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第1章 異世界で暮らそう
8話 女性
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あれからユニさんと僕を中心に円陣を組んで抜剣したまま警戒するイヴァンさんたちにユニさんがなんとか――詳細を濁しながら――状況説明して、色々察してくれたイヴァンさんがみんなを連れて部屋から出ていった。
抜き身の剣を引っ提げた大人たちが大勢なだれ込んできたときは死ぬかと思った。
「び、びっくりしたぁ……」
「す、すみませんでした。
あまりに驚いてしまったもので……」
そうだ。
ワチャワチャになって忘れるところだったけど、その話だった。
僕、女疑惑を持たれる。
どこからどうしてそうなった?
昔っから童顔だとは言われてた。
小学校の頃には幼稚園児に間違われ。
中学校の頃には小学生と間違われ。
最近になっても小が……ちゅ、中学生だと間違われ。
でも、女の子に間違われたことは一度もなかった。
自分でも童顔だと思ったことはあっても、女顔だと思ったことはない。
身長だって、平均身長よりは少し低いけどそれに近いくらいはある。
明らかに180センチ近いユニさんほどじゃないとは言え、パッと見で女の子と思われるような身長でもない。
年下に見られるときも、でっかい小が……中学生だねぇ、と言われるのが常だ。
「何がどうして僕が女性だと?
この世界だと僕は女性に見えるの?」
そういえば、まだこの世界に来てヨハンナさん……お婆さん以外の女性の顔を見たことがないことに気づいた。
騎士詰め所にいたのはだいたい男性だったし――女性がいてもはっきり言ってよくわからない感じだった――お屋敷にメイドさんらしき人はいたけど、みんな顔が見えないくらい深く頭を下げてた。
もしかしたら、この世界では男性も女性も若いうちはそんなに変わらない容姿をしているのかもしれない。
獣人がいるくらいだ。人間も地球と差があっても不思議じゃない。
「いえ、見る限りは男性に見えます。
……ですから、男性っぽい女性なのかなぁ……と思っていたのですが……」
そんなことまで深読みしてたのに違うらしい。
見た目男なのに女だと思った?
なんだそりゃ。
「えっと、仕草が女っぽかったとか?
あ、それとも、このネックレスがそんな感じに翻訳してるとか」
「い、いえ……そんなこともないのですが……」
これも違うらしい。
と言うか、なんかユニさんが頬を染めてもじもじしだした。
何この反応?
「え?それじゃ結局なんで女だと思ったの?」
「いや……その……ハルが男だというのならそれでかまわないので……」
なんかすごい微妙な言い回しだな。
「理由がわからないと僕が困るんだよ。
これからもちょくちょく女と思われることになるとか面倒くさいよ」
簡単に訂正できることなら別にかまわないけど、ユニさんの様子を見るとそういうわけでもなさそうだ。
なんかユニさんまだ信じ切っていない感じだし。
常に気をつけていないと誤解されるなら何が原因かちゃんと知っておきたい。
「お願いだから教えてよ。
大丈夫、僕は怒ったり傷ついたりしないから」
視線をさまよわせるユニさんの手を取って、僕と目を合わせさせる。
「……は、はい……あのですね……」
なんか僕と見つめ合ってさらに頬を赤くするユニさん。
さっきも思ったけど、なんかユニさんスキンシップに弱くね?
これからもベタベタ触っていこう。
話してくれる気にはなったみたいだけど、このまま手は握ってよう。
ユニさんの手は柔らかくて触ってて気持ちいいし。
「あの……その……匂いが……」
臭い?
「うわっ、汗臭かったよねっ!?ご、ごめんっ!!」
ついさっき握っていようと思った手を慌てて離して、椅子ごとユニさんから離れる。
もう自分では慣れてきちゃって気づかなくなってきちゃっていたけど、今の僕は相当汗臭い。
なんせ風呂にも入らず着替えもしてない1週間もの……。
恥ずかしくて死ねる。
「い、いえっ!そうではなくて……ですね……」
死にたくなっている僕をユニさんが否定してくる。
なんかさっきより赤く……というか、湯だったみたいに真っ赤になって、恥ずかしそうに俯いて指遊びをしている。
「あ、あの……ハルから、女性が人によって……そ、そういう時期に漂わせているいい匂いがしているもので……」
「へ?そういう時期って?」
「あの……その…………子供を作る時期といいますか……」
あー、獣人だからなのかな?そういう発情期みたいのあるのか。
それで、僕から女性の発情期の臭いがしていると。
そりゃ、勘違いするし、言いにくいわ。
はっはっはっはっはっはっ!
