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第128話

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 懐かしい感覚がした。
 俺の体が黒いオーラで覆われ、カースウォーのように力が沸き上がる。
 でも、不思議と苦しさは無くて、呪いの蓄積も体への負担も無い。

「いつもより、カースウォーよりも優しい光に感じる」

 ヒメの居る防壁を見ると、ヒメの体が黒く光っていた。
 ヒメの力か。

 黒いオーラに包まれていても、優しい光に覆われる様な不思議な感覚だ。

 転生前のカースウォーと同じで攻撃力・防御力・速度が40%アップしている。

「弱体されていないのか」

 俺が欲しかった力。

 失ってしまった力の一部。

 スピードラビットに斬りかかる。
 体に負担は無く、呪いも蓄積しない。

 連撃でスピードラビットが魔石とドロップ品に変わる。

「いける!この攻撃力と速度があれば行ける!うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 俺は何度も刀を振るう。
 刀がきしむような感覚を感じ、ストレージから魔力弾丸を取り出し手の甲に押し当てた。

『武具の耐久力とハンドガンの弾数が回復しました』

「いける!倒せる!」

 俺は勢いに乗って魔物を倒した。



 俺はこの世界に来る前、ヒメが好きだった。
 おっとりとした性格が顔に現れたような優しそうな顔、自信が無さげで、周りの誰かが困っていると自分が損をしてでも反射的に助けるその行動は凄いと思った。

 俺とヒメは違う。
 俺は計算で動き、良く逃げていた。
 昔の俺ならここに飛び込む決意すら出来なかっただろう。

 ヒメは優しい。

 自分が優しいと思っている者は優しくはない。
 自分がまともだと思っている者は多くの者がまともではない。
 自分に甘く他人に厳しい者を遠くで眺めて来て、それだけは分かっていた。

 ヒメは自信が無くて、でもだからこそ、優しくなったのかもしれない。
 ヒメは自分に被害が及んでも、周りを助けようとする。 

『自分に犠牲が及んでも、俺を助ける?ヒメは、ヒメならそうする!』

 一気に魔物を倒すが、違和感に気付いた。
 カースウォーの効果が長すぎる。
 カースウォーの体への負担が、ない?
 
 俺の体への負担は?

 俺への呪いはどこに行った?

 俺は戦いの隙を見つけてヒメを見る。

 ヒメの顔が呪いで黒いマダラが覆うように侵食していた。

 ヒメが俺の俺への負担を肩代わりしている!

 俺に補助は必要ない、そう思わせなければヒメは倒れるまで俺にカースウォーを使い続けるだろう。

 本来は自分専用であるはずのカースウォーを他の者に使っている。
 しかもあんなに遠距離から。
 更に転生前の俺がボロボロになった時と同じで弱体前のカースウォーと同じ攻撃力・防御力・速度をプラス40%アップさせるぶっ壊れ性能だ。
 ヒメが代償を受けているのは分かった。

 俺はそれでも、全力で魔物を狩った。
 早く、強くなる!
 レベルを上げる!



【ヒメ視点】

 ああ、ハヤト君のレベルがどんどん上がっている。
 ハヤト君の動きを見てそれが分かった。

 でも、まだ足りない。
 もっと、このソウルスキルは、1度解除されるとこの戦闘ではもう使えない。
 
 体がきしむような痛みが全身に駆け抜ける。

 呪いで力が奪われる。

「皆、お願い、わたしに、ヒールとリカバリーをかけて!1回だけでもいいの!魔力が無くなるまで私に使って!」

 皆が私に残った魔力で魔法を使う。

「ヒール!」
「リカバリー!」
「リカバリー!」
「ヒール!」

 皆の魔力が枯渇して倒れこんでいく。
 もう少し、もう少しだけでいいの!

「はあ、はあ、リカバリー!」

 私に魔法を使った子が倒れる。

「皆!動けなくなってもいいの!今だけ頑張って!倒れるまで魔法を使って!」

「ヒール!」

 魔導士が倒れこんでいく。

 ああ、気持ちいい。

 ハヤト君の役にたっているのが分かる。

 手が痺れてくる。

 ハヤト君にかざした手が黒いマダラで覆われて、黒く染まっていく。

 あれ?目が、見えなくなってきた。

 もう、少し。

 もう、少しだから。

 もう、すこ、し。





 
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