういうことかなぁ」

 目を合わせようとしないミッくんの頬をグニグニと引っ張る。

「いひゃい、いひゃい、ひゃる、それ、いひゃい」

 軽く涙が浮かんできたところで手を離してあげる。

 ほっぺが赤くなってしまっているけど、まあお仕置きだ。

「……だって……サルがなかなか遊びにこないのがいけないんだからなっ!」

 逆ギレしたミッくんが僕を睨みつけてくる。

 その目からは涙がこぼれちゃっているけど、ほっぺが痛かったからか寂しかったからか分からない。

 いや、そう言われてもまだ1か月も経ってないし……。

 そもそも、遠くてそう簡単には会いに行けないし……。

 いや、これは僕の言い訳だな。

 恋人が悲しんでいる以上、悲しくないようになんとかしないと。

「分かった。寂しい思いさせてごめんね。
 これからどうするかは、この話が終わったらちゃんとお話しよう」

 ミッくんのこぼれ続ける涙を吸い取って、チュッと唇に軽くキスをする。

 一応機嫌が治ったのかギュッと抱きついてくるミッくん。

「絶対だからな」

「うん、ミッくんが寂しくならない方法を話そう。
 でも、それはそれとして、さっきの態度は良くないよ、みんなに謝ろう」

 そう促すと、素直にみんなに向かって頭を下げるミッくん。

「無礼な態度、すまなかった」

「弟としては毎日ハルに会える皆が羨ましかったのもあると思う。
 我からもよく言い聞かせておくから、どうか、許してやってくれ」

 そう言ってアッキーもみんなに頭を下げる。

 そんな2人をみんなが微笑ましげに見てくれている。

「まあ、ここは、ハルに今後頑張ってもらうということで水に流しましょう」

 ユニさんがまとめた言葉に頷くみんな。

 一瞬不穏な空気になりかけたけど、とりあえず無事収まった。

 ミッくんのことは後でちゃんと話をしよう。

 あ、そうだ、アッキーにもなんか知恵を貸してもらおう。

 そんな事を考えながら頭を撫でていた膝の上のミッくんが口を開く。

「あ、でも、さっきの話自体はあながち嘘というわけではないぞ」

 えっ?それはどういう事?
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