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第1章 異世界で暮らそう
21話 甘やかし
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ミゲルくんは脱衣所の隅っこで、タオルを腰に巻いただけの姿のまま体育座りで膝に顔を押し付けて泣いていた。
タオル一枚でそんな格好しているからチンチンが丸見えになっちゃってるけど、そんな事気にもなっていないようだ。
チンチンはしょんぼりしてるのに泣き止まないし仕事にも来ないってことは、本当に嫌になっちゃって帰りたいとしか思えないんだろうなぁ。
でも、まだ脱衣所にいてくれてよかった。
外に出て他の使用人に見られたりしてたら色々言い訳が面倒になる。
とりあえず、腰にタオルを巻いて――恥ずかしがっている場合ではないと思うけど、真面目な話をしている時にプラプラさせてるのも何なので勘弁してほしい――バスタオルを2枚取るとミゲルくんに近づいていく。
僕が来てるのは気づいていると思うんだけどミゲルくんは身動きひとつせずにすすり泣きを漏らしている。
それとも、気づく余裕すらないのかな?
持ってきたバスタオルを一枚ミゲルくんの肩にそっとかける。
ミゲルくんは一瞬ビクリと体を震わせたけど、顔は上げないしすすり泣きも続いている。
「そんな格好でいると風邪引くよ?」
ひと声かけてから、僕もバスタオルを肩にかけてミゲルくんのすぐ隣、バスタオル越しに肩をくっつけてあぐらで座る。
「……うっ……うっ……」
ミゲルくんは嫌がったりも離れたりもしないで、むしろ少しこっちに体重を預けてきてくれている。
すすり泣いたままのミゲルくんの頭に手を伸ばして、優しく頭を撫でる。
「……ううっ……ずっ……うっ……ううっ……」
そのまましばらく黙って撫で続けるけど、それでもミゲルくんはすすり泣いたままだ。
うーん、どうしたものかなぁ。
ちょっと迷ったけど、思い切ってミゲルくんの体を引っ張って、無理矢理に膝枕……というかあぐら枕?の体勢にさせる。
あぐらのところに敷くタオルも持ってくれば良かったなってちょっと思う。
ミゲルくんは驚いて泣き止んでしまったけれど、存外大人しく膝枕させてくれた。
子供扱いするなって怒らないといいけど、と思いながら膝枕のまま頭を撫でる。
「ミゲルくんは偉いよ。よく頑張ってる。いい子だ。いい子、いい子」
そのままずっといい子と言いながら頭を撫でる。
「……………………うっ……ぐぅっ……ううっ…………うあぁぁーん。うああぁぁぁーん」
しばらくは僕の体に顔を押し付けてこらえていたミゲルくんだったけど、やがてこらえきれなかった泣き声が漏れ始め、最後には大声で泣き出した。
うんうん、寂しい時は変にこらえずに素直に泣いちゃわないとね。
ミゲルくんがちゃんと泣いてくれて安心した僕は、『いい子』と声をかけながらミゲルくんを撫で続けた。
――――――
「……ぐすっ……お、怒らないの……?」
30分くらいかな?泣き続けていたミゲルくんだったけど、少し前に泣き止んで静かになって、とうとう話しかけてきた。
僕は立ち直るのに一晩かかったのに、偉い子だなぁ。
そう思って、ミゲルくんの頭を撫で続ける手に偉い偉いという思いを込める。
「んー、なんで怒られると思ったの?」
「…………ボクがご主人さまにはしたないところ見せちゃったのとお仕事放り出しちゃったから……」
しょんぼりした声で言うミゲルくん。
ちゃんと自分の悪かったところが分かってる、やっぱりいい子だ。
「ね?ミゲルは自分でなにが悪かったか分かってるでしょ?