「なんでっ!?」
「いえ、その……なんででしょう……。
あの…………本当に女性じゃないんですよね?」
まだ僕が男だということに半信半疑っぽいユニさん。
「僕は正真正銘男だって。
嘘じゃないってのは分かるんだよね?」
どういう仕組みかは謎だけど、僕の嘘は魔法でバレバレらしい。
それなのになんで疑ってくるんだろう?
「はい。
でも、あの……イヴァンが言うには稀にですが自分が女性だということの自覚がない人もいるらしいので……」
性の同一性がどうとかっていう問題は日本でも問題になっていた。
この世界にもそういう人がいるのかもしれない。
ちょっとこのままだと話しを続けるのも面倒くさいな。
「ユニさん、ちょっとこっちに」
立ち上がると、はてなを顔に浮かべたユニさんの手を取って壁際に寄っていく。
ユニさんと僕で壁の方を向いて部屋からの視線を遮った空間を作る。
まあ、二人しかいないんだしこんな事する必要ないんだけど、気分の問題だ。
「ほら」
ベルトを外し、パンツの中を見せる。
「ね?男でしょ?」
僕が何をしようとしているのか不思議そうな顔をしていたユニさんが、一瞬驚いた後、まじまじと僕のパンツの中……チンチンを見ている。
すごい見てる……チンチン以外目に入らない勢いで見つめ続けてる。
ユニさんほどの美形にここまで見られると、なんていうか……うん、まあ、何だ……チンチンがペニスになる前にもうしまおう。
「どう?納とくぅあっ!?」
思わず驚きの声が出た。
とっさにユニさんを殴り飛ばしそうになるけど、流石にそれはまずいと思って拳を握りしめたところで踏みとどまる。
ユニさんがパンツの中に手を突っ込んできて、僕のチンチンを弄り回している。
「……本物だ……」
声に出しているという自覚はないのかもしれない、思わず漏れたような声。
どうやら、触って本物か確認したくなったらしい。
殴らないまでも引き剥がして止めればよかったのに、我慢してしまったことで止めどきを見失う。
少なくともユニさん的には確認しているつもりなだけで、変な意味はなさそうだし……。
……。
……。
いや、なんか揉んだり頭を撫で回したり皮を剥いたりしようとしているけど本当に変な意味は無いのか?
ユニさんの手の感触に僕の意志を無視してチンチンに血が集まってくる。
それに気づいたユニさんが一瞬ビックリして……ようやく手を引き抜くかな?とおもったら更に優しい感じで弄りだした。
「あの……ユニさん、そろそろ勘弁してください……」
そろそろ色々と限界です。
「はっ!?す、すすすみませんっ!!」
声をかけられ我に返ったユニさんは慌てて手を引き抜くと、凄い勢いで何度も頭を下げだした。
僕たちがくっつくくらいそばにいるってことも頭から抜けちゃってるようで、頭が当たりそうで危ない。
特に角。
「あの、これで男だって納得してくれた?」
結論だけ聞いて過程については触れない。
なんかユニさんの手が何かを握るようにワキワキしてるけど、触れない。
なんかユニさんが手の臭いをかごうとしてるけど……。
「それは流石にやめて」
手をつかんで止める。
流石にいくらなんでも恥ずかしすぎる。
「はっ!?す、すみませんっ!無意識に……」
やめて、絶対にやめて。
「と、とりあえずテーブルに戻ろ?」
まだぼーっとしているユニさんの手を引っ張ってテーブルに戻る。
恥死する前に忘れよう。
――――――
「とりあえず、僕が男だってことは納得してくれたかな?」
心ここにあらずといったユニさんを椅子に座らせて声をかける。
とりあえず汚いから手を洗ってきなって言ったけど、なんか拒否された。
「えっ?……あ、はい、納得しました。『確かに』ハルは男性です……」
『確かに』をやたらと強調してくる意味を深く考えるのはやめよう。
下手にさっきのことを思い出すとただでさえ座りづらいのが更に座りづらくなる。
考えてみればもう一週間近くもして……考えるのはやめよう。
「で、僕が男だとわかった後でもまだ変な臭いする?」
「変な臭いだなんてっ!とってもいい匂いですっ!」
お、おおう、びっくりした……。
「え、えっと、どっちでもいいからその臭いまだする?」
僕の問いかけにユニさんは臭いをかぐように少し鼻を動かす。
自分から言ったことだけど、臭いを嗅がれてると思うと恥ずかしいな。
「はい、たしかに……あ、いえ……」
一度肯定しかけたユニさんが、不意に立ち上がると僕に顔を寄せ正面から肩越しに後頭部……うなじのあたり?の臭いをかぎだした。
美形の顔が頬もふれんばかりの近さで――というかたまに触れてる――クンクンと僕の臭いを嗅いでいる。
なにこれ?新手の嫌がらせ?
