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第95話

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 バアン!
 うさぎ亭の入り口が勢いよく開かれた。
 血を流したエリスが入って来る。

「大変なんだ!サミスフィールがアルナに攫われたんだ!」

 俺は『サミ』で始まる言葉に反応した。

 サミで始まる名前はトレイン娘しか思い浮かばない。

 聞きたくない感情もあった。
 でも、聞かずにはいられない。

「サミスフィールは、トレイン娘か?」
「そう、だよ」

 失敗した!

 俺は、俺だけはすべてに警戒しているべきだった!

 どんなにおかしいと思われても俺だけは警戒を続けるべきだった!

 俺は外に出ようとしてアオイに腕を掴まれた。

「待ちなさい!攻めるなら全員で攻めましょう!一人では無駄死によ!それに装備を変えればもっと有利に戦えるわ!」
  
 ファルナが入って来る。

「ヒメ!すぐにポーションをみんなに飲ませるのですわ!総員で突撃ですわ!」

 シスターちゃんは魔力を使いすぎたのか、団員におんぶされていた。

 早くしないと間に合わなくなる。
 アルナはトレイン娘を壊すだろう。
 その前に助け出す!

 俺はアオイの手を振り払い、アルナの拠点に走った。
 後ろからファルナが俺を止める為に叫ぶが、無視して走り続けた。

 後ろからアオイもついてくる。

「私も行くわ!」
「俺は、今から奴隷にされたアルナ騎士団を殺す。俺はたくさん殺して来た。でも、アオイは殺してないだろ?」
「私も殺すわ。相手が殺す気なら最初からそうするつもりよ!」

 俺とアオイは走ってアルナの拠点に向かった。



 アルナの拠点に着く前に、4人の女性が行く手を阻んだ。

「アルナ様の元ヘは行かせない!」
「私達はアルナ様を守る近衛よ!」

 4人が槍を構える。

「どいてくれないか?」
「何を言ってるの?近衛なんだから拠点に入れないように殺すに決まってるじゃない」

 近衛が笑う。

「カースウォー!月光!」

 体が黒と白の光に覆われてまじりあうように輝く。

「三日月!斬月!」



 俺は4人を殺した。
 レベルは全員100程度で、アオイもいた。
 苦戦することは無かった。

 アオイは俺のレベルをアップさせるため近衛に止めを刺さなかった。


「ハヤト、能力値を振りなさい!確実に強くなって助けるのよ」
「そうだな」



 俺は能力値を振った。

 ハヤト 男
 レベル:70
 固有スキル きゅう:LV10
 ジョブ:黒魔導士
 体力:150+100  
 魔力:150+250 
 敏捷:150+350  
 技量:150+100  
 魅力:50+100 
 名声:50+100  
 スキル・闇魔法:LV10・刀剣術:LV10・聖魔法:LV10・斥候術:LV10・超人体:LV10・ステップ:LV10・カウンター:LV10・★魔眼:LV10・★スケルトンパレード:LV10・★デスモード:LV10
 武器 輪廻の刀:400 ・防具 輪廻の衣:300
 斥候の紋章 ・耐性の紋章


 俺は深く考えず素早く能力値を振り、すぐ前に進む。
 レベル100を超えていればもっと楽に進めただろう。
 装備をもっと強い物に変えていればもっと楽になっただろう。
 いつも何かが足りない。
 でも、それが普通だ。
 万全の状態で戦いが出来た事は今まで1度も無い。
 


「カードゴーレムよ。ハヤト、あなたマークされてるわね」

 カードゴーレムか。
 紋章錬金術師が作れるカードで、紋章錬金術師がカードに魔力を込めるとゴーレムが現れる仕組みだ。
 コストが高い割に使い捨てで倒さなくても時間が経てば消える。
 更に紋章錬金術師しか使用できず、使用時にMPを消費する。

 俺達を挑発して拠点におびき寄せた上で自分は隠れてカードゴーレムをけしかけて来るか。
 資金力のあるアルナに出来る戦法だ。

 ファルナの陣営すべてを殺す気だろう。
 俺が狙われているのはあるけど、全部殺す気だ。

「攻撃型のゴーレムか」
「そうね、素早くて攻撃力が高いわ」

 カードゴーレムはやせ型の人の体形をしていた。
 このタイプは敏捷と攻撃力が高い。

 カードゴーレムを無視して拠点に行けないようにしているんだ。
 数は34体。

 いや、ちょっとずつ数が増えている。
 アルナの 拠点からカードゴーレムが出てくる。

「デスモード!スケルトンパレード!カースウォー!」

 102体のスケルトンがカードゴーレムに突撃する。
 俺のレベルアップでスケルトンは強化されている。

 更にアオイと俺がカードゴーレムを攻撃した。

 槍を持ったカードゴーレムを刀で斬り刻む。
 剣を持ったカードゴーレムもハンマーを持ったカードゴーレムも関係ない!

 全部倒す。


 カードゴーレムを倒し、数が少なくなるとアルナ騎士団が出て来た。
 アルナ自身は出てこない。

 だが、奴隷になったアルナ騎士団は俺達を包囲しようと陣を組んで進んでくる。
 数は100人ほどか。

 俺はLV4の呪いを受けている。

 MPは、もう無い。

 魔力ポーションは飲んだが、回復には時間がかかるだろう。

 その時、後ろから気配がした。

「全軍突撃ですわ!」

 ファルナ騎士団がアルナ騎士団に攻撃を開始した。

「ハヤト君!後ろに下がって!」
「すぐに回復するのです!」

 俺が後ろに下がると回復が行われる。

 ヒメのスライムが俺にまとわりついてポーションを使った。
 シスターちゃんの回復魔法で呪いが癒えていく。

 更に拠点の近くに気配を感じた。

 アサヒを先頭に騎士団がアルナの拠点に突撃を開始した。
 
 アサヒ!

 俺達をおとりにしてアルナを倒しに行ったのか!

 だが、それでいい。
 
 アルナを倒せるなら誰でもいい。
 今はアルナ騎士団を倒す!



 アルナ騎士団を倒して周りを見渡す。
 ファルナ騎士団の多くの者が疲弊して動けなくなっていた。





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