なら僕から怒ることはないかなぁ」
「……ならなにしに来たの?」
ミゲルくんは体を向きを変えて下から僕を不思議そうな顔で見上げた。
なにしに来たかって言われても今の僕に出来ることはひとつしか無い。
「僕はミゲルを甘やかしに来たんだよ」
そう言って、指でミゲルくんの涙の跡を拭うと、弟にしてたみたいに額にチュッと軽くキスをした。
「なにそれ、変なの……」
ミゲルくんはちょっと頬を染めて、おかしそうに笑ってくれた。
「さて、それじゃこれからどうしようかな?」
「どうするって?」
ミゲルくんのほっぺたをつついたり、髪の毛をクシャクシャにしたり、耳をこちょこちょしたり、鼻をムギュって押してみたり、仕返しに指を噛まれたり、お腹をくすぐられたり、ほっぺた軽くつねられたり、ひとしきりミゲルくんとじゃれ合った。
今ミゲルくんは僕のあぐらの上に横たわったまま腰に手を回して顔を押し付けてる体勢で落ち着いてしまっている。
実に頭を撫でやすくてよい。
「どうやったらミゲルが穏便に家に帰れるかな?って。
それともお仕事続ける?」
そう問いかけると、ミゲルくんは腰に回した腕に力を入れてぎゅって抱きついてくる。
「だよねぇ。
僕も帰れるなら帰りたいもん」
「……どういうこと?」
「あれ?ミゲルは僕が異世界人だって知らない?」
僕の言葉にこちらを見てふるふると首を振るミゲルくん。
僕が異世界人って知っているどころか、異世界って言葉自体いまいちピンときていないようだ。
言っちゃまずかったかな?口止めとかされてないから大丈夫だとは思うんだけど……。
「まあ、なんていうか……家への帰り方がわからない迷子みたいなものかなぁ?」
「え?ご主人さまどっかのお国の王子様じゃなかったの?」
そ、そんな話になってるの?
まあ、侯爵家の跡取りがやたらと丁重に扱っているとなれば、そういう噂が立っても仕方ないか。
「違う違う、一般庶民、んー、ただの平民だよ、僕は。
迷子のところを幸運にもユニさんに拾ってもらっただけ」
苦笑しながら語る僕を、ミゲルくんはほへーと言うような顔で見てる。
「だから、ミゲルたちもそんなにかしこまらなくていいんだよ?」
むしろ、状況が違ったら僕がミゲルくんたちに仕えてなければいけなくなることもあったはずだ。
「でもご主人さまはご主人さまだし……」
ミゲルくんは納得いかないのか、眉間にシワを寄せちゃっている。
そのシワを指でグリグリ押して伸ばす。
真面目な子だなー。
「まあ、そこら辺はミゲルたちのやりやすいようにやればいいよ。
話しそれたけど、家に帰りたい気持ちはわかるからねぇ。
なんとかミゲルは帰れるようにしてあげたい」
「ご主人さまはお家に帰れないの?」
ミゲルくんの話に戻そうと思ったら、また戻ってきた。
しかも、家に帰れないのかかぁ……答えづらい質問だなぁ。
………………認めづらい現実だなぁ……。
「……そう……だね、なかなか難しいかもなぁ」
出来るだけなんてこと無いっていう感じの苦笑いを作って答える。
それを見たミゲルくんはまたギュッと顔を僕に押し付けてきた。
僕、涙は流さなかったと思うんだけどな?
「まあ、だからね。
帰れる家があって、帰りたいミゲルには、無事に家に帰ってほしいかな」
なんかまた泣き出しちゃったミゲルくんの頭を優しく撫でる。
「ミゲルは本当に優しい子だね」
泣き止むまでそのまま撫で続けてた。
――――――
「さあ、今度こそこれからどうするか打ち合わせようっ!」
泣き止んだミゲルくんにあえて元気よく話しかける。
実はミゲルくんが泣き止むのを待っている間にちょっとした案が浮かんでいた。
結局のところ、ミゲルくんの方から仕事を辞めるっていいだしても仕方ないっていう分かりやすい理由があればいいのだ。
幸い?なことに今は絶対的権力者の僕と絶対服従が義務付けられたミゲルくんがタオルひとつのほぼ全裸で二人っきり。
誰も他に見ている人はいないし、事前にユニさんからの浮気の許可が出いることについても何人も証人がいる。
つまり、淫乱な僕が可愛いミゲルくんになにをしてもおかしくない状況は揃っている。
「ちょっと考えたんだけどさ……」
不思議そうな顔で僕を見上げるミゲルくんに、心のなかで『ごめん』と謝る。
「まず僕がミゲルくんのチンチンを触るでしょ?」
そう言って、いきなりミゲルくんのバスタオルの間から股間に手を差し入れる。
チンチンを触られたミゲルくんが悲鳴をあげる。
そうでなかったとしても少なくとも拒絶の声を上げるだろう。
その声は浴室の方にも響くに違いない。
だけど、僕の悲鳴ならともかくミゲルくんだけの悲鳴では……ミゲルくんが僕に襲われたかもしれないだけではユニさんもイヴァンさんも確認には来ないという謎の確信がある。
……もし来てしまったら、諦めてユニさんとイヴァンさんを巻き込もう。
そしてその後暴れるミゲルくん――出来ればここも派手に物音を立てて暴れてほしい――をなんとか落ち着けて、みんなを信じさせる作戦だって説明して土下座する。
許してくれるまで土下座する。
土下座は全てを解決してくれるはずだ。
なんとか許してもらったら、僕からのいたずらを理由に使用人を辞めさせてもらえばいい。
悲鳴と抵抗する物音は演技でもなんでもないガチなんだからみんなを信用させるのは容易なはずだ。
ユニさんと、特にイヴァンさんは騙せなかったとしても僕の使用人3人が証人になってくれるだろう。
これでミゲルくんは無事に解雇になることなく変態主人から逃れるために辞めることが出来る。
いっつぱーふぇくとぷらん。
そう思って、心のなかで謝りながらミゲルくんのチンチンを揉む。
ペニスだった。
そこにあったのはチンチンじゃなくて、僕の手を弾くほどにガチガチになったペニスだった。
なぜ?いつの間に?