ていうか、ユニさんさっき『たしかに』って肯定しかけてたよね?
こんなに近くで嗅ぐ必要ないよね?
「……(くんくん)」
まだ嗅いでる。
いい加減臭いするか分かるよねっ!?
「…………(くんくんくんくん)」
流石に恥ずかしくてもう我慢できない。
「あの……どう?わかった?」
「……ふぇ?」
耳の横から変な声が聞こえた。
ユニさんから出ているとは思えないほど気の抜けた酔っ払ったような声だった。
「えっと、ユニさーん、だいじょーぶー?」
「……はっ!?は、はい、大丈夫です。申し訳ありません」
もう一度声をかけるとようやく正気に戻ったユニさんが顔を離してくれた。
僕の体から何が出ているんだ……。
臭いが気になるレベルでなく怖くなってくる。
「それで、どうだった?」
なんか聞くまでもない気がするけど、一応結果を知りたい。
「え?何がですか?」
「ユニさんっ!?」
「あっ、そ、そうでしたっ!すみませんっ!」
ここしばらくユニさんは最初感じた少し年上の超美形お兄さんの印象が木端微塵になるポンコツさだな。
「えっと、結論から言いますと……しますね。いいにお……女性の匂い。
あの……本当に女性では……」
「それはさっき確認したよねっ!?もう一度触るっ!?」
いい加減しつこい。
そう思って語気が荒くなってしまったが……。
「えっと……それじゃ、後ほど……」
なんかユニさんがもじもじしだした。
どれだけ僕のチンチンに興味津々なんだろうこの人。
迂闊なこと言ってしまったかも知れない。
後から本当になにか言ってきたら忘れたことにしよう。
「ごほんっ。それはそれとして、僕が男なのは間違いないよ。
男でもそういう臭いがしたりするものなの?」
真面目な話をしよう。真面目な。
「ええと……そうですね、ごくごく稀にですが、性徴期直前にそういう事が起こるという話は……」
そこまで言ったユニさんがハッとした顔でこちらを見る。
「……一応言っておくけどちゃんと生えてるからね?ボーボーだからね?」
そこまで言って、嘘はばれることと、そもそもさっき見られてることに気づく。
「…………ごめんなさい。嘘つきました。それなりです……。
でも、性徴期を迎えてるのは本当だよ?」
「性徴期を迎えても、その直後だったりすると起こったりするそうなので、もしかしたらその可能性も……」
「いやいやいや、童顔なのは自覚してるけどもうその頃からだいぶ経ってるからそんなことはないと思うよ?」
童顔なだけで別段そういうのが人より遅いとかはなかったからなあ。
なんかそれを聞いたユニさんが目をパチクリしている。
まあ年下に見られることは慣れているからこの反応自体は別に気にならない。
「え?ハルそんな年なんですか?」
「うん、見えないってよく言われるけどね」
この質問は予想したものだったので、いつも通り苦笑混じりに答える。
「ええええええええぇぇぇぇええぇぇぇぇっ!!??」
僕が男だって言ったときと同じくらい驚くユニさん。
いくらなんでもそこまで驚かなくても……。
またイヴァンさんたちが来たりしないといいけど。
そんな事を気にしてドアの方をチラチラと見るけど、幸いなことに開く様子はない。
「そ、そんな……」
ひとしきり驚き終わったユニさんが呆然とした様子で声を出す。
「ま、まさか、年上だったなんて……」
「ん?なんだって?」
年上?なにが?誰より?
