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第120話

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 エリスがダンジョンの地面で息をあげる。

「はあ、はあ、もう、もうもう、無理だよぉ」

 エリスがカエルのような態勢で地面に倒れる。

「はあ、はあ、体を流そう」

 俺は無言で川に入り、体を洗う。
 その後エリスの体を流した。

「でも、これがバレたら、ダンジョンでレベル上げをしていると思われるな」
「そうなったら、シテいた事を、はあ、はあ、僕が、言うんだ」

「……恥ずかしくないか?」
「でも、良いんだ。所でハヤト」

「ん?午後は、温泉に行かないかい」
「行こう」

 

 ◇



 俺は温泉から帰ると、一人ですぐに眠った。



【王国歴1000年春の月31日】

 俺は食堂でヒメに話しかける。

「ヒメ、おはよう」
「お、おはよぅ」

 ヒメはパクパクとパンを詰め込み、逃げるように去って行った。
 みんなと話をするのも難しいな。

 学園では順調に講義が進んだ。
 今日から納品数・筆記試験の成績・レベルのランキングが掲示されることになり、アサヒは狙い通り食いついただけでなくいつも美女と一緒にいるカムイに喧嘩を売って停学になった。
 それにスティンガーの息子、ドリルも女性に乱暴をしようとして停学になった。

 厄介な奴がいなくて平和だ。
 俺は穏やかな気持ちで講義を受ける。

 だが、突然ファルナが入ってくる。

「邪魔をして申し訳ありません。ですが緊急で共有したい事件が発生しましたわ。結論から言いますと、今ダンジョンで『ダークフィールド』の発生が確認されましたわ。この名称は仮のものですが、ダークフィールドは黒い霧の事ですのよ。黒い霧がある場所に近づくのは危険ですわ。そこには大量の魔物が発生し、襲い掛かってきますのよ。もう一度言いますわ。黒い霧には近づかないようお願いしますわ」

  全員がファルナに注目して話を聞いた。

「それともう1件。セーフゾーンの存在も確認されましたわ。各階のダンジョン内にある神殿のような神聖な空間には魔物が寄ってこれませんのよ。セーフゾーンは女神がダークフィールドに対抗して作ったのですわ。しつこい様ですが、ダークフィールドには近づかないようお願いしますわ」

 こういう大事な部分はファルナが直接言って回る事で重要さを強調しているんだろう。
 細かい連絡は伝令の者に任せて、要点だけはファルナが直接伝えるのだ。

 俺は学園が終わるとすぐにダンジョンの2階に向かった。



【ダンジョン2階】

「セーフゾーンに行ってみよう」

 セーフゾーンに入ると、パルテノン神殿のような建物と石造りの物体から水が流れ出していた。
 給水機のようだ。

 口に含むと新鮮な水が体にしみこむようだ。

「美味い」

 屋根と給水機があって魔物が入ってこれない空間か。

「次は、ダークフィールドだな」

 俺はセーフゾーンから見える黒い霧に近づいた。
 近づくなとは言われたけど、何メートル以内に入ったらダメとかは言われていない。
 くっくっく、何か言われたら『え?距離を取って見に行っただけで近づいてないんですけど?』と言って乗り切る。
 
 俺には計画があった。

①ダークフィールドに近づく
②魔物が襲い掛かって来る
③倒す
④魔物を探さずに倒せて簡単&急速レベルアップ!

 危なくなったらセーフゾーンに逃げればいい。
 数日分の物資は一応揃えた。
 ポーションも揃えたが、値段が倍近くに高騰していたが買えるだけ買った。
 高騰していようが必要なら買うのだ。

 安全を確保した上でセーフゾーンを背にしてダークフィールドに近づく。

 13体ほどの魔物が襲い掛かって来る。

「マジックブルはすぐ倒す!」

 パンパンパンパンパンパンパン!

 これで残った魔物は近接戦しか出来ない。

 速度の速いスピードラビットを刀で倒す。

 ザンザンザン斬!

 そして遅れてくるテクニカルチキンとアタックボアを落ち着いて倒す。


 レベルアップしてもどれを上げるかは決まっている。
 その事で、俺はプレイヤースキルに重きを置くようになっていた。
 転生前の俺は焦っていた。 
 でも、焦って走るとすぐにスタミナ切れを起こす。

 今は敏捷の値が足りないのだ。
 向かって来る敵は待つ。
 前も多少はやっていた事だけど、徹底して必要のないタイミングでは走らない。

 無駄を削ぎ落す。

 俺はテクニカルチキンに刀を突きさす。

 俺は無駄な動きが多かった。
 魔物が怖かった。怖い魔物と対峙した瞬間やられる前に駆け出し、走って突撃して倒す事で安心したかった。
 でも、それは違うんじゃないかと思い始めている。

 追い詰められたように急いで倒すのは違う。
 真に強い者は、戦い続けられる者だ。

『俺はどんなに長く戦ってもいい』

 そう思っている奴は強い。
 そう思った。

 アタックボアに袈裟斬りを食らわせ、刃の向きを反転させて返すように斬る!

『レベルが13から14に上がりました』

 俺は無駄を削ぎ落す。

 セイコウコウボウは言った。

『ハイブリッドの能力はまるでバトルセンスの土台を鍛える為にあるようだね』 

 一理あると思った。

 ハイブリッドはアーツを使えない。

 強力なスキルを使えない。

 基本が出来ていなければハイブリッドでまともに戦うことは出来ない。

 どんどん魔物が来る。

 恐怖はある、あっていい。 

 でも、恐怖を乗りこなすように待つ。

 そして、向かってきた魔物を確実に倒していく。

 俺は、没頭していた。



【カムイ視点】

 俺は2階のダークフィールドを見に来た。
 ハヤトが魔物と闘っている?

 少し見ないうちに能力値が上がったのか?
 強くなったように見える。

 いや、能力値だけではない。
 動きが変わった。
 進化している。
 今も進化しようとしている。
 まるで、恐怖を克服して乗りこなそうとしているような、不思議な感覚を覚えた。

 ステータスには見えない部分が、魂が強くなっている!
 女神が今回は一人じゃないと言っていた。
 ハヤトか?ハヤトがいるから一人じゃない、そういう事なのか?

 俺は、不思議とハヤトの動きに見入っていた。







 あとがき
 カクヨムの方では151話まで投稿済みです。
 続きが気になる方はカクヨムの方もよろしくお願いします。
 ではまた!



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