い、いや、これは予想外だったけどかえって都合がいい。
よりによってこの状態で握られたのだ、さぞや大きな悲鳴を……。
ニギニギ……。
ニギニギ……。
「……ぁんっ♡」
ミゲルくんが鼻にかかった甘い声をちいさく上げた。
どういうことっ!?
「……え、えと……急にどうしたの?」
恥ずかしそうにこちらをチラチラと見るミゲルくん。
恥ずかしそうにはしているけど、嫌がっている様子は一切ない。
その表情を見て、ペニスを握っていた手をゆっくりと放す。
おちつけー、おちつけー、僕。
「……やめちゃうの?」
更に顔を赤くしたミゲルくんが、上目遣いで言う。
潤んでちょっとトロンとしたような目。
こんな感じの表情は、最近になってユニさんで見慣れだした。
これは駄目なやつだ。
もうヤル気スイッチ入っちゃってる。
なんでっ!?
――――――
謝り倒してなんとか忘れてもらった。
そんなになっちゃったら辛いのは分かるけど、ユニさんがいる身としてはなにかしてあげるわけにもいかない。
不用意に触ったちゃったのをひたすら詫びてなんとか許してもらった。
「ご主人さまがそこまで言うなら……」
そう言って許してくれたけど、すごい残念そうな顔だった。
わ、忘れよう。
ミゲルくんには本当に申し訳ないけれど、全て忘れよう。
「は、話を戻すけど。
そんな感じで僕にイタズラされたっていう言い訳でどうだろう?」
もう悲鳴とかの証拠を作れないから、僕たちの証言だけでゴリ押すしか無いけれどユニさんもイヴァンさんも多分察してくれるだろう。
「あ、あの……」
「ん?なに?もっといい案が思いついたならそっちでいこう」
もう今となっては穴だらけとしか思えない僕の計画より、優秀なミゲルくんが考えた計画のほうが間違いなくいいだろう。
そう思ってたんだけど、ミゲルくんは体を起こすと決意に満ちた目で僕を見て口を開く。
「ボク、やっぱり、ご主人さまにちゃんとお仕えしようと思う。
ううん、お仕えしたいですっ!」
「え?いいの?
