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第89話
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ファルナが部屋を出て行く。
ファルナは騎士団の団長だ。
人には休むように言うが本人は忙しいのだ。
入れ替わりにヒメが帰って来る。
「あら、ヒメがこの部屋に入るなんて、ついにハヤトに抱かれる気になったのかしら?」
「アオイ、からかうな」
「ち、違うよ、ハヤト君に謝りたくて」
「ん?何もされてないぞ」
「私がお風呂に入ってきゅうが消えた時に怒っちゃったよね?」
「あ~あの事か」
「何回もイライラして冷たい態度を取ってしまったし」
「そうだったか?」
ヒメの人当たりはいい。
普通に考えて異世界に来て急に環境が変わって奴隷にされそうになったり死の危険が近くなって、ここまで温和なのはかなりおっとりしていると思う。
それにヒメはファルナ騎士団のポーション作りの中核メンバーだ。
魔力が切れると、体調が悪くなるけど、何度も魔力が切れるまでポーション作りの為に魔力を使っている。
「すぐにご飯を出せなかったし、ハヤト君にだけ負担を押し付けているし、私は前に出て戦わないし」
「待て待て!考えすぎだ。ヒメ、確かに俺は異世界に来てストレスを受けている。でも、それはヒメも同じだ。俺は、ヒメが疲れているのを知ってて、自分のレベル上げを優先している。ヒメが魔力が無くなるまでポーションを作って料理も作っている事は知っている。ジョブの役割があるだろ?俺は攻撃特化でヒメはサポート特化だ」
俺の言葉でヒメの表情が和らいだ気がする。
そうか、時間をかけなくても、一言感謝している事を伝えるだけでも良かったんだ。
俺は人付き合いが苦手だ。
何を言えばいいか分からなくなる。
でも、少しだけ考えてもいいのかもしれない。
1日5分でもいいんだ。
みんなに言葉をかける……何を言えばいいかが浮かばないけど。
「……ヒメ、きゅうを抱いてくれ。きゅうと一緒にいるだけでストレスが和らぐなら、俺がここにいる時だけは可愛がって欲しい」
言葉がこれしか出てこなかった。
でも、これでストレスが和らぐなら、言った方がいいと思った。
俺は、きゅうを手に乗せてヒメに渡そうとする。
「きゅう♪」
きゅうがヒメにジャンプして抱き着いた。
「ハヤト君、ありがとう」
ヒメがきゅうを撫でる。
きゅうがスキルなのか生き物なのか分からなくなってくる。
「きゅうは、生きているのか?」
「絶対生きてるよ。きゅうは命があるんだよ」
きゅうを見つめる。
生きているように見えてくる。
ただの固有スキルエフェクトに見えなくなってくる。
「ヒメ、休める時は、きゅうと遊んでゆっくり休んでくれ」
「……うん、そうする」
ヒメが部屋から出て行った。
「良かったの?ヒメを抱くことが出来たと思うのだけど?」
「いいんだ。ヒメが安定出来る環境にして、それでも一緒に寝て良いと思ってくれるならそうする」
「そろそろお風呂に入りたいわ。一緒に入る?」
「そうだな、入ろう」
「大分体力が戻ってきたようね」
「アオイもな」
俺とアオイは一緒にふろに入って、アオイの頭と髪を俺が洗った。
儀式の間に戻ると、エリスがいた。
「エリスもハヤトと一緒に眠りたいのかしら?」
エリスが無言で頷いた。
俺はアオイ・エリスと一緒に儀式の間に入る。
紋章装備を解除してベッドで横になる。
「エリス、疲れてないか?」
「大丈夫だよ」
「最近、紋章カードを作って忙しいだろ?」
「ハヤトより調子が悪い人はいないと思うよ」
「そうなのか」
「そうさ、ハヤトは無理をしすぎなんだよ。本来なら、数日ダンジョンに行ったら1日か2日休むんだよ。ハヤトのやり方は、短期的に結果を出す方法だよ」
そういえば、ゲームでは学園に通って、定期的に休日があったしダンジョンに行くのは午後だけだった。
どんなにスキルを強化して回復力を上げても、体に不調が出てくるから、その為の休日だったのか。
確かに長くゆっくり遠くまで行った方がいい。
俺のやり方は短期で結果を出すための火事場の馬鹿力のような行為だった。
周りの状況が落ち着いたら、ゆっくり進むのもいいかもしれない。
「ハヤト、しないのかしら?」
アオイが俺に抱きついて体を撫でる。
