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第97話

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 俺達はアルナ騎士団を倒し、アルナの拠点に侵入した。

 俺・ファルナ・ヒメ・エリス・アオイ・シスターちゃんが前に出て、後ろから20名ほどがついてくる。

 全員疲弊しており、元気な者はいない。

 アサヒの勇者騎士団が先に侵入したせいか拠点の城の護衛はほとんどいなかった。

 奥の大広間に進むと、アルナがいた。
 アルナのサイドには10体のカードゴーレムと、アルナの上級スキルである、アタックゴーレムとガードゴーレムが並んで立つ。

 俺はアルナを睨みつけた。

「あらあ、遅かったわねえ」
「トレイン娘はどこにやったのですか!アルナ!」

「まあ!せっかくの姉妹の再開なのに怒鳴る事無いじゃない。トレイン娘はここよお」

 大広間に不自然に置かれたベッドからアルナはトレイン娘を掴んで上に掲げる。
 アルナはトレイン娘の腕を持ってトレイン娘を物のように扱う。

「動いたらトレイン娘を殺すわあ!!せっかくだから話をしましょう!」

「な、何を言っているのですか!」

 アルナはファルナの言葉を無視して話を続ける。

「この子と遊ぶのは楽しかったわあ!

 傷を受けても回復するようにしてあげたわあ。

 睡眠耐性も紋章で強化してあげたわあ!

 体力を回復させて、眠らなくてもいいようにして、何度も何度も気持ちよくしてあげたの!
 何度も何度もよお!

 ねえ?そうするとどうなると思う?

 気持ちよくされて気絶できずに体力を回復し続けるとどうなると思う?

 苦しくなってくるのよおおおおお!

 何度も何度もこの子は泣きながら『やめてください』って叫んだわあ。

 でも途中から意識がもうろうとして来て、それでも眠れないのよお!

 途中から小さな声で『ハヤトさん、ハヤトさん』しか言わなくなったわあ!

 もう今は何をしても反応しないわあ!

 来るのが遅かったわねええ!

 壊れたおもちゃはもう返してあげるわよお!」

 アルナはトレイン娘を上に投げつけた。

 俺はトレイン娘をキャッチするために走る。

 アルナは上級紋章銃の紋章に手を当てた。
 不自然に揃ったように槍を持っていたゴーレムが投てきの構えに入った。

 やると思った。
 俺がキャッチする瞬間に銃と投てきで俺を殺す気だ。

「デスモード!スケルトンパレード!カースウォー!魔眼開放!月光!」

 スケルトンにトレイン娘をキャッチさせて、俺はアルナに切り込む。

「舐めすぎよお!私の方が強いのにねえ!」

 アルナが俺に銃を向けた。
 俺はアルナの銃を避けようとするが避けきれず攻撃を受ける。

 ゴーレムが俺を包囲しようと動き出す。

 パアン!

 俺達が突入した扉とは違う扉からアサヒが入って来る。

「この時を待っていたよ!ブレイブボム!ブレイブクロス!ブレイブショット!」

 アサヒが俺を巻き込むようにブレイブアーツを放った。
 俺は素早く後ろに下がるが、広範囲のブレイブボムを受けて体勢を崩した。

「アサヒいいい!邪魔するんじゃないわよおおおおおお!!!」

 アルナはブレイブボムを受け、ブレイブクロスをギリギリで躱した。
 多くのゴーレムはアサヒのブレイブアーツの攻撃の直撃を受けた。

 その後アサヒのブレイブショットとアルナの上級紋章銃で撃ち合いになる。

 アルナは上級紋章銃の効果が切れると、紋章銃を出現させてアサヒに銃撃を浴びせた。

「ぐほおおお!ヒール!」

 アサヒは即座に後ろの扉の中に下がり、逃げ出していく。

「トレイン娘の救出は終わりましたわ!総員撤退ですわ!!」
「逃がすわけないじゃない!ゴーレム!殺しなさああいいい!皆殺しよおお!」

 トレイン娘と少数の部隊は部屋から脱出した。

 乱戦状態に入り、俺とアルナが戦う。

『月光の効果が切れました』

 アルナはハンマーを構えて攻撃する。
 俺は猛攻でアルナを押す。

「ねえ、必死ねえ!後少しでデスモードが切れるわあ。私を攻撃して追い詰めても、デスモードが終わるまで私が立っていたらあなたは終わりよお!」

「三日月!斬月!」

 アルナにアーツがヒットする。

「攻撃が軽すぎるわあ。武器が弱い!レベルが弱い!残念だったわねえ!もっと早く強くなれれば勝てたかもしれないのに!」

 アルナが血を流しながら笑う。

 アルナのレベルは201だ。

 アルナは強い。

 動きもいい。

 倒しきれない。

 デスモードが切れる。

『デスモードの効果が切れました。呪いLV5を受けました』

『カースウォーの効果が切れました』

「ねえ!どんな気分?これから死ぬのはどんな気分?分かるわよねえ?デスモードとカースウォーでわずかに私を押せる程度の力しかないわあ。180%の強化から50%に弱体したあなたに勝てるわけないのよお。もうMPもろくに残ってないんでしょう?」

