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第106話

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 俺の笑顔が消えてもしゃもしゃと食事を摂る。

「ふふ、何ですの?その顔は、分かりやすいですわね」

 ファルナは俺のほほをツンツンとつついていた。

「アサヒを関わると、気分が下がる」

 俺はやる気を無くしつつ、テーブルで休み、学園の訓練場に向かった。


 時刻は14:30か。
 来るのが早すぎたかな?

「遅かったじゃないか!」

 アサヒはにやにやしながら俺を見る。
 どれだけ俺をいたぶりたいんだ?
 まだ30分前だ。

 それに、人が多い!

「提案があるよ!僕がハヤトを倒す光景をみんなに見せる為、闘技場に移動するんだ!大きな会場で僕の華麗な技を見せてあげるよ!」

 ファルナがすぐに動く。

「闘技場に場所を移動しますわよ!学園生以外からは入場料を徴収しますわ!」
「すぐに準備します!」

 ファルナの指示で兵士が動き出す。
 ファルナものりのりだと!

 いや、財政が苦しいのかもしれない。
 今は魔石を集めて、国の立て直しに力を入れたいんだろう。

 兵士が素早く立札を立てて闘技場に誘導する。

「観客が多いため!アサヒVSハヤトのバトルモードは闘技場で行います!なお、学園生以外1万魔石の入場料がかかります!ビップ席は15万魔石です!」

 入場料高!
 ちなみに、最初に『ハヤトVSアサヒ』と入れた所、アサヒが怒り出した。
 自分の名前が最初に来ないのが許せなかったようだ。
 どうでもいいだろ。


【闘技場】

 席が全部埋まって、立ち見の者もいる。
 観客席の声でとても賑やかだ。

 ビップ席を見ると、
 ゲーム主人公のカムイが座って俺とアサヒを見ていた。
 その左右には忍者娘といたずら魔女がいる。
 どちらもゲームのヒロインだ。

 俺はエリスとファルナ派だから、カムイと付き合ってもらって問題無いのだ。

 近くにはカムイのライバルのセイコウコウボウ、そしてスティンガーの息子のドリルもいる。

 あの席の威圧感はけた違いだ。

 それよりもアサヒだ。
 リングの中央に椅子を置いてモデルのようにポーズを決めて真上を見上げている。
 むかつく!
 あのポーズがむかつく。

「逃げずに来たようだね。もっとも、女神が決め戦いだよ。ずる賢く立ち回る君でも逃げきれなかったようだね」

 ずる賢く立ち回るのは俺もそうかもしれないけど、お前の方が酷いだろ?
 転生前のブレイブアーツ奇襲は本当にひどかった。

「君のレベルはいくらだい?」

 言うと思った。
 何回聞くんだよ!
 
「レベル1だ」
「はははははははははははは!僕に何もできずに負ける未来が見えるよ!なんせ僕は強ジョブの戦士で、君は最弱のハイブリッドなんだ!しかもレベル1,ぷくくくくくくくく」

「両者構えてください!ルールはバトルモードでの3分一本勝負です!」

 審判が声をかける。
 バトルモードで戦うと、戦った傷は元に戻る。
 死ぬことは無いのだ。
 バトルモードなら光の壁は発生しない。
 女神がそういう試練にしたのだ。

 アサヒは刀を構える。
 アサヒは刀か?

 刀は、かなり前のめりになって戦うスタイルだ。
 タイマン戦向けで、張り付くように戦う事で力を発揮する。
 短いリーチで魔物の懐に入るように戦うし、張り付き攻撃がメインになるから、アサヒの性格には合わないと思う。
 
 
 
 それよりも、戦士に統合されて強化された短剣の方が合っている気がする。
 投てきと短剣の移動アーツで一気に攻撃してすぐ逃げる戦いの方がアサヒの動きにも合っていると思う。

 武器と性格の相性は大事なんだけどな。

「試合開始!」

「お互いに刀を使っているね!これで力の差が分かりやすくなるよ!更に僕のレベルは7だ!君の7倍の能力値を持っているよ!僕は努力を重ね、レベル1から一気にレベル7まで昇ったんだ!刀のLVを上げた事でモーションスピードは格段にアップしているよ!」

 アサヒが見せつけるように刀を振る。

「アサヒ選手!後2分でバトルモードが終わります!!」
「焦ることは無いんだ!!僕は1分もあればハヤトを倒せるからね!!

 更にステップやカウンターも取得しているよ。

 君はレベル1ならロクなスキルを覚えていないんだろう?
 卑怯な小細工をする暇もなかったはずだよ?」

「……スキルはあまり覚えていない」
「やっぱり!思った通りだよ!はははははははははははは」

「アサヒ選手!後1分です!!早く戦ってください!」

「さて、無様に地面に這いつくばる時間だよ!」

 アサヒが刀を振る。

 俺はタイミングを合わせて刀を振るが、アサヒの力が強くつばぜり合いで力負けして後ろに軽く飛ばされた。
 何度もアサヒが刀を振るい、俺はタイミングを合わせて打ち合うが、壁に追い詰められた。

 更に横に逃げようとすると、アサヒがステップで回り込み、俺をいたぶるように攻撃を繰り返した。
 刀で打ち合うたびに壁に押し付けられるような衝撃を受け、刀から衝撃が伝わって来る。

 何とか攻撃を受けずに立ち回るが、アサヒは笑いながらいたぶるように攻撃を続けた。
 俺はアサヒの攻撃を食らってはいないが、息が上がって来る。
 刀で防ぐだけで精いっぱいなのだ。

「ははははハハハハハ!もう息が上がったのかい!無様すぎるよ!」

「バトルモード!終了です!」

 それでもアサヒは攻撃をやめない。
 俺の刀が弾かれて俺の腹が無防備になったその瞬間にアサヒはアーツを使った。

「斬月!」

 斬月は女神が俺に与えた試練の光ではじかれた。
 皆と協力プレーが出来ない代償は祝福でもある。

 シスターちゃんの言ったことは本当だったんだ。

 アサヒは「ち!」と舌打ちをした。
 俺を、殺す気だったのか。

 間違いない。
 この試練は祝福でもある!

 アサヒの攻撃から俺は守られた!
 アサヒとのバトルモードで俺は侮られるだろう!
 俺に都合がよい!

 皆がハイブリッドの力を見て俺への期待が薄くなっているのを感じた。
 でも、俺は、皆からの期待が薄くなり気持ちが軽くなる。

 転生前は俺の判断ミス1つで多くの人が死ぬ状態だった。
 俺の重要度が減り、ファルナを手伝う力も失った。

 でも、良い面もある。
 俺は自分のペースでレベル上げが出来るだろう。
 俺は今弱いんだ。
 自分のペースでレベル上げをしていいんだ。



 ハヤトの感覚は少しずれていた。

 ハヤトのジョブは思ったよりも皆の注目を集めていたのだ。

 ハヤトはその事をすぐに知る事となる。


 
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