エイリアンズ

朋藤チルヲ

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 わたしは六花の白い腕を掴んだ。
 六花はうつろな目を向ける。

 身勝手な従姉妹が、ずっと嫌いだった。それにも、六花は気づいている。
 六花はずっと一人ぽっちだったのかもしれない。

「六花の赤ちゃんなら、美形で間違いないね」

 六花が目を見開いた。

「一人で何とかしようとするから、まとまらないんだよ。なんですぐわたしに連絡してこないの」
「杏子」
「いつもは迷惑なくらい強引なくせに。肝心な時に遠慮するとか、バカじゃないの」

 その言葉に、六花は気の抜けた息を漏らす。

「伯母さんたちの協力は不可欠だからね。乗りかかった船だから、わたしも一緒に頭下げるよ。ママ代わりだって、時々ならやるって」

 自分で自分のセリフにびっくりする。一方で、そうか、と納得もしていた。
 怖がりつつも、六花は宿った命を葬り去る選択肢を微塵も考えていなかった。無茶だし無鉄砲だけど、わたしはそれをすごいと思っている。

「理解できない人はいると思うよ。それならそれでいい。エイリアンでいいじゃない」

 それでもきっと、お腹の子は、無条件に六花を愛してくれる。
 伯母さんも、伯父さんだって。顔を真っ赤にして怒鳴りつけたあとで、涙を流しながら、六花を強く抱きしめてくれるに決まっている。

「あ、そうだ。言い忘れてた。おめでとう、六花。ママだね」

 六花の瞳から、ぼろぼろと大粒の涙がこぼれた。

 帰ろう。
 わたしだって、いや、この世界に生きる誰もが、時に理解不能で手を焼かせる、誰かの愛おしいエイリアンなのだから。



(fin)
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