89 / 179
第89話
しおりを挟む
ファルナが部屋を出て行く。
ファルナは騎士団の団長だ。
人には休むように言うが本人は忙しいのだ。
入れ替わりにヒメが帰って来る。
「あら、ヒメがこの部屋に入るなんて、ついにハヤトに抱かれる気になったのかしら?」
「アオイ、からかうな」
「ち、違うよ、ハヤト君に謝りたくて」
「ん?何もされてないぞ」
「私がお風呂に入ってきゅうが消えた時に怒っちゃったよね?」
「あ~あの事か」
「何回もイライラして冷たい態度を取ってしまったし」
「そうだったか?」
ヒメの人当たりはいい。
普通に考えて異世界に来て急に環境が変わって奴隷にされそうになったり死の危険が近くなって、ここまで温和なのはかなりおっとりしていると思う。
それにヒメはファルナ騎士団のポーション作りの中核メンバーだ。
魔力が切れると、体調が悪くなるけど、何度も魔力が切れるまでポーション作りの為に魔力を使っている。
「すぐにご飯を出せなかったし、ハヤト君にだけ負担を押し付けているし、私は前に出て戦わないし」
「待て待て!考えすぎだ。ヒメ、確かに俺は異世界に来てストレスを受けている。でも、それはヒメも同じだ。俺は、ヒメが疲れているのを知ってて、自分のレベル上げを優先している。ヒメが魔力が無くなるまでポーションを作って料理も作っている事は知っている。ジョブの役割があるだろ?俺は攻撃特化でヒメはサポート特化だ」
俺の言葉でヒメの表情が和らいだ気がする。
そうか、時間をかけなくても、一言感謝している事を伝えるだけでも良かったんだ。
俺は人付き合いが苦手だ。
何を言えばいいか分からなくなる。
でも、少しだけ考えてもいいのかもしれない。
1日5分でもいいんだ。
みんなに言葉をかける……何を言えばいいかが浮かばないけど。
「……ヒメ、きゅうを抱いてくれ。きゅうと一緒にいるだけでストレスが和らぐなら、俺がここにいる時だけは可愛がって欲しい」
言葉がこれしか出てこなかった。
でも、これでストレスが和らぐなら、言った方がいいと思った。
俺は、きゅうを手に乗せてヒメに渡そうとする。
「きゅう♪」
きゅうがヒメにジャンプして抱き着いた。
「ハヤト君、ありがとう」
ヒメがきゅうを撫でる。
きゅうがスキルなのか生き物なのか分からなくなってくる。
「きゅうは、生きているのか?」
「絶対生きてるよ。きゅうは命があるんだよ」
きゅうを見つめる。
生きているように見えてくる。
ただの固有スキルエフェクトに見えなくなってくる。
「ヒメ、休める時は、きゅうと遊んでゆっくり休んでくれ」
「……うん、そうする」
ヒメが部屋から出て行った。
「良かったの?ヒメを抱くことが出来たと思うのだけど?」
「いいんだ。ヒメが安定出来る環境にして、それでも一緒に寝て良いと思ってくれるならそうする」
「そろそろお風呂に入りたいわ。一緒に入る?」
「そうだな、入ろう」
「大分体力が戻ってきたようね」
「アオイもな」
俺とアオイは一緒にふろに入って、アオイの頭と髪を俺が洗った。
儀式の間に戻ると、エリスがいた。
「エリスもハヤトと一緒に眠りたいのかしら?」
エリスが無言で頷いた。
俺はアオイ・エリスと一緒に儀式の間に入る。
紋章装備を解除してベッドで横になる。
「エリス、疲れてないか?」
「大丈夫だよ」
「最近、紋章カードを作って忙しいだろ?」
「ハヤトより調子が悪い人はいないと思うよ」
「そうなのか」
「そうさ、ハヤトは無理をしすぎなんだよ。本来なら、数日ダンジョンに行ったら1日か2日休むんだよ。ハヤトのやり方は、短期的に結果を出す方法だよ」
そういえば、ゲームでは学園に通って、定期的に休日があったしダンジョンに行くのは午後だけだった。
どんなにスキルを強化して回復力を上げても、体に不調が出てくるから、その為の休日だったのか。
確かに長くゆっくり遠くまで行った方がいい。
俺のやり方は短期で結果を出すための火事場の馬鹿力のような行為だった。
周りの状況が落ち着いたら、ゆっくり進むのもいいかもしれない。
「ハヤト、しないのかしら?」
アオイが俺に抱きついて体を撫でる。
エリスも俺の腕に絡みついてくる。
俺は朝まで3人で過ごした。
ファルナは騎士団の団長だ。
人には休むように言うが本人は忙しいのだ。
入れ替わりにヒメが帰って来る。
「あら、ヒメがこの部屋に入るなんて、ついにハヤトに抱かれる気になったのかしら?」
「アオイ、からかうな」
「ち、違うよ、ハヤト君に謝りたくて」
「ん?何もされてないぞ」
「私がお風呂に入ってきゅうが消えた時に怒っちゃったよね?」
「あ~あの事か」
「何回もイライラして冷たい態度を取ってしまったし」
「そうだったか?」
ヒメの人当たりはいい。
