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第157話

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【王国歴1000年夏の月13日】   

 4人パーティーで犯罪者を襲撃して、やることが無くなると魔物を狩って過ごした。

 朝なのにファルナは忙しそうに文官と話をする。

「また寄付がありましたわ。これで兵士の武装を強化出来ますわね」
「すぐに予算を補正するよ」

 最近寄付が大量に集まっている。
 犯罪者を襲撃し、街の事件は減った。更にファングとデーブがタッグを組んでファルナが追い詰められている事を皆知っている。

 と言うか俺が噂を流した。
 この事でシンプルな構図が出来上がった。

『皆を助けようとするファルナ陣営VS皆を食い物にするデーブとファング』

 2人は悪事を重ねすぎたのだ。
 悪を働くことで最初は得をするが、徐々に皆が対抗するための勢力であるファルナに協力するようになったのだ。

 ファングやデーブの勝利=暗黒時代の再来だ。
 喜んで寄付をする者が増えたのだ。
 犯罪者に奪われていた富がファルナに流れるようになったと言い変える事も出来る。

 俺達が食事を終えると、防壁の外に移動した。
 オークキングがこの地に向かってきているのだ。

 デーブの教会騎士団とファルナ軍が協力する事に決まっていたので、両陣営は防壁の外に出て陣を整えた。
 戦闘に参加しない民も禁止区域を除いて防壁の上で見学して良い事にしている。

 デーブへの牽制の意味もあるのだ。
 民の見学によってデーブが悪い事をしにくくする効果を狙っている。
 どこまで効果があるかは分からないけどな。


 草原をオークキングが歩いてくる。
 先頭を歩くオークキングの少し後ろには9体のボスタイプが付き従うようについて来ており、その後ろには大量の雑魚と中ボスがついてくる。

 オークキングはファルナの方を向いて雄たけびを上げた。

 グオオオオオオオオオオオ!

 雑魚と中ボスがオークキングを追い越すように走って突撃してくる。
 そしてうろからゆっくりとオークキングと9体のボスが歩いて迫る。
 草原にまばらに見える土を踏みしめるたびに土煙が上がり、地面が揺れた。
 
 ボスタイプとオークキングは3メートルほどの巨体で、まるで戦車のような迫力があった。
 ゆっくりじわじわ迫って来る。

 ファルナ軍とオーク軍がぶつかりそうになるが、デーブは動かない。

「ファルナ!デーブは戦力を温存する気だ!」
「ハヤトが事前に言った通り!予想通りですわよ!」

 民の見学は効果無しか。
 デーブは、ファルナ陣営の戦力を削ぎ落したいし、教会騎士団の人は駒として減らしたくないのだ。

「私が行くのです!」

 シルビアが走って前に出た。

「ソウルスキル・ファイナルスラッシュ!」

 シルビアは野球のフルスイングのように剣を横なぎに思いっきり振った。
 三日月型の大きな斬撃が発生し、1撃で大量のガードオークを真っ二つに斬り倒していた。
 だが、剣が粉々に砕けた。

 武器の耐久力を犠牲にし、1度の戦闘で1回しか使えない大技だ。
 シルビアは後ろに下がりつつリペアのカードを手の甲に押し付けていく。

「僕も行くよ!バズーカ!」

 エリスが肩にバズーカを背負い、無反動のバズーカを3発撃ち込んだ。
 ガードオークが爆発で吹き飛ぶ。
 だがそれだけでは終わらない。

「アサルト!」

 アサルトライフルの形をした銃が出現してガードオークをハチの巣にしていく。

「まだだよ!」

 ストレージから爆炎ポーションを取り出して投げる。
 ガードオークは爆発で吹き飛んだ。
 まるで金を投げるかのように贅沢に爆炎ポーションを投げていた。

 皆の寄付と、エリスのソウルスキル『次元工場』があるから出来る攻撃だ。

「今ですわ!攻撃開始!」

 ギリギリまで引き付けてから魔導士部隊のカースウォー&攻撃魔法でオークを消耗させる。
 一部の錬金術師も銃で攻撃するが、しぶといオークを完全に倒しきる事は出来ない。
 魔導士のカースウォー&攻撃魔法はしぶといオークと相性が悪い為、効果は今一つだった。

