上 下
93 / 179

第93話

しおりを挟む
 皆座って休む。
 
「近くに25体ほど魔物の反応がある。俺のパーティーのメンバーはレベルが上がったからパーティーチェンジしてくれ」
「ハヤト君、休もうよ」

「敵感知に魔物の反応があると気になってしまう。俺がレベルの低いメンバーとパーティーを組んで俺だけで倒してくる」

 俺は素早くパーティーを組み直して魔物を片付けて戻った。

「お疲れ様です!」

 トレイン娘が出迎える。

「休んでて良かったんだぞ」
「出迎えたかったんです!」
「そうか、出迎えて貰えるのも明日までかもな」

「代償ですか?」
「そうだな」
「私はハヤトさんがレベル1になっても、スキルを全部失っても、子供になっても、何があっても出迎えますよ」

「子供になるは考えてなかったけど、そういう可能性もあるか」
「女神なら何でも出来ますよ」
「逆にどんな代償があるか楽しむのもいいかもな」

「そうですよ!天使になったり、精霊になったり、ワクワクしますよね」
「何でもありか。女神だからな」

 女神か。
 ゲームでは声しか出てこないけど、本当にいるんだよな?
 この世界はゲームと考えるにはあまりにリアルすぎる。
 何でゲームがあるんだろう?

 ゲームを元に作られた世界なのか?

 トレイン娘が突然俺に抱きついた。

「ハヤトさん、代償が落ち着いたら、温泉に行きましょう。ダンジョンの1階もいいですよね」
「そうだな、俺が男の姿でいたらな。子供でも無理だし」
「女神さまにお願いします。ハヤトさんがハヤトさんのままでいるようにお祈りしますね」

「明日のお楽しみだ」

 俺は不安を覆い隠すように大きめの声で言った。

 俺とトレイン娘が皆の元に戻ると、教会騎士団の男がいた。
 ファルナと話を始めた。

「こちらはダンジョンの5階で苦戦していますわ。そちらの動きを教えて欲しいのですわ」
「うむ、アルナがダンジョンから出た瞬間にアルナを連行する」

「それは助かりますわ」
「だが、これは時間稼ぎにすぎん。数日で釈放されるだろう」
「それでも助かりますわ」

 教会騎士団の男が帰っていく。

 ファルナの顔が少し明るくなった。

 俺達は明日の午前中まで魔物を倒し、うさぎ亭に戻った。



 ◇


【王国歴999年冬の月90日、うさぎ亭】

 みんな笑顔でうさぎ亭に入る。

「今日が終われば代償です!今日の夕食は少し豪華にしたいです!」
「そうですわね。買い出しに行きますわよ」
「転移者へのありがとうパーティーです!」

 トレイン娘が笑顔で言ってみんなが盛り上がる。

「皆で買い出しに行こう!ハヤトとヒメ、アオイはゆっくりしていてね」

 みんなが出かけて行った。

 俺とヒメ、アオイだけがビップ対応を受ける事となった。
 他のクラスメートの女子はみんなと一緒に出掛けて行った。

「この世界に来てまだ一カ月くらいしか経っていないのに、長くいたような気がするね」
「色々、あったからな」
「ありすぎたくらいよ。もっとのんびり過ごしたかったわ」

「俺の計画だと、最初だけレベルを上げて、後はのんびりする予定だった」
「のんびりしないよね?」
「そうはしないでしょう?」

「え?いやいや、のんびりする予定だったんだ」
「ハヤトは1つ解決しても次の何かが気になる人間よ」
「そうだよ。ずっと何かをやってるよ」

 今同じテーブルで話をしているのが不思議に感じる。
 俺は学校で目立たない存在で、学校の人気ナンバー1とナンバー2と一緒に話しているのに違和感を感じてしまう。

 俺はヒメとアオイを見た。
 本当に2人とも美人だよな。
 
 ヒメがきゅうを撫でている。

「……きゅうか」
「どうしたの?」

「代償できゅうが消えたりしないのかな?」
「だ、大丈夫よ!」

「ハヤト、気にしても結果は変わらないわ。考えても未来は変わらないのよ」

 言っている事は分かる。
 コントロールできない事を考えるより、自分で変えられる部分を考えた方が効果的だ。

 でも、『代償』って聞くと怖く感じる。

 パーティーが終わって、

 日付が変わると、

 代償が始まる。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】俺のセフレが幼なじみなんですが?

おもち
恋愛
アプリで知り合った女の子。初対面の彼女は予想より断然可愛かった。事前に取り決めていたとおり、2人は恋愛NGの都合の良い関係(セフレ)になる。何回か関係を続け、ある日、彼女の家まで送ると……、その家は、見覚えのある家だった。 『え、ここ、幼馴染の家なんだけど……?』 ※他サイトでも投稿しています。2サイト計60万PV作品です。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。 ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。 ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。 この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。 一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。 女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。 あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね? あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ! あいつの管理を変えないと世界が滅びる! ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ! ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。 念のためR15にしてます。 カクヨムにも先行投稿中

俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした

宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。 聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。 「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」 イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。 「……どうしたんだ、イリス?」 アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。 だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。 そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。 「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」 女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...