普通に考えて異世界に来て急に環境が変わって奴隷にされそうになったり死の危険が近くなって、ここまで温和なのはかなりおっとりしていると思う。
それにヒメはファルナ騎士団のポーション作りの中核メンバーだ。
魔力が切れると、体調が悪くなるけど、何度も魔力が切れるまでポーション作りの為に魔力を使っている。
「すぐにご飯を出せなかったし、ハヤト君にだけ負担を押し付けているし、私は前に出て戦わないし」
「待て待て!考えすぎだ。ヒメ、確かに俺は異世界に来てストレスを受けている。でも、それはヒメも同じだ。俺は、ヒメが疲れているのを知ってて、自分のレベル上げを優先している。ヒメが魔力が無くなるまでポーションを作って料理も作っている事は知っている。ジョブの役割があるだろ?俺は攻撃特化でヒメはサポート特化だ」
俺の言葉でヒメの表情が和らいだ気がする。
そうか、時間をかけなくても、一言感謝している事を伝えるだけでも良かったんだ。
俺は人付き合いが苦手だ。
何を言えばいいか分からなくなる。
でも、少しだけ考えてもいいのかもしれない。
1日5分でもいいんだ。
みんなに言葉をかける……何を言えばいいかが浮かばないけど。
「……ヒメ、きゅうを抱いてくれ。きゅうと一緒にいるだけでストレスが和らぐなら、俺がここにいる時だけは可愛がって欲しい」
言葉がこれしか出てこなかった。
でも、これでストレスが和らぐなら、言った方がいいと思った。
俺は、きゅうを手に乗せてヒメに渡そうとする。
「きゅう♪」
きゅうがヒメにジャンプして抱き着いた。
「ハヤト君、ありがとう」
ヒメがきゅうを撫でる。
きゅうがスキルなのか生き物なのか分からなくなってくる。
「きゅうは、生きているのか?」
「絶対生きてるよ。きゅうは命があるんだよ」
きゅうを見つめる。
生きているように見えてくる。
ただの固有スキルエフェクトに見えなくなってくる。
「ヒメ、休める時は、きゅうと遊んでゆっくり休んでくれ」
「……うん、そうする」
ヒメが部屋から出て行った。
「良かったの?ヒメを抱くことが出来たと思うのだけど?」
「いいんだ。ヒメが安定出来る環境にして、それでも一緒に寝て良いと思ってくれるならそうする」
「そろそろお風呂に入りたいわ。一緒に入る?」
「そうだな、入ろう」
「大分体力が戻ってきたようね」
「アオイもな」
俺とアオイは一緒にふろに入って、アオイの頭と髪を俺が洗った。
儀式の間に戻ると、エリスがいた。
「エリスもハヤトと一緒に眠りたいのかしら?」
エリスが無言で頷いた。
俺はアオイ・エリスと一緒に儀式の間に入る。
紋章装備を解除してベッドで横になる。
「エリス、疲れてないか?」
「大丈夫だよ」
「最近、紋章カードを作って忙しいだろ?」
「ハヤトより調子が悪い人はいないと思うよ」
「そうなのか」
「そうさ、ハヤトは無理をしすぎなんだよ。本来なら、数日ダンジョンに行ったら1日か2日休むんだよ。ハヤトのやり方は、短期的に結果を出す方法だよ」
そういえば、ゲームでは学園に通って、定期的に休日があったしダンジョンに行くのは午後だけだった。
どんなにスキルを強化して回復力を上げても、体に不調が出てくるから、その為の休日だったのか。
確かに長くゆっくり遠くまで行った方がいい。
俺のやり方は短期で結果を出すための火事場の馬鹿力のような行為だった。
周りの状況が落ち着いたら、ゆっくり進むのもいいかもしれない。
「ハヤト、しないのかしら?」
アオイが俺に抱きついて体を撫でる。
エリスも俺の腕に絡みついてくる。
俺は朝まで3人で過ごした。
11
お気に入りに追加
2,686
あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)
チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。
主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。
ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。
しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。
その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。
「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」
これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと
恋愛
主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる