いつの間にか異世界転移してイケメンに囲まれていましたが頑張って生きていきます。

アメショもどき

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第2章 街に出てみよう

53話 コミュニティ

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 ある日の昼下がり。

 昼食後の散歩をしていたら、中庭でミゲルくんたちとツヴァイくんたちが集まっていた。

 言葉は通じないはずなのになにをしているんだろう?

 一見談笑しているようにみえるけど……。

「みんななにやってるの?」

 声をかけながら中庭に入っていくと、僕の周りにみんなが集まってきた。

 あれ?ユニさんもいたんだ。

 死角になるところでツヴァイくんと話をしていたらしい。

 ということは、イヴァンさんが通訳しててくれたのかな?

 と思ったら、イヴァンさんはちょっと離れたところにあるテーブルで真面目な顔のアッキーと話をしているので違うらしい。

「主さま、今皆さんと主さまの話をしていたところです」

「お館サマ、今みんなデお館サマの話をしてマシタ」

 笑顔で言うミゲルくんとフィーアくん。

 周りのみんなも頷いている。

 ぼ、僕の話?

「共通の話題があると言葉の壁なんてなんとかなるというのは本当かもしれませんね。
 ハルの話をしていたらなんとなくツヴァイとも話が成立している気がします」

「ハイ、ワレもお館サマの話ならユニの話も理解できる気がします」

 そう言って笑い合うユニさんとツヴァイくん。

 つ、通じてる。

 そのうち少しでもお互いの言葉を覚えていけるといいなと思ってたけど、これならそれほど時間がかからずに簡単な意思疎通ならできるようになるかもしれない。

 話のネタが僕なのが微妙な感じだけど、いい方向に行っているみたいだからこのまま親睦を深めてくれたらいいな。

 あそこで『僕の臭いを嗅ぐなら頭か首筋か』で言い争っているモレスくんとゼクスくんはほっとこう。

 喧嘩するほど仲がいいと思うことにする。

 ……ガチ喧嘩になりそうなら流石に止めようと思ってたら、『股間の臭い』で意見の一致を見たようだ。

 やめて。

 身振り手振りを交えてだけど、みんな結構普通に話せてる。

 それは嬉しいんだけど、話題が話題なので僕はここに居づらいな。

 全部理解できてる僕としては、なんていうか漏れ聞こえる話だけで色んな意味で恥ずかしくなってくる。

 こういうときはイヴァンさんのところに避難するに限る。

 全体的に薄桃色な雰囲気のこの場から、アッキーと話をしているイヴァンさんのところに逃げる事にしよう。



 アッキーとイヴァンさんは中庭に置かれたテーブルの上に、なにか紙を置いてそれを見ながら話をしているようだった。

 あれは……建物の絵図かな?

「おお、今丁度お前の屋敷の話をしているところだぞ」

 僕の屋敷かぁ。

 今となってはミゲルくんたちだけじゃなくって、ヴィンターさんやツヴァイくんたちもいるからなぁ。

 一番初めに考えていたワンルーム規模とかって話にはいかなくなってしまった。

「あれ?でも、基本設計は出来たって話を聞いた気がするんだけど」

 ちょっと前にユニさんとイヴァンさんが『屋敷の設計が終わったので確認してほしい』ときたことがあった。

 図面なんて見てもさっぱりわからないから、完全にユニさんにお任せしちゃったんだけど……。

 なんかダメなところあったのかな?

「あんなの却下だ却下。
 庭の作り方がなっていない。
 もっと、こう、森をだなぁ……」

「ということで、お師匠様が横槍を入れてきたので裏の森を取り込む形で設計をし直しているところでございます」

 なにか語りだしそうになっていたアッキーを遮って、イヴァンさんが説明してくれた。

 なるほど、事情はわかったけどアッキーのワガママひとつで図面変えちゃっていいんだろうか?

 いや、アッキーの機嫌を損ねるのが良くないのは分かるけどさ、所詮は僕のお屋敷の話。

 無視してもそこまで酷い拗ね方はしないだろうし、それくらいなら僕がアッキーの機嫌良くなるまで甘やかし続けるよ?

 そうイヴァンさんに目で訴える。

 アッキーが目の前にいる状況で言いづらい話だけど、イヴァンさんならこれで通じると信じてる。

「図面の変更を条件に建設についてお師匠様の全面的な協力がいただけるとのことで、結果としてそちらのほうが早く仕上がると愚考いたしました」

 ほら通じた。

 しかし、そういう話か。

 たしかにアッキーの不思議パワーを使えば、お屋敷でもすぐに建つのかもしれない。

「でも、そもそも、そんなに早く建てる必要あるんですか?
 いや、僕の家臣たちの扱いが難しいのはわかるんですけど、最近はみんな慣れてきたみたいだし別に急がなくていいんじゃないのかなって」

 当初はユニさんのお屋敷という領域の中に僕主従という別の指揮系統が混じってしまっているせいでお屋敷の使用人さんたちに軽い混乱が生じてしまっていた。

 それを解消するためにも僕のお屋敷というしっかりとした僕の領域を作ろうって話だったんだけど……。

 僕がみんなに『基本的にはイヴァンさんの指示を聞いて』というゆるい指示をしているせいか、なんか今ではみんな馴染んできてる。

 この調子ならもういっそのこと僕のお屋敷いらないんじゃないの?ってレベルだ。

「それがそうもいかなくて」

 仲良くツヴァイくんと歩いてきたユニさんが話しに混ざってくる。

 ユニさんの椅子を引いてあげているツヴァイくんと、そんなツヴァイくんに笑顔で軽くお礼を言って座るユニさん。

 僕の恋人たちが仲良さそうで嬉しい。

 いやいや、そうじゃなくってユニさんが大事な話ししてたぞ。

「えっと、そうもいかないって?」

 なんか新たな問題発生?

「全部ハルが悪いんです」

 ええっ!?僕なんかやらかしたっ!?

「ハルが私とスレイの仲立ちなんてするから、スレイが遊びに来る場所が必要になったんですよ」

 言葉とは裏腹にニコニコと嬉しそうなユニさん。

 なるほど、その件かぁ。

 スレイくんの件についてはたしかに僕のせいだ。

「遊びに来る場所って?」

「今のまま私の屋敷にハルがいる状況だと、スレイは私の屋敷に遊びに来るって形になりますからね。
 そうなってくると継母が少しうるさいんですよ」

 苦笑しながらそういうユニさん。

 なるほどね、それで僕の屋敷を建ててスレイくんは僕の屋敷に遊びに来るって形にしたいのか。

 それなら『たまたま』ユニさんが遊びに来ても不思議じゃないからなぁ。

「ということで、ハルが悪いんだから諦めて大人しく屋敷建てさせてくださいね」

 ぐっ、さっきっからなんか僕のせいって言ってくると思ったらこれを言いたかったのか。

 でも、こう言われちゃったら頷くしかない。

「できれば近日中に設計を終わらせて、建設自体は1、2週間程度での完成を目指してます」

「早すぎないっ!?」

 いくら何でもそれじゃワンルームだって建たないだろう。

「師匠の全面協力ですからね。
 我々もお金に糸目はつけませんし多分いけます」

 そ、その話まだ生きてたんだ。

 頼むからお金には糸目付けよう。

「早く建てる分、妥協点は多くなりますから、ちゃんとしたお屋敷はまた後で建てますね。
 当然建設費には糸目をつけずに立派なものを作りますよぉ」

 なんかやたらとやる気のユニさん。

 イヴァンさんとアッキーまでウンウンと頷いている。

「お屋敷なんてひとつあれば十分です」

 いや本当に。

「えー、建てましょうよ。
 ハルの恋人たちを集めたハルハーレム」

 おい、こら、なに作る気だ?

「僕の屋敷を作るって話じゃなかったっけ?」

「ええ、そうですよ。
 ハルの屋敷、別名ハルハーレムです。
 今の屋敷の倍くらいの屋敷を建てて、ハルの恋人たちだけで暮らすんです。
 たのしいですよぉ」

 いや、それは楽しそうだけどさ。

 このお屋敷の倍って、このお屋敷でも数十人の人が暮らしているんだけど、ユニさんは僕が何人恋人を作ると思ってるんだ?

