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第92話

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 俺達はダンジョンの4階でキャンプをした。
 トレイン娘には早めに眠って貰った。

 座って焚火を見ると落ち着く。
 俺の横にファルナが座った。

「ハヤト、感謝していますのよ」
「ん?いきなりどうしたんだ?」

「ハヤトには何度も助けられましたわ。助けられた積み重ねのおかげでみんな生きていますわ。もし、大きな代償がハヤトを襲っても、今度はわたくし達がハヤトを助けますわ」

「俺は、ファルナが王になった方がこの世界で生きやすくなると思ってやったんだ。自分の為でもあるんだ」
「ですが、その事でわたくし達は救われていますわ。そして、予感がするのですわ」

「予感?」
「ハヤトが助けて育てたこの騎士団は、未来の種になると。ハヤトの活躍によって未来を変えると思っていますのよ」

「ヒメやアオイ、他のクラスメートも助けになっている」

「そうですわね。そしてこの世界の人間にも助けられましたわ。
 ですが一番助けて貰ったのはハヤトですのよ。

 アサルトボアのボスから団員を救い、スティンガーの危機から救い、ダミーファックもエクスファックも4昇天もハヤトがいなければ終わっていましたわ」

 俺はファルナの話の途中で横を向いた。

「どうしましたの?」
「教会、いや、善意の国民か」

「それでいい。余計な口は命を失う。失言の無いようにな」

 教会騎士団と思われる男が現れた。

「こちらの現状把握ですの?」
「それもあるが、こちらからも情報を出そう。アルナは今の所ダンジョンの9階には降りていない。アサヒ率いる勇者騎士団は地道にアルナ兵を奴隷から解放している。大体日に10人程度解放しているようだ。アルナに対するレジスタンスは効果が薄い。こちらの情報はそんな所だ。ファルナ騎士団はどうなっている?」

「今の所、騎士団とメイドを含めて129名にメンバーが増えましたわ。今は団員とメイド全員のレベル上げに苦戦していますのよ。時間があればレベルを上げてアルナに対抗できるようになりますわ。もし、転移者の代償が大きくなければ、もっと早くレベルを上げられますわね」

「うむ、転移者の代償の程度次第か」
「そう、ですわね」

「いつまでキャンプを続ける予定だ?」
「冬の月の90日の途中までですわね」
「分かった。言っておくが善意の国民は基本手を出さない。自分達で解決してくれ」

「ま、待ってくれ。セイコウコウボウならアルナを簡単に倒せるんじゃないのか?」
「セイコウコウボウ様だ」
「すまない。セイコウコウボウ様のお力を借りることは出来ないだろうか?」

「セイコウコウボウ様は人に何か言われる事を嫌う。運が悪ければ言った瞬間に殴られる。動いてくださるとは思わぬことだ」
「分かった」

 セイコウコウボウは動かない。

 アサヒの勇者騎士団は決定打にならない。

 レジスタンスは戦えない国民が多い。
 戦力不足なんだろう。

 都合のいい様にはいかないか。

「油断せず必死で強くなることだな」

 教会騎士団の男が帰っていく。

「ハヤト、そろそろ休むのですわ」
「そうだな」

 俺はその日早めに休んだ。



【王国歴999年冬の月89日】

 目覚めると、体の調子が昨日よりいい。
 まだ絶好調とはいかないけど、不調が改善しつつある。

 テントの外に出るとアオイがいた。
 アオイの顔を見ると、昨日よりは調子が良さそうだ。

「おはよう、昨日より調子は良さそうだな」
「そうね、調子がよくなったのは私とハヤトくらいじゃないかしら?」

 皆が遅れて起きてくる。

 全員調子は悪そうだ。

 トレイン娘は昨日すでに疲れていた。
 エリスは皆の紋章装備を作っていたし、ヒメはポーションを作っていた。

 シスターちゃんは回復魔法を使わなくても儀式のスキルで団員をジョブチェンジして魔力をいつも使い果たしている。

 ファルナは夜遅くまで騎士団の管理をしていた。
 当然他の者も疲れている。
 だが、俺はそんなみんなに言った。

「全員で5階に上がろう」

 皆嫌がるだろう。
 でも、アルナの危機に備えてレベルを上げた方が安全だ。

「そうですわね。アルナの危機を考えれば、そうした方が安全ですわ」

 以外にもファルナはすぐに納得した。
 よく考えたらファルナは実の姉をお姉さまではなく『アルナ』と呼ぶ。
 ゲームの時は気にしてなかったけど、ファルナはアルナのやばさを分かっているんだろう。

「行きましょう!どんどんレベルを上げますよ!」

 トレイン娘が明るい声で言った。

「私の魅力で魔物をおびき寄せますよ!」

 ファルナとトレイン娘のおかげで反対されずダンジョンの5階に進むことが出来た。


【ダンジョン5階】

 グオオオオオオオオオオオオオオオオ!!

 ゴブリンキングだ。

 しかも2体出て来てその内1体は仲間を呼ぶタイプだ。

 俺は仲間を呼ばない方のゴブリンキングにターゲットを絞った。

 アオイは先行してスキルを使って一気にゴブリンキングに迫る。

「デスモード!スケルトンパレード!カースウォー!魔眼開放!」

 俺は切り札を出し惜しみなく使って魔力ポーションを飲んだ。

 そしてゴブリンキングに向かって走る。
 アオイがアーツでゴブリンキングに連撃を加えつつ、俺のアオイでゴブリンキングを挟み撃ちにするように位置取りを変えた。

「月光!三日月!斬月!」

 ゴブリンキングはあっという間に倒れた。
 俺とアオイは仲間を呼ぶゴブリンキングの近くに走る。

「シャドーバインド!」

 デスモードの効果でシャドーバインドが拘束したゴブリンの内数体のシャドーバインドが爆発した。

 シャドーバインドの攻撃力が上がり、HPの少ない者は爆発して倒れるのだ。
 
 アオイと俺は一気にゴブリンキングの周りにいる雑魚と中ボスを倒していく。

 グオオオオオオオオオオオオ!
 いつも通り仲間を呼ぶゴブリンキングは倒さず仲間を呼ばせる。

「ボスは私がひきつけるわ!このまま仲間を呼ばせましょう!」

 俺は雑魚と中ボスにターゲットを絞った。

 そしてMPが切れるまでシャドーバインドを連発して雑魚の動きを封じつつ刀でゴブリンを倒していく。

 ゴブリンが集まらなくなるとアオイがゴブリンキングを倒した。
 俺は周りの魔物を全滅させる。

 周りを見ると、みんな疲れていた。

「休憩ですわ!」

 ファルナが大きい声で言った。
 ダンジョンの5階に来て1時間も経っていないんじゃないか?
 運よくすぐにレベルを上げられた……と思っているのは俺だけか。
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