妹、異世界にて最強

海鷂魚

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十七話

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 ヴィルランドールさんの運転によって、馬車はリダへ向かっていた。
 一時間もあれば到着するという。
 すでに三十分は馬車に揺られていた。
 その間に、これからどうするか考えなくてはならなかったが、シバリアさんが、
「もう一人戦える方がいれば安心ですね」
 と、僕と同意見だったので、それで大方決まった。
 灯からは特に意見などはなかった。
 まあそれでいい。言い方が悪くてなんだが、灯は戦ってくれればそれでいい。
 突拍子も無いことを言って場をかき回すとか、そういうことをされるよりは、それでいい。
 リダで仲間を見つけてからのことは、その時加わった仲間と相談しつつ指針を決める。それも決定した。
「馬車って結構揺れないんだねー」
 話が終わると、灯が外を見ながら言った。
「このくらい高級な馬車になると、揺れないよう仕掛けが施されていますよ。安い奴はもっと揺れます」
 シバリアさんが灯に人差し指を立てて説明する。
「簡易的な魔法です。身近なものはそう言った魔法で便利な世の中になったりしていますね」
「すげー! 異世界ってすごいね!」
 僕が経験したことで言えばトイレだとか、そういうものか。
 あれも、言わずもがな魔法だったのだ。
 シバリアさんによると、世界のあちこちは魔法でできているらしい。
 自然的な魔法、人工的な魔法、そう言った魔法がシュバルハを発展させて行ったのだと。
 魔法無経験者としては驚くべき話ばかりで、改めて異世界に圧倒される。
 街の風景も、日本とは違う。かといって洋風な建物ばかりかといえばそれも違う。宮殿は石でできていたが、町の建物は木材が多い。
 やはり同じ人間が作っているので、元の世界の建物と類似する建物が多いが。
 人間を見ても、僕と同じ人間には見えない。
 異様なオーラがあるというか。
 人っぽくない。
 他の星の人間みたいだといえば一番的を得ている。
 たとえば火星に地球人と全く同じの容姿の人間がいて、地球人と火星人を並べたところでどんな違いがあるのか、具体的にはわからないけれど——何か違う。
 オーラとか雰囲気とか、不可視なものが違うのは、もうそれは違うのではないのかもしれないが。
 しかしそれをいったら終わりである。
 まあ、終わりでいいか。
 僕の脳内では、元の世界の住人と、異世界人の違いはわからない。
 余計なことを考えている暇があれば、緻密にこれからの計画を立てなければならないのではないだろうかとも思うのだった。
 ただ、この世界が未知すぎて僕にはそんな計画を立てられそうにないが。
 何をどうすればいいのかわからない。
 リダという町で仲間をまた集めるまでは決まっているので、それを粛々と実行するしかないのだろう。
 窓の外を見ながら考えていると、睡魔に襲われ、瞼が重くなり、虚としてくる。
「少し寝る。着いたら起こして」
「はーい! おやすみ!」
「ごゆっくり」
 二人に言われて、僕は瞼を閉じた。
「シバリアさんって、好きな人いるの?」
「えっ!?」
 唐突な修学旅行の晩的恋バナが始まり——少し、眠れそうになかった。
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