「えっと……ハル……さん。
私の方が年下です……」
ユニさんの言葉が脳に染み込むまで時間がかかる。
「……………………ええええええぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇっ!!??」
今度こそイヴァンさんたちがなだれ込んできた。
抜き身の剣を引っ提げた大人たちが大勢なだれ込んできたときは死ぬかと思った。
「び、びっくりしたぁ……」
「す、すみませんでした。
あまりに驚いてしまったもので……」
そうだ。
ワチャワチャになって忘れるところだったけど、その話だった。
僕、女疑惑を持たれる。
どこからどうしてそうなった?
昔っから童顔だとは言われてた。
小学校の頃には幼稚園児に間違われ。
中学校の頃には小学生と間違われ。
最近になっても小が……ちゅ、中学生だと間違われ。
でも、女の子に間違われたことは一度もなかった。
自分でも童顔だと思ったことはあっても、女顔だと思ったことはない。
身長だって、平均身長よりは少し低いけどそれに近いくらいはある。
明らかに180センチ近いユニさんほどじゃないとは言え、パッと見で女の子と思われるような身長でもない。
年下に見られるときも、でっかい小が……中学生だねぇ、と言われるのが常だ。
「何がどうして僕が女性だと?
この世界だと僕は女性に見えるの?」
そういえば、まだこの世界に来てヨハンナさん……お婆さん以外の女性の顔を見たことがないことに気づいた。
騎士詰め所にいたのはだいたい男性だったし――女性がいてもはっきり言ってよくわからない感じだった――お屋敷にメイドさんらしき人はいたけど、みんな顔が見えないくらい深く頭を下げてた。
もしかしたら、この世界では男性も女性も若いうちはそんなに変わらない容姿をしているのかもしれない。
獣人がいるくらいだ。人間も地球と差があっても不思議じゃない。
「いえ、見る限りは男性に見えます。
……ですから、男性っぽい女性なのかなぁ……と思っていたのですが……」
そんなことまで深読みしてたのに違うらしい。
見た目男なのに女だと思った?
なんだそりゃ。
「えっと、仕草が女っぽかったとか?
あ、それとも、このネックレスがそんな感じに翻訳してるとか」
「い、いえ……そんなこともないのですが……」
これも違うらしい。
と言うか、なんかユニさんが頬を染めてもじもじしだした。
何この反応?
「え?それじゃ結局なんで女だと思ったの?」
「いや……その……ハルが男だというのならそれでかまわないので……」
なんかすごい微妙な言い回しだな。
「理由がわからないと僕が困るんだよ。
これからもちょくちょく女と思われることになるとか面倒くさいよ」
簡単に訂正できることなら別にかまわないけど、ユニさんの様子を見るとそういうわけでもなさそうだ。
なんかユニさんまだ信じ切っていない感じだし。
常に気をつけていないと誤解されるなら何が原因かちゃんと知っておきたい。
「お願いだから教えてよ。
大丈夫、僕は怒ったり傷ついたりしないから」
視線をさまよわせるユニさんの手を取って、僕と目を合わせさせる。
「……は、はい……あのですね……」
なんか僕と見つめ合ってさらに頬を赤くするユニさん。
さっきも思ったけど、なんかユニさんスキンシップに弱くね?
これからもベタベタ触っていこう。
話してくれる気にはなったみたいだけど、このまま手は握ってよう。
ユニさんの手は柔らかくて触ってて気持ちいいし。
「あの……その……匂いが……」
臭い?
「うわっ、汗臭かったよねっ!?ご、ごめんっ!!」
ついさっき握っていようと思った手を慌てて離して、椅子ごとユニさんから離れる。
もう自分では慣れてきちゃって気づかなくなってきちゃっていたけど、今の僕は相当汗臭い。
なんせ風呂にも入らず着替えもしてない1週間もの……。
恥ずかしくて死ねる。
「い、いえっ!そうではなくて……ですね……」
死にたくなっている僕をユニさんが否定してくる。
なんかさっきより赤く……というか、湯だったみたいに真っ赤になって、恥ずかしそうに俯いて指遊びをしている。
「あ、あの……ハルから、女性が人によって……そ、そういう時期に漂わせているいい匂いがしているもので……」
「へ?そういう時期って?」
「あの……その…………子供を作る時期といいますか……」
あー、獣人だからなのかな?そういう発情期みたいのあるのか。
それで、僕から女性の発情期の臭いがしていると。
そりゃ、勘違いするし、言いにくいわ。
はっはっはっはっはっはっ!
