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「企業舎弟の遥かな野望」ー44(終戦)
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第四十四話ー「終戦」
小野田は、裁判の結果、「懲役1年」の実刑判決を受け上告することなく服役した。
「警察庁」副長官となり、霞ヶ関に戻った松平公平により、歴代の「警察庁」トップ3により綿々と受け継がれてきた「埋蔵金」は解体され、秘密裏に國庫に戻された。長官に就任した元、「警視総監」の秋葉は年齢的なものからして、退官まではそう遠くないことから考えると、実質この先の「警察庁」を取り仕切るのは松平であろうというのが大方の見立てであり、今回の「キャリア組の蜂起」に参加した「松平シンパ」にとっては、勝戦であり日本の「警察組織」の威信を守ったという自負に酔っていた。
松平は橙子を「副長官室」に呼んでいた。
――「副長官」就任おめでとうございます
――ありがとう。けど、これからやらねばならない仕事は山積みだよ
――「松平シンパ」も沢山います。頑張ってください
松平は、橙子との関係を思い起こしつつ、五年の「幽閉」の辛苦の歳月から表舞台に戻り、自らの「志」のために働ける喜びを実感していた。
――どうだ、また私の下で働いてくれないか? もう、誰も覚えちゃいまい
橙子は薄い笑みを浮かべ、ゆっくり頭を左右に振った。
――いえ、私は現場で好き勝手にやらせてもらうのが性に合ってるようです。陰日向で、副長官のご活躍を見守らせて頂きます。
――もう……戻れないのか?あの頃に
橙子は、何も言わず、ただ頷くだけだった。
――――――――――――
――IT業界の寵児も様ないわね……。どう?獄中生活は
橙子は、小野田が収監されている「長野刑務所」を訪れていた。
――ああ、毎日規則正しく生きてるよ。ちっと、寒いがな。
――ふふ、厚手の毛布差し入れしとくわ。他に欲しいものない?
――ありがとう。できるならば、アンタを差し入れしてもらえたら、嬉しいけど
――例え、出来ても、ヤらせないわよ?
橙子と健斗は透明の仕切りを挟んで声を出して笑った。
――出たら、どうするの? 会社に戻れるの?
――例え戻れても、もういいわ。次のことで今、頭がいっぱいでね。ウキウキしてるよ
――貴方はいつだって闘ってないと駄目な人だし……、そういう……
その先を橙子は飲み込んで、じゃ、またね――、と言って面会室を出た。
長野の冬の空は鉛色で、あの青森で見た空と同じだった。
「マルボロ」に火を点け、一つ吸い込んだ紫煙をその空に向かって吐くと、少しばかり、鉛色に白い色が着いた。
橙子は一人、東京に戻って行った。
「警察庁 組織犯罪対策部 特命捜査課」鷺森橙子として――。
【企業舎弟の遥かな野望】(season.1)ー 完
千葉 七星
(あとがき)に続く。
小野田は、裁判の結果、「懲役1年」の実刑判決を受け上告することなく服役した。
「警察庁」副長官となり、霞ヶ関に戻った松平公平により、歴代の「警察庁」トップ3により綿々と受け継がれてきた「埋蔵金」は解体され、秘密裏に國庫に戻された。長官に就任した元、「警視総監」の秋葉は年齢的なものからして、退官まではそう遠くないことから考えると、実質この先の「警察庁」を取り仕切るのは松平であろうというのが大方の見立てであり、今回の「キャリア組の蜂起」に参加した「松平シンパ」にとっては、勝戦であり日本の「警察組織」の威信を守ったという自負に酔っていた。
松平は橙子を「副長官室」に呼んでいた。
――「副長官」就任おめでとうございます
――ありがとう。けど、これからやらねばならない仕事は山積みだよ
――「松平シンパ」も沢山います。頑張ってください
松平は、橙子との関係を思い起こしつつ、五年の「幽閉」の辛苦の歳月から表舞台に戻り、自らの「志」のために働ける喜びを実感していた。
――どうだ、また私の下で働いてくれないか? もう、誰も覚えちゃいまい
橙子は薄い笑みを浮かべ、ゆっくり頭を左右に振った。
――いえ、私は現場で好き勝手にやらせてもらうのが性に合ってるようです。陰日向で、副長官のご活躍を見守らせて頂きます。
――もう……戻れないのか?あの頃に
橙子は、何も言わず、ただ頷くだけだった。
――――――――――――
――IT業界の寵児も様ないわね……。どう?獄中生活は
橙子は、小野田が収監されている「長野刑務所」を訪れていた。
――ああ、毎日規則正しく生きてるよ。ちっと、寒いがな。
――ふふ、厚手の毛布差し入れしとくわ。他に欲しいものない?
――ありがとう。できるならば、アンタを差し入れしてもらえたら、嬉しいけど
――例え、出来ても、ヤらせないわよ?
橙子と健斗は透明の仕切りを挟んで声を出して笑った。
――出たら、どうするの? 会社に戻れるの?
――例え戻れても、もういいわ。次のことで今、頭がいっぱいでね。ウキウキしてるよ
――貴方はいつだって闘ってないと駄目な人だし……、そういう……
その先を橙子は飲み込んで、じゃ、またね――、と言って面会室を出た。
長野の冬の空は鉛色で、あの青森で見た空と同じだった。
「マルボロ」に火を点け、一つ吸い込んだ紫煙をその空に向かって吐くと、少しばかり、鉛色に白い色が着いた。
橙子は一人、東京に戻って行った。
「警察庁 組織犯罪対策部 特命捜査課」鷺森橙子として――。
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(あとがき)に続く。
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