ANGEL -エンジェル-

蜜星

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S9.友達になってよ。

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その日のお昼休みに、俺は梓に案内されて図書室へと来ていた。
図書室になんて足を向けた事はなかったが、
入って見ると結構な広さで眼を見張るものだった。


「じゃ、返却してくるね。」


俺を置いて平然とカウンターへ向かおうとする梓の肩をがっちり捕まえる。


「いやいや、じゃ、じゃねーし。二階堂は?!」

「ついでじゃん。ちょっと待ってよ。」

「このマイペース野郎…」


ここに二階堂がいるのか…?
どの教室にも居なかったのはここに居たから…?

それにしてもどのクラスに聞いても
誰にも覚えられてないって存在感無さすぎだろ…

そんなことを考えながら、
梓と一緒にカウンターへ向かうと、
本を渡しながら図書委員に話しかける。


「返却です。今日真は来てる?」

「あー水谷君?今日は当番じゃないけど、さっき借りる本選んでたから、まだ居るかも。」


ありがとうと淡々と返事を返すが、
実はこいつが女子と話して居るところを見るのは珍しいわけで、
女嫌いではないのか、とまじまじ見ていた。


「何?」

「いや、別に。水谷って誰?」

「…読書仲間。」

「俺以外にも友達が居たんだな。」


普段本ばかり読んでるような奴だから
話しかけるのは俺くらいだったし、
てっきり友達が居ないものだと思っていた。

他にも仲のいいやつが居るとは…


「居るよ。忍みたいに友達少なくないから。」

「俺はいっぱい居るって!」

「友達じゃなくて取り巻きでしょ?」


そんな事を話しながらも歩き出す梓の後を追う。
スタスタ歩き出したが、広くてまるで迷路のようで…
おそらく1人では混乱してしまうだろう。

さっきの“水谷真”を探して居るのか…?


「なぁ、二階堂はどうなったんだよ…」

「あ、真!」


痺れを切らした時、丁度“水谷真”を見つけたようで
俺の言葉を遮るように梓が声をかけた。

そいつは身長が高く、眼鏡をかけていて
癖っ毛を後ろでまとめている、
いかにも大人しそうな奴でーー

そう、その姿を見て俺は思わず、
図書室にいる事を忘れ叫んでしまった。





「二階堂?!」





「ちょっと忍、うるさいよ。」


驚く俺をよそに、梓は冷静に注意するが、
正直俺の中は大混乱でそれどころではなかった。

一方の二階堂は目を丸くして俺の方を見ていた。


「おい、どうなってるんだよ?!全く話が…」

「真、このうるさいのは上条忍。」

「聞けよ!!!」

「突然なんだけど、こいつの友達になってよ。」

「………は?」








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