「なんでっ!?」
「いえ、その……なんででしょう……。
あの…………本当に女性じゃないんですよね?」
まだ僕が男だということに半信半疑っぽいユニさん。
「僕は正真正銘男だって。
嘘じゃないってのは分かるんだよね?」
どういう仕組みかは謎だけど、僕の嘘は魔法でバレバレらしい。
それなのになんで疑ってくるんだろう?
「はい。
でも、あの……イヴァンが言うには稀にですが自分が女性だということの自覚がない人もいるらしいので……」
性の同一性がどうとかっていう問題は日本でも問題になっていた。
この世界にもそういう人がいるのかもしれない。
ちょっとこのままだと話しを続けるのも面倒くさいな。
「ユニさん、ちょっとこっちに」
立ち上がると、はてなを顔に浮かべたユニさんの手を取って壁際に寄っていく。
ユニさんと僕で壁の方を向いて部屋からの視線を遮った空間を作る。
まあ、二人しかいないんだしこんな事する必要ないんだけど、気分の問題だ。
「ほら」
ベルトを外し、パンツの中を見せる。
「ね?男でしょ?」
僕が何をしようとしているのか不思議そうな顔をしていたユニさんが、一瞬驚いた後、まじまじと僕のパンツの中……チンチンを見ている。
すごい見てる……チンチン以外目に入らない勢いで見つめ続けてる。
ユニさんほどの美形にここまで見られると、なんていうか……うん、まあ、何だ……チンチンがペニスになる前にもうしまおう。
「どう?納とくぅあっ!?」
思わず驚きの声が出た。
とっさにユニさんを殴り飛ばしそうになるけど、流石にそれはまずいと思って拳を握りしめたところで踏みとどまる。
ユニさんがパンツの中に手を突っ込んできて、僕のチンチンを弄り回している。
「……本物だ……」
声に出しているという自覚はないのかもしれない、思わず漏れたような声。
どうやら、触って本物か確認したくなったらしい。
殴らないまでも引き剥がして止めればよかったのに、我慢してしまったことで止めどきを見失う。
少なくともユニさん的には確認しているつもりなだけで、変な意味はなさそうだし……。
……。
……。
いや、なんか揉んだり頭を撫で回したり皮を剥いたりしようとしているけど本当に変な意味は無いのか?
ユニさんの手の感触に僕の意志を無視してチンチンに血が集まってくる。
それに気づいたユニさんが一瞬ビックリして……ようやく手を引き抜くかな?とおもったら更に優しい感じで弄りだした。
「あの……ユニさん、そろそろ勘弁してください……」
そろそろ色々と限界です。
「はっ!?す、すすすみませんっ!!」
声をかけられ我に返ったユニさんは慌てて手を引き抜くと、凄い勢いで何度も頭を下げだした。
僕たちがくっつくくらいそばにいるってことも頭から抜けちゃってるようで、頭が当たりそうで危ない。
特に角。
「あの、これで男だって納得してくれた?」
結論だけ聞いて過程については触れない。
なんかユニさんの手が何かを握るようにワキワキしてるけど、触れない。
なんかユニさんが手の臭いをかごうとしてるけど……。
「それは流石にやめて」
手をつかんで止める。
流石にいくらなんでも恥ずかしすぎる。
「はっ!?す、すみませんっ!無意識に……」
やめて、絶対にやめて。
「と、とりあえずテーブルに戻ろ?」
まだぼーっとしているユニさんの手を引っ張ってテーブルに戻る。
恥死する前に忘れよう。
――――――
「とりあえず、僕が男だってことは納得してくれたかな?」
心ここにあらずといったユニさんを椅子に座らせて声をかける。
とりあえず汚いから手を洗ってきなって言ったけど、なんか拒否された。
「えっ?……あ、はい、納得しました。『確かに』ハルは男性です……」
『確かに』をやたらと強調してくる意味を深く考えるのはやめよう。
下手にさっきのことを思い出すとただでさえ座りづらいのが更に座りづらくなる。
考えてみればもう一週間近くもして……考えるのはやめよう。
「で、僕が男だとわかった後でもまだ変な臭いする?」
「変な臭いだなんてっ!とってもいい匂いですっ!」
お、おおう、びっくりした……。
「え、えっと、どっちでもいいからその臭いまだする?」
僕の問いかけにユニさんは臭いをかぐように少し鼻を動かす。
自分から言ったことだけど、臭いを嗅がれてると思うと恥ずかしいな。
「はい、たしかに……あ、いえ……」
一度肯定しかけたユニさんが、不意に立ち上がると僕に顔を寄せ正面から肩越しに後頭部……うなじのあたり?の臭いをかぎだした。
美形の顔が頬もふれんばかりの近さで――というかたまに触れてる――クンクンと僕の臭いを嗅いでいる。
なにこれ?新手の嫌がらせ?