「戦士隊突撃!」

 MPが切れたタイミングでファルナが戦士を突撃させる。

 シルビアとエリスの攻撃で崩れた陣に突撃を仕掛ける。


 更に味方が消耗するとファルナが号令を出す。

「ソウルスキルを使いますわ!」

 傷ついた味方がファルナの元へと集まる。

「ソウルスキル・エンジェルサークル!」

 ファルナの背中に光で出来た天使の羽が発生し、半径10メートル以内にいる味方の傷を癒していく。
 その効果が切れると、ファルナは大楯と剣を構えてスキルを発動させた。

「挑発!」

 近くにいるガードオークがファルナを目指して突撃してくる。

「ハヤトパーティー!雑魚を倒すのですわ!」

 俺達は事前に会議をして決めていた。
 セイコウコウボウとカムイパーティーがオークキングとボスを倒す。
 俺達はその時に状況を見てどうするか決める。
 このままでは雑魚との戦いで兵士に犠牲が出る。
 ファルナは俺達4人に雑魚を倒してもらう決断をしたのだ。

「ヒメ!サミス!みんなを癒せ!」

 ヒメはヒールでみんなを癒していく。

「回復弾!」

 サミスは右手に短剣、左手に銃を持って銃を撃った味方が回復していく。

 サミスは俺と同じハイブリッドだが、俺とは違うEXスキルを取得していた。
 サミスのEXスキルは回復と銃攻撃を主に伸ばす道を歩んだのだ。
 そして、俺とは違い、ダガー&ハンドガンで戦う事が出来る。

 サミスは回復弾を撃ち尽くすと、右手の短剣を投てきし、左手のハンドガンを連射した。
 ハンドガンの弾数は俺と違い多い。

「私達も積極的に攻めましょう」
「そうだな!」

 ファルナ・トレイン娘・ヒメのいる地点を守るように俺とアオイはガードオークを倒していく。

 アオイはよく見える目だけではなく、敏捷を強化するソウルスキルを持っている。
 一見地味だが、常時強化型のソウルスキルは粘り強い継続戦闘能力を持っている。

 俺の1つ目のソウルスキルも常時発動型と言っていい。

『刀・極』

 それが俺のソウルスキルだ。

 俺は一気にガードオークに迫り、俺の攻撃範囲に入ったガードオークを瞬殺していった。

 俺を見て兵士が声を上げる。
 
「凄い!まるで刀の結界だよ!」
「ハヤト君の攻撃範囲に入ったらガードオークが魔石に変わってるよ!攻撃が見えない!」


 通常の刀LV10で攻撃モーションが150%に増加する。
 更に刀・EXで10回攻撃を当てる事で攻撃力が150%になる刀コンボを取得している。
 その更に上、『刀・極』は攻撃モーションが180%になり、10回攻撃を当てる事で攻撃力は180%に増加する。

 一見30%しか上昇しない地味に見えるソウルスキルだが、使ってみると効果は絶大だった。
 まず攻撃モーションが150%から180%に変わる事で、本来は2回攻撃出来る場面で3回攻撃出来るようになった。


 このわずかな差が俺の火力を引き上げる。
 更に刀コンボで攻撃力が上昇した事も大きい。
 1回斬りつけると105%だった攻撃力が108%に上昇し、ギリギリ倒せない相手を倒せるようになった。

 俺は中ボスに迫る。
 刀で何度も斬りつける。

 1回目の攻撃で108%のダメージ、2回目の攻撃で116%のダメージとコンボにより連撃性能が向上していく。
 そして10回目からは180%の攻撃を繰り出し続ける。
 これによりあっという間に中ボスが倒れ、魔石とドロップ品を吐き出す。

 俺はアーツを使えない。

 派手な攻撃ではない。

 基礎の積み重ね。強化する道を進んでいた。
 攻撃を当て続けるだけでダメージが積み上がり、雑魚も、中ボスも、殲滅力は大きく向上している。

 これが俺の『刀・極』だ。

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