……お家に帰れなくなっちゃうよ?」
「うん、それでもいい。
それにご主人さまと違って、ボクはお休みの時に帰ることは出来るし、全然大丈夫」
あ、そっか、使用人にもちゃんとお休みってあるんだ。
お休みのときだけとは言え、ミゲルくんはちゃんと家に帰れるのか……。
家族に会えるのか……。
いいなぁ……。
ついそんな事を考えてしまったら、ミゲルくんが両手で僕の手を包んだ。
温かい。
「だから、ボクはご主人さまが寂しくないようにお仕えするっ!」
……ぼ、僕より年下のくせに泣かせること言ってくれるじゃないか。
やばい、ちょっとマジで泣きそう。
「本当にいいの?」
問いかける僕に、ミゲルくんは僕の目をしっかりと見つめて黙って頷く。
今までよりずっと大人びた顔つきだった。
「えっと……それじゃ、これからよろしくお願いします」
そう言って、零れそうな涙を隠すために、僕は深々と頭を下げた。
タオル一枚でそんな格好しているからチンチンが丸見えになっちゃってるけど、そんな事気にもなっていないようだ。
チンチンはしょんぼりしてるのに泣き止まないし仕事にも来ないってことは、本当に嫌になっちゃって帰りたいとしか思えないんだろうなぁ。
でも、まだ脱衣所にいてくれてよかった。
外に出て他の使用人に見られたりしてたら色々言い訳が面倒になる。
とりあえず、腰にタオルを巻いて――恥ずかしがっている場合ではないと思うけど、真面目な話をしている時にプラプラさせてるのも何なので勘弁してほしい――バスタオルを2枚取るとミゲルくんに近づいていく。
僕が来てるのは気づいていると思うんだけどミゲルくんは身動きひとつせずにすすり泣きを漏らしている。
それとも、気づく余裕すらないのかな?
持ってきたバスタオルを一枚ミゲルくんの肩にそっとかける。
ミゲルくんは一瞬ビクリと体を震わせたけど、顔は上げないしすすり泣きも続いている。
「そんな格好でいると風邪引くよ?」
ひと声かけてから、僕もバスタオルを肩にかけてミゲルくんのすぐ隣、バスタオル越しに肩をくっつけてあぐらで座る。
「……うっ……うっ……」
ミゲルくんは嫌がったりも離れたりもしないで、むしろ少しこっちに体重を預けてきてくれている。
すすり泣いたままのミゲルくんの頭に手を伸ばして、優しく頭を撫でる。
「……ううっ……ずっ……うっ……ううっ……」
そのまましばらく黙って撫で続けるけど、それでもミゲルくんはすすり泣いたままだ。
うーん、どうしたものかなぁ。
ちょっと迷ったけど、思い切ってミゲルくんの体を引っ張って、無理矢理に膝枕……というかあぐら枕?の体勢にさせる。
あぐらのところに敷くタオルも持ってくれば良かったなってちょっと思う。
ミゲルくんは驚いて泣き止んでしまったけれど、存外大人しく膝枕させてくれた。
子供扱いするなって怒らないといいけど、と思いながら膝枕のまま頭を撫でる。
「ミゲルくんは偉いよ。よく頑張ってる。いい子だ。いい子、いい子」
そのままずっといい子と言いながら頭を撫でる。
「……………………うっ……ぐぅっ……ううっ…………うあぁぁーん。うああぁぁぁーん」
しばらくは僕の体に顔を押し付けてこらえていたミゲルくんだったけど、やがてこらえきれなかった泣き声が漏れ始め、最後には大声で泣き出した。
うんうん、寂しい時は変にこらえずに素直に泣いちゃわないとね。
ミゲルくんがちゃんと泣いてくれて安心した僕は、『いい子』と声をかけながらミゲルくんを撫で続けた。
――――――
「……ぐすっ……お、怒らないの……?」
30分くらいかな?泣き続けていたミゲルくんだったけど、少し前に泣き止んで静かになって、とうとう話しかけてきた。
僕は立ち直るのに一晩かかったのに、偉い子だなぁ。
そう思って、ミゲルくんの頭を撫で続ける手に偉い偉いという思いを込める。
「んー、なんで怒られると思ったの?」
「…………ボクがご主人さまにはしたないところ見せちゃったのとお仕事放り出しちゃったから……」
しょんぼりした声で言うミゲルくん。
ちゃんと自分の悪かったところが分かってる、やっぱりいい子だ。
「ね?ミゲルは自分でなにが悪かったか分かってるでしょ?