ていうか、ユニさんさっき『たしかに』って肯定しかけてたよね?
こんなに近くで嗅ぐ必要ないよね?
「……(くんくん)」
まだ嗅いでる。
いい加減臭いするか分かるよねっ!?
「…………(くんくんくんくん)」
流石に恥ずかしくてもう我慢できない。
「あの……どう?わかった?」
「……ふぇ?」
耳の横から変な声が聞こえた。
ユニさんから出ているとは思えないほど気の抜けた酔っ払ったような声だった。
「えっと、ユニさーん、だいじょーぶー?」
「……はっ!?は、はい、大丈夫です。申し訳ありません」
もう一度声をかけるとようやく正気に戻ったユニさんが顔を離してくれた。
僕の体から何が出ているんだ……。
臭いが気になるレベルでなく怖くなってくる。
「それで、どうだった?」
なんか聞くまでもない気がするけど、一応結果を知りたい。
「え?何がですか?」
「ユニさんっ!?」
「あっ、そ、そうでしたっ!すみませんっ!」
ここしばらくユニさんは最初感じた少し年上の超美形お兄さんの印象が木端微塵になるポンコツさだな。
「えっと、結論から言いますと……しますね。いいにお……女性の匂い。
あの……本当に女性では……」
「それはさっき確認したよねっ!?もう一度触るっ!?」
いい加減しつこい。
そう思って語気が荒くなってしまったが……。
「えっと……それじゃ、後ほど……」
なんかユニさんがもじもじしだした。
どれだけ僕のチンチンに興味津々なんだろうこの人。
迂闊なこと言ってしまったかも知れない。
後から本当になにか言ってきたら忘れたことにしよう。
「ごほんっ。それはそれとして、僕が男なのは間違いないよ。
男でもそういう臭いがしたりするものなの?」
真面目な話をしよう。真面目な。
「ええと……そうですね、ごくごく稀にですが、性徴期直前にそういう事が起こるという話は……」
そこまで言ったユニさんがハッとした顔でこちらを見る。
「……一応言っておくけどちゃんと生えてるからね?ボーボーだからね?」
そこまで言って、嘘はばれることと、そもそもさっき見られてることに気づく。
「…………ごめんなさい。嘘つきました。それなりです……。
でも、性徴期を迎えてるのは本当だよ?」
「性徴期を迎えても、その直後だったりすると起こったりするそうなので、もしかしたらその可能性も……」
「いやいやいや、童顔なのは自覚してるけどもうその頃からだいぶ経ってるからそんなことはないと思うよ?」
童顔なだけで別段そういうのが人より遅いとかはなかったからなあ。
なんかそれを聞いたユニさんが目をパチクリしている。
まあ年下に見られることは慣れているからこの反応自体は別に気にならない。
「え?ハルそんな年なんですか?」
「うん、見えないってよく言われるけどね」
この質問は予想したものだったので、いつも通り苦笑混じりに答える。
「ええええええええぇぇぇぇええぇぇぇぇっ!!??」
僕が男だって言ったときと同じくらい驚くユニさん。
いくらなんでもそこまで驚かなくても……。
またイヴァンさんたちが来たりしないといいけど。
そんな事を気にしてドアの方をチラチラと見るけど、幸いなことに開く様子はない。
「そ、そんな……」
ひとしきり驚き終わったユニさんが呆然とした様子で声を出す。
「ま、まさか、年上だったなんて……」
「ん?なんだって?」
年上?なにが?誰より?
「えっと……ハル……さん。
私の方が年下です……」
ユニさんの言葉が脳に染み込むまで時間がかかる。
「……………………ええええええぇぇぇぇえええぇぇぇぇぇぇぇっ!!??」
今度こそイヴァンさんたちがなだれ込んできた。
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