エリスも俺の腕に絡みついてくる。
俺は朝まで3人で過ごした。
ファルナは騎士団の団長だ。
人には休むように言うが本人は忙しいのだ。
入れ替わりにヒメが帰って来る。
「あら、ヒメがこの部屋に入るなんて、ついにハヤトに抱かれる気になったのかしら?」
「アオイ、からかうな」
「ち、違うよ、ハヤト君に謝りたくて」
「ん?何もされてないぞ」
「私がお風呂に入ってきゅうが消えた時に怒っちゃったよね?」
「あ~あの事か」
「何回もイライラして冷たい態度を取ってしまったし」
「そうだったか?」
ヒメの人当たりはいい。
普通に考えて異世界に来て急に環境が変わって奴隷にされそうになったり死の危険が近くなって、ここまで温和なのはかなりおっとりしていると思う。
それにヒメはファルナ騎士団のポーション作りの中核メンバーだ。
魔力が切れると、体調が悪くなるけど、何度も魔力が切れるまでポーション作りの為に魔力を使っている。
「すぐにご飯を出せなかったし、ハヤト君にだけ負担を押し付けているし、私は前に出て戦わないし」
「待て待て!考えすぎだ。ヒメ、確かに俺は異世界に来てストレスを受けている。でも、それはヒメも同じだ。俺は、ヒメが疲れているのを知ってて、自分のレベル上げを優先している。ヒメが魔力が無くなるまでポーションを作って料理も作っている事は知っている。ジョブの役割があるだろ?俺は攻撃特化でヒメはサポート特化だ」
俺の言葉でヒメの表情が和らいだ気がする。
そうか、時間をかけなくても、一言感謝している事を伝えるだけでも良かったんだ。
俺は人付き合いが苦手だ。
何を言えばいいか分からなくなる。
でも、少しだけ考えてもいいのかもしれない。
1日5分でもいいんだ。
みんなに言葉をかける……何を言えばいいかが浮かばないけど。
「……ヒメ、きゅうを抱いてくれ。きゅうと一緒にいるだけでストレスが和らぐなら、俺がここにいる時だけは可愛がって欲しい」
言葉がこれしか出てこなかった。
でも、これでストレスが和らぐなら、言った方がいいと思った。
俺は、きゅうを手に乗せてヒメに渡そうとする。
「きゅう♪」
きゅうがヒメにジャンプして抱き着いた。
「ハヤト君、ありがとう」
ヒメがきゅうを撫でる。
きゅうがスキルなのか生き物なのか分からなくなってくる。
「きゅうは、生きているのか?」
「絶対生きてるよ。きゅうは命があるんだよ」
きゅうを見つめる。
生きているように見えてくる。
ただの固有スキルエフェクトに見えなくなってくる。
「ヒメ、休める時は、きゅうと遊んでゆっくり休んでくれ」
「……うん、そうする」
ヒメが部屋から出て行った。
「良かったの?ヒメを抱くことが出来たと思うのだけど?」
「いいんだ。ヒメが安定出来る環境にして、それでも一緒に寝て良いと思ってくれるならそうする」
「そろそろお風呂に入りたいわ。一緒に入る?」
「そうだな、入ろう」
「大分体力が戻ってきたようね」
「アオイもな」
俺とアオイは一緒にふろに入って、アオイの頭と髪を俺が洗った。
儀式の間に戻ると、エリスがいた。
「エリスもハヤトと一緒に眠りたいのかしら?」
エリスが無言で頷いた。
俺はアオイ・エリスと一緒に儀式の間に入る。
紋章装備を解除してベッドで横になる。
「エリス、疲れてないか?」
「大丈夫だよ」
「最近、紋章カードを作って忙しいだろ?」
「ハヤトより調子が悪い人はいないと思うよ」
「そうなのか」
「そうさ、ハヤトは無理をしすぎなんだよ。本来なら、数日ダンジョンに行ったら1日か2日休むんだよ。ハヤトのやり方は、短期的に結果を出す方法だよ」
そういえば、ゲームでは学園に通って、定期的に休日があったしダンジョンに行くのは午後だけだった。
どんなにスキルを強化して回復力を上げても、体に不調が出てくるから、その為の休日だったのか。
確かに長くゆっくり遠くまで行った方がいい。
俺のやり方は短期で結果を出すための火事場の馬鹿力のような行為だった。
周りの状況が落ち着いたら、ゆっくり進むのもいいかもしれない。
「ハヤト、しないのかしら?」
アオイが俺に抱きついて体を撫でる。
エリスも俺の腕に絡みついてくる。
俺は朝まで3人で過ごした。
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