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第153話

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【王国歴1000年夏の月1日】   

 俺達は休養日を挟みつつダンジョンでレベルを上げてからダンジョンを出た。
 一番レベルの低いヒメでもレベル112。
 俺のレベルは143になった。


 学園に戻ると、エースが揃っていた。

 サミスを見るとファルナ・エリス・シルビアがサミスに抱きついた。
 特にファルナは号泣して、サミスにしがみつくように強く服を握り、いつもと明らかに違う表情を見せた。

 ファルナは、俺が転生する前にサミスを守れず、俺は死にかけた、そう思っているんだ。
 今まで、苦しみを抱えてきたのかもしれない。
 サミスがファルナを抱いて笑顔でなだめた。



 ファルナが落ち着くと俺達を見て笑顔で言った。

「立派になったようですわね」

「セイコウコウボウやカムイのパーティーには全く追いついてないけどな」
「ですがわたくしより強くなっていますわよね?」

「どうかな?」
「レベルで見れば私達の方が高いわね。ハヤトもサミス、トレイン娘もソウルスキルを覚えているわ」

「頼もしいですわ」
「それと、ハヤトのスキルリセットはもう無いと思うわ」
「ええ、とれ、サミスが復活し、もう、後は伸びるだけですわね」

「すまない、早く、行こう」

 カムイが割って入る。

「何かあるのか?」

「エクスファックが4体確認されましたわ。1体ずつ、歩いてこの地に接近していますのよ」
「歩いてか?斥候は無事なのか?」

「何故か斥候には反応せず、歩いて接近しているのですわ。これを機に教会ギルド長を決める試練を行うのですわ」
「なんだ?エクスファックの動きがおかしい。ダミーファックもアサヒとドリルを攫って行ったし、魔物の動きには見えない」

「ハヤトから見てどう見えていますの?」
「まるで、こっちを伺うような動き……実験」
「私にもそう見えるわね。何を企んでいるかまでは分からないのだけれど、何かを企んでいるように見えるわね」

「すぐ、移動だ」
「そうだな。詳しい話は移動しながら聞こう」

 俺達は移動を開始した。



 教会ギルド長の試験は次のようになる。
 エクスファックが4体バラバラに時間差で迫っている。
 各候補者が自分の教会騎士団を指揮してエクスファックと闘う。

 エクスファックが妙な動きをしなければ、3つのチームが1回ずつ戦う事になるが、候補者は現状3名なので、最初の1体はファルナ陣営が倒す。

 普通にまとまって4体同時に攻めてこないのは助かるけど、このまま時間差で来てくれるのか?
 途中から急にエクスファックが動き出したら最悪ボロボロの展開になるだろう。
  最悪ファルナ陣営がエクスファック1体と闘っている間に残りの3体がダッシュで近づいて来て乱戦になったらやばいと思う。

 教会ギルド長候補者と揉めてこうなったようで、2人だけだった候補者にセイコウコウケンが参入してまた候補者が増えてるし、教会内部は日本の古い組織のようだな。
 ファルナと話し合いで揉めて、解決できないレベルだ。
 今の教会内部はぐちゃぐちゃになっているんだろう。
 大体セイコウコウボウが辞めるような組織って、やばすぎるだろ!

 
 ファルナ陣営は少数のメンバーしか連れて来ていない。

 いるのは、
 セイコウコウボウ
 カムイとヒロイン2人のパーティー
 ファルナ・エリス・シルビアのパーティー
 そして俺達4人のパーティーだ。

 11人しかいない。
 この11人だけが防壁の外に出て、残りのファルナ陣営は防壁内部に待機している。

 理由は、教会ギルド長候補者が危なくなると、エクスファックを押し付けて逃げる危険があった為だ。
 セイコウコウケン以外の奴はそれをやるだろう。
 なのでこちらも素早く下がれるように厳選されたメンバーだけで戦う。

 俺達11人が前に出て、その後ろを3つの騎士団が防壁の外で見学する。
 教会騎士団勢力に背中を見せて戦うのは気持ちが悪い。
 それにさっきから2人の教会ギルド長候補がセイコウコウボウをバカにしている。

 デーブが大きな声で言った。

「ふん!我の下につけば使ってやったのだがな!最近の若い者は粘り強さが足りない」

 いやいや、お前の話を聞いてるけどデーブの方がよっぽどひどいだろ?
 部下にパーティーを組ませて、自分は魔物を遠くから眺めて、命をかけて戦うパーティーを罵り、自分では何もしない。
 こういう行動を繰り返してレベルだけは100を超えているらしい。

 自分は安全な所から口だけ出して矢面には立たず、経験値を奪うようにレベルを上げていく。
 粘り強さが足りないのはデーブの方じゃないか?

 セイコウコウケンは戦いを控えて息を整えている為何も言わない。
 だがもう一人の教会ギルド長候補、ハゲインがセイコウコウボウの批判を垂れ流す。
 ハゲインの後頭部には髪が無く、日の光を浴びて輝いていた。
 ハゲインもデーブと同じような人間だな。

 セイコウコウボウは少しふて腐れたような顔をして聞こえないふりをしていた。
 いや、聞かないようにしているな。

 エクスファックが歩いて向かって来る。

 セイコウコウボウが合図を待たずに走り出し、エクスファックにこん棒を振り下ろす。

「おりゃああああ!」

 ドゴオン!

 爆撃のような音と、空気の振動がこちらに伝わって来て、セイコウコウボウは一方的にエクスファックを殴る。
 そのたびに爆発音が響き、上から振り下ろしたこん棒がエクスファックもろとも地面を叩いて、クレーターのような穴が出来ていた。

 エクスファックが起き上がり、黒いオーラをまとった。
 その瞬間にカムイが飛び出してくる。

 カムイがエクスファックを斬ると、背中にぱっくりと大きな傷が出来る。
 俺が攻撃すると、ネコがひっかいたような傷が出来るだけだが、カムイの攻撃は簡単にエクスファックを追い詰める。

 カムイとセイコウコウボウは挟み撃ちにするようにエクスファックを攻撃するが、カムイはセイコウコウボウが振った打撃の衝撃を浴びつつ、吹き飛びそうになりながらも前に出てエクスファックを斬っていく。

「カムイい!押し負けてるぞお!」
「く!うおおおおおおおおお!」

 2人は勝負するようにエクスファックを攻撃する。
 エクスファックが消えて、ドロップ品と魔石を吐き出した。

 2人の先頭に残りの者は入れず見ていた。
 
『入れば邪魔になる』

 そう思わせる戦いだった。
 しかも2人はアーツを使っていない。
 通常攻撃だけで、こんなに短時間でエクスファックを倒したのか!
 あの2人がまだ遠くに感じた。
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