 ……ユニさん、ミゲルくん、ムーサくん、メファートくん、モレスくん、アッキーにミッくん、ヴィンターさんに、ツヴァイくん、ドライくん。

 …………フィ、フィーアくんは入れておこうか。

 ゼクスくんとちっちゃなノインくんは保留だ、保留。

 確定枠だけでも11人か……。

 自覚はあったけど、数えると本当に節操ないな、僕。

 だってみんなかっこいいし、可愛いんだもん。

 誰か1人になんて決められない。

 うん、やっぱり最低だな、僕。

「楽しい未来の話ししているのに、なに沈んだ顔してるんですか」

 僕の顔を見て苦笑いを浮かべてるユニさん。

 おっと、顔に出てたか。

「いや、色々考えてたら、みんなよく僕の浮気許してくれてるなって思ってさ」

 大本はそういう話だから嘘はついてないぞ。

「あー、それについては、皆さんそういうコミュニティだという共通認識がありますからね」

「そういうコミュニティ?」

 浮気に寛容な人のコミュニティだろうか?

 ツヴァイくんとか、そういうところ真面目そうだけどな。

 ……い、いや、他の人が真面目じゃないって意味じゃないよ?

「ええ、ハルを独り占めできなくてもいいから一緒にいたい人たちのコミュニティです」

「えっと……?」

 いまいち意味が分からない。

「まずは私。
 まあ、ここは普通に恋人関係が始まりですね」

 うん、なんていうかなし崩し的な感じではあったけど、僕とユニさんは恋人関係になった。

 そういえば、きちんと告白とかしてない気がするな……。

「ハル、愛しています。
 私と付き合ってください」

 ユニさんが突然真剣な顔で言ってきた。

 最近、僕の顔色から心を読むようになってきて嬉しいやら恥ずかしいやら。

「えっと……あの……よ、喜んで」

 色んなところでいっぱい言い合ってるけど、こうして改めて言われると照れる。

 僕は照れて顔が熱くなっているのに、ユニさんはただ嬉しそうに笑うだけだ。

 いつか照れさせてやる。

「ということで、はじめは私とハルの恋人関係だったんですけど、問題はミゲルたちですね」

 まあ、たしかに彼らは色々大問題だけど。

「はじめはミゲルが本気なだけで、他の3人はそこまでじゃなかったんですけどね」

 そういえばそうだったな。

 ミゲルくんは……まあ、うん、可愛かった。

 でも、言われてみればミゲルくん以外って、なんていうかいわゆるフラグ的な特別な思い出ってないんだよな。

 なんかいつの間にか仲良くなってた。

 それも、一気に肉体関係レベルまで親密に。

「あの年頃の子達が相手するにはハルはエロ過ぎたってことですね」

「どういうことっ!?」

 突然なに言い出した。

 ミゲルくんたちが色々教えてくれって言ってくるまで普通の主人と使用人だったはずだけどっ!?

 ユニさんは僕の抗議を聞き流して話を続ける。

「その結果、あの4人はもうハルに夢中で、ハルがいなくちゃ生きていけない体になっちゃいましたから」

 なんかユニさんがすごい聞こえの悪いこと言ってる。

「ハルに私がいてもいいと思う子が一気に4人も加わった時点でもう方向性は決まっちゃいましたね。
 いつの間にか加わっていた師匠とその弟さんは自分たち以外の恋人なんて気にもしていませんし」