 俺は魔眼を解除した。

「あらあら?魔眼も解除しちゃうのお?え?何、まだ生き残ろうとしてるのお?ポーションを今更飲んでどうするのよお?」

 俺は異常解除のポーションを飲んだ。
 そして魔力ポーションを飲んだ。

「リカバリー!リカバリー!」

『呪いLV5から3に下がりました』

「ふふふふふふ!!なんなのおお!必死すぎるわよおお!その顔!最高よお!ゆっくり虐めて殺してあげたいけど、油断せずにすぐ殺してあげるわあ」

 アルナがハンマーを構えた。

『呪いLV3から2に下がりました』

 周りのゴーレムはもうすべて倒されている。
 アオイのおかげか。

 トレイン娘は救出済みだ。

 皆ボロボロだけど、アルナだけか。

 アルナを、殺せば終わりだ。

 見るものすべてが色を失い、時間の流れを遅く感じる。

 アルナの動きが、イメージできる。

 俺が動くと、アルナの動く未来のイメージが変わる。

 多くの未来から、アルナを殺すイメージを選び続ける。

 アルナがハンマーを振りかぶってコマのように回転しながら攻撃を仕掛けてくる。

 俺はその攻撃の前に後ろに下がった。

 シスターちゃんの回復魔法が飛んでくる。

『呪いLV2から1に下がりました』

『呪いが解除されました』

 アルナのアーツ攻撃が終わると、アルナはジャンプしてスタンプのようにハンマーを地面に振り下ろした。

 地面に地鳴りが発生する前に俺は飛んで上からアルナを浅く斬りつけた。

 アルナの上に着地してアルナに刀を突き立てる。
 
 攻撃が浅い。

 アルナの防具も能力値も強い。

 関係ない。

 何度でも斬ってやる。

 何度でも何度でも突き刺す!

 俺は何度も攻撃を繰り返した。

 何度も死のイメージを振り払うように未来を選び取る。

 何度もアルナに攻撃を当てるイメージを選び取る。

 アルナの方が能力値が高い。

 俺はそれでも、数%でも良い未来が見えればそれに必死ですがりつく。

 1%でも良い未来があればそのイメージ通りに動く。

 無数にある未来から最良を選び続ける。

 砂漠にある一粒の宝石を探し当てるように、最良を選び続ける。

「はあ、はあ!私の勝ちよお!後3分で代償の時間よお!ハヤトは私を殺しきれないわあ!!」

「もう、時間が無いか。と言ってもどんな代償が来るかは分からない」
「転移者が弱くなることは決まっているわあ!」
「時間切れか」
「素直ねえ」

 その瞬間後ろからアオイがアルナを槍で突き刺す。
 ロングスティングとショートスティングのコンボが決まったが傷が浅い。

「邪魔よおおおお!」

 アオイがハンマーで吹き飛ばされ、壁にぶつかる。
 その瞬間に俺は切り札すべてを使う。
 アルナと長い間戦い続けてMPは完全回復した。

「デスモード!カースウォー!月光!魔眼開放!」
「無駄よおおおおぉ!」

 アルナと俺が打ち合う。
 隙が出来た瞬間にアーツを叩きこむ。

「三日月!斬月!」

 アルナに十字の傷をつけた。
 更にアルナを追い詰めるように攻撃を続けた。


『月光の効果が切れました』

『デスモードの効果が切れました。LV5の呪いを受けました』

『カースウォーの効果が切れました』

「はあ、はあ!私の、勝ちよおお!後、はあ、はあ、耐えきったわああ!!」

「デスモード!カースウォー!」
「ねえ!馬鹿なのお!呪いLV10になれば死ぬのよお!」
「馬鹿はおまえだ!もう仲間もゴーレムもいない!人を使いつぶしたお前の負けだ!」

 俺に向かって回復魔法が飛ぶ。

「リカバリー!」
「リカバリー!」
「リカバリー!」
「リカバリー!」
「リカバリー!」

 アルナと俺が少しでも距離を取ると、周りからアルナに遠距離攻撃が飛ぶ。
 アルナは俺に張り付くしか選択肢が無くなる。

 アルナが俺に斬られて倒れる。

 俺は上から刀でアルナを何度も突き刺した。
 俺はレベルアップの声が聞こえると同時に刀を上に掲げた。

「アルナを倒した!」

 その瞬間、多くの者がその場に座り込んだ。

 中には泣きながら抱き合っている者もいる。

「トレイン娘は?」

 ファルナが暗い顔をした。

「もう、意識がありませんの」

 意識の無いトレイン娘が俺の元に運ばれてくる。

「シスターちゃん、治せないか!」

 シスターちゃんが首を横に振る。

「ヒメ!ポーションで何とかできないか!」

 俺は、トレイン娘を抱きしめた。

 アルナに心を壊されたんだ。

 遅かった。

 遅かったんだ。

「ファルナ、頼みがある。いい国を作って欲しい」

「ええ、そうしますわ!いい国を作りますわ!」

 ゴーン!ゴーン!ゴーン!
 24時の鐘が鳴る。

 代償の時間か。

 俺は、光に包まれていた。


 目を開けると、ヒメ・アオイ・アサヒ・そしてクラスメートの女子がいた。

 夜なのに光が強いこの空間は、青空と白い雲が広がっていた。

「ここは、天界?神様の住むところかな?」

 クラスの女子が言った。

「ハヤト君、どうしてトレイン娘がいるの?」

 俺の腕にはトレイン娘がいた。

「俺が抱いていたからだと思う」

 クラスメートの女子が割って入って来る。

「おかしいよ!だって私、異世界の子と抱き合っていたよ!」

『私が呼びました』

 頭に声が響く。

 空間が開いてそこから白い衣をまとった美しい女性が現れた。

「私の名はエロスティア、女神です」

 女神は、本当にいたのか。
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