なら僕から怒ることはないかなぁ」
「……ならなにしに来たの?」
ミゲルくんは体を向きを変えて下から僕を不思議そうな顔で見上げた。
なにしに来たかって言われても今の僕に出来ることはひとつしか無い。
「僕はミゲルを甘やかしに来たんだよ」
そう言って、指でミゲルくんの涙の跡を拭うと、弟にしてたみたいに額にチュッと軽くキスをした。
「なにそれ、変なの……」
ミゲルくんはちょっと頬を染めて、おかしそうに笑ってくれた。
「さて、それじゃこれからどうしようかな?」
「どうするって?」
ミゲルくんのほっぺたをつついたり、髪の毛をクシャクシャにしたり、耳をこちょこちょしたり、鼻をムギュって押してみたり、仕返しに指を噛まれたり、お腹をくすぐられたり、ほっぺた軽くつねられたり、ひとしきりミゲルくんとじゃれ合った。
今ミゲルくんは僕のあぐらの上に横たわったまま腰に手を回して顔を押し付けてる体勢で落ち着いてしまっている。
実に頭を撫でやすくてよい。
「どうやったらミゲルが穏便に家に帰れるかな?って。
それともお仕事続ける?」
そう問いかけると、ミゲルくんは腰に回した腕に力を入れてぎゅって抱きついてくる。
「だよねぇ。
僕も帰れるなら帰りたいもん」
「……どういうこと?」
「あれ?ミゲルは僕が異世界人だって知らない?」
僕の言葉にこちらを見てふるふると首を振るミゲルくん。
僕が異世界人って知っているどころか、異世界って言葉自体いまいちピンときていないようだ。
言っちゃまずかったかな?口止めとかされてないから大丈夫だとは思うんだけど……。
「まあ、なんていうか……家への帰り方がわからない迷子みたいなものかなぁ?」
「え?ご主人さまどっかのお国の王子様じゃなかったの?」
そ、そんな話になってるの?
まあ、侯爵家の跡取りがやたらと丁重に扱っているとなれば、そういう噂が立っても仕方ないか。
「違う違う、一般庶民、んー、ただの平民だよ、僕は。
迷子のところを幸運にもユニさんに拾ってもらっただけ」
苦笑しながら語る僕を、ミゲルくんはほへーと言うような顔で見てる。
「だから、ミゲルたちもそんなにかしこまらなくていいんだよ?」
むしろ、状況が違ったら僕がミゲルくんたちに仕えてなければいけなくなることもあったはずだ。
「でもご主人さまはご主人さまだし……」
ミゲルくんは納得いかないのか、眉間にシワを寄せちゃっている。
そのシワを指でグリグリ押して伸ばす。
真面目な子だなー。
「まあ、そこら辺はミゲルたちのやりやすいようにやればいいよ。
話しそれたけど、家に帰りたい気持ちはわかるからねぇ。
なんとかミゲルは帰れるようにしてあげたい」
「ご主人さまはお家に帰れないの?」
ミゲルくんの話に戻そうと思ったら、また戻ってきた。
しかも、家に帰れないのかかぁ……答えづらい質問だなぁ。
………………認めづらい現実だなぁ……。
「……そう……だね、なかなか難しいかもなぁ」
出来るだけなんてこと無いっていう感じの苦笑いを作って答える。
それを見たミゲルくんはまたギュッと顔を僕に押し付けてきた。
僕、涙は流さなかったと思うんだけどな?
「まあ、だからね。
帰れる家があって、帰りたいミゲルには、無事に家に帰ってほしいかな」
なんかまた泣き出しちゃったミゲルくんの頭を優しく撫でる。
「ミゲルは本当に優しい子だね」
泣き止むまでそのまま撫で続けてた。
――――――
「さあ、今度こそこれからどうするか打ち合わせようっ!」
泣き止んだミゲルくんにあえて元気よく話しかける。
実はミゲルくんが泣き止むのを待っている間にちょっとした案が浮かんでいた。
結局のところ、ミゲルくんの方から仕事を辞めるっていいだしても仕方ないっていう分かりやすい理由があればいいのだ。
幸い?なことに今は絶対的権力者の僕と絶対服従が義務付けられたミゲルくんがタオルひとつのほぼ全裸で二人っきり。
誰も他に見ている人はいないし、事前にユニさんからの浮気の許可が出いることについても何人も証人がいる。
つまり、淫乱な僕が可愛いミゲルくんになにをしてもおかしくない状況は揃っている。
「ちょっと考えたんだけどさ……」
不思議そうな顔で僕を見上げるミゲルくんに、心のなかで『ごめん』と謝る。
「まず僕がミゲルくんのチンチンを触るでしょ?」
そう言って、いきなりミゲルくんのバスタオルの間から股間に手を差し入れる。
チンチンを触られたミゲルくんが悲鳴をあげる。
そうでなかったとしても少なくとも拒絶の声を上げるだろう。
その声は浴室の方にも響くに違いない。
だけど、僕の悲鳴ならともかくミゲルくんだけの悲鳴では……ミゲルくんが僕に襲われたかもしれないだけではユニさんもイヴァンさんも確認には来ないという謎の確信がある。
……もし来てしまったら、諦めてユニさんとイヴァンさんを巻き込もう。
そしてその後暴れるミゲルくん――出来ればここも派手に物音を立てて暴れてほしい――をなんとか落ち着けて、みんなを信じさせる作戦だって説明して土下座する。
許してくれるまで土下座する。
土下座は全てを解決してくれるはずだ。
なんとか許してもらったら、僕からのいたずらを理由に使用人を辞めさせてもらえばいい。
悲鳴と抵抗する物音は演技でもなんでもないガチなんだからみんなを信用させるのは容易なはずだ。
ユニさんと、特にイヴァンさんは騙せなかったとしても僕の使用人3人が証人になってくれるだろう。
これでミゲルくんは無事に解雇になることなく変態主人から逃れるために辞めることが出来る。
いっつぱーふぇくとぷらん。
そう思って、心のなかで謝りながらミゲルくんのチンチンを揉む。
ペニスだった。
そこにあったのはチンチンじゃなくて、僕の手を弾くほどにガチガチになったペニスだった。
なぜ?いつの間に?