 エルフのアッキーとの関係は、アッキーの希望で内緒だった。

 初めての本当の浮気だったけど、アッキーがあまりにベタベタしてくるので先日ついにユニさんにバレてしまった。

 怪しいなぁとは思ってたけど、エルフは性欲が薄いことで有名なので単なる仲良しだと思われてたそうだ。

 アッキーと二人で白状したときにはユニさんとイヴァンさん二人がかりで嘘じゃないか疑われた。

 その流れで隠す必要の無くなったミッくんのことも報告してしまっている。
 
「更にその後入ってきたのがよりによってハルには絶対に逆らえない奴隷の子たちですからね」

「え、いや、でも、僕は別にそういう関係になれとか迫ってないよ?」

 ヴィンターさんにはそういう事しても待遇変えないってはっきり言ったし、ツヴァイくんたちはなんていうか好意がその……あからさまで見てられなかったというか……。

「当然です。
 完全に機能しているとはいえないとは言え、そういう奴隷を保護する法律もありますからね。
 もし本当にそういう事になったら私が彼らを逃していました」

 そういう目的以外の奴隷に手を出すと普通に犯罪らしいからなぁ。

 実質、僕はもう犯罪者だ。

 ヴィンターさんやツヴァイくんに訴えられたら勝てない。

 その場合、奴隷は逃げても被害者として三等市民に昇格されるらしいから、ある意味手を出されたらチャンスらしい。

 主人もそういう事があるから、警戒して手を出したと疑われるようなことをすることは殆どないんだとか。

「今回問題なのは、奴隷であることで彼らに『自分の他にハルに恋人がいても仕方ない』と思う下地ができてしまっていたことですね。
 まあ、かなりの部分が彼ら自身の性格と境遇によるところが大きい気がしますが」

 ヴィンターさんはエッチ好きっていうのもあるみたいだけど、半分はお礼みたいな感じだからなぁ。

 スポーツ感覚で誘ってくるのがエロい。

 そんな雰囲気のせいか、男女問わずお屋敷の使用人さんにも人気があるみたいだけど、本人は僕一筋だって言ってる。

 ツヴァイくんたちは自分たちが奴隷だってことはあんまり気にしてないみたいだけど、完全に僕のことは命の恩人扱いだからなぁ。

 僕のために命を捨てることを公言して憚らないからもうちょっと気楽に生きてほしい。

 本人たちが楽しそうに暮らしてくれているのだけが救いだ。

「彼ら6人が入ってきたことで、決まっていた方向性がもう変えようのないものになりましたね。
 これだけの人数がハルを共有財産として扱っている以上、今後ハルハーレムに異議を唱える子は入ってこれないでしょうね」

 ゼクスくんとノインくんが数に入っているのが気になるけど、きちんと説明するのも恥ずかしいのでここは訂正しないでおこう。

「まあ、たしかにこれだけ人目をはばからずに浮気してたらもう僕に近寄ってこようなんて子はいないよね」

 そういう僕に、ユニさんは苦笑を向ける。

「それはどうでしょうね。
 ハルみたいな人はなんていうか……エッチな目で見られることは多いでしょうし、『モテてる人だから』モテるって言うのはよくある話ですから」

「あー、たしかに学校でも遊んでるっていう噂のある人は妙にモテたりしてたなぁ。
 でも、結局はそれもその人になにかしら魅力があるからでしょ?」

 まあ、あとはヤりたいだけとか。

 僕の場合は、それでも、まぁ、うん、とりあえずその時になったら考えよう。

「ハルの場合は容姿ももちろんですけど、時折、『かまわなきゃ』って心から思わされるときがありますからね。
 私を含めて刺さる人には本当に刺さります」

 え?僕ってそんなかまってちゃんみたいな感じだった?

 アッキーやツヴァイくんまで頷いてるしみんなそう思ってたみたいだ。

 うわ、ちょっとショック。

 自覚なかったけど、直さないと。

「というか、ツヴァイ、ユニさんの話通じてたの?」

「なんとナクわかりマス。
 お館サマはたまに寂しそうニ見えマス」

 いや、まあ、異世界人としちゃそりゃね?

 たまに日本のことを思い出して寂しくなることもありますよ。

 とか思ってたら、ツヴァイくんに頭を抱かれて、ユニさんに手を握られて、アッキーが自分の前にあったお茶菓子を押し付けてきた。

 お、おおう?

「あっ、主さまがあっちでいちゃついてるっ!」

「ツヴァイ兄サマばかりずるいデス」

 やばい、年少組に見つかった。

 ちょっと離れたところで話をしていた僕の恋人たちが寄ってくる。

 あとは食休みが終わるまでみんなわちゃわちゃと騒がしかった。

 うん、楽しかった。
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