い、いや、これは予想外だったけどかえって都合がいい。
よりによってこの状態で握られたのだ、さぞや大きな悲鳴を……。
ニギニギ……。
ニギニギ……。
「……ぁんっ♡」
ミゲルくんが鼻にかかった甘い声をちいさく上げた。
どういうことっ!?
「……え、えと……急にどうしたの?」
恥ずかしそうにこちらをチラチラと見るミゲルくん。
恥ずかしそうにはしているけど、嫌がっている様子は一切ない。
その表情を見て、ペニスを握っていた手をゆっくりと放す。
おちつけー、おちつけー、僕。
「……やめちゃうの?」
更に顔を赤くしたミゲルくんが、上目遣いで言う。
潤んでちょっとトロンとしたような目。
こんな感じの表情は、最近になってユニさんで見慣れだした。
これは駄目なやつだ。
もうヤル気スイッチ入っちゃってる。
なんでっ!?
――――――
謝り倒してなんとか忘れてもらった。
そんなになっちゃったら辛いのは分かるけど、ユニさんがいる身としてはなにかしてあげるわけにもいかない。
不用意に触ったちゃったのをひたすら詫びてなんとか許してもらった。
「ご主人さまがそこまで言うなら……」
そう言って許してくれたけど、すごい残念そうな顔だった。
わ、忘れよう。
ミゲルくんには本当に申し訳ないけれど、全て忘れよう。
「は、話を戻すけど。
そんな感じで僕にイタズラされたっていう言い訳でどうだろう?」
もう悲鳴とかの証拠を作れないから、僕たちの証言だけでゴリ押すしか無いけれどユニさんもイヴァンさんも多分察してくれるだろう。
「あ、あの……」
「ん?なに?もっといい案が思いついたならそっちでいこう」
もう今となっては穴だらけとしか思えない僕の計画より、優秀なミゲルくんが考えた計画のほうが間違いなくいいだろう。
そう思ってたんだけど、ミゲルくんは体を起こすと決意に満ちた目で僕を見て口を開く。
「ボク、やっぱり、ご主人さまにちゃんとお仕えしようと思う。
ううん、お仕えしたいですっ!」
「え?いいの?
……お家に帰れなくなっちゃうよ?」
「うん、それでもいい。
それにご主人さまと違って、ボクはお休みの時に帰ることは出来るし、全然大丈夫」
あ、そっか、使用人にもちゃんとお休みってあるんだ。
お休みのときだけとは言え、ミゲルくんはちゃんと家に帰れるのか……。
家族に会えるのか……。
いいなぁ……。
ついそんな事を考えてしまったら、ミゲルくんが両手で僕の手を包んだ。
温かい。
「だから、ボクはご主人さまが寂しくないようにお仕えするっ!」
……ぼ、僕より年下のくせに泣かせること言ってくれるじゃないか。
やばい、ちょっとマジで泣きそう。
「本当にいいの?」
問いかける僕に、ミゲルくんは僕の目をしっかりと見つめて黙って頷く。
今までよりずっと大人びた顔つきだった。
「えっと……それじゃ、これからよろしくお願いします」
そう言って、零れそうな涙を隠すために、僕は深々と頭を下げた。
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