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第75話

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「だらしないですわね。わたくしが行きますわ」

 4王女の次女、イルナが100人の騎士団と共に結界に入る。
 こいつは、次の敵だ。

 イルナは倒さなくていいエクスファック討伐に割り込んで、華麗にエクスファックを倒す。
 ゲームではエクスファックを超える敵であると印象付けるイベントだ。

 イルナ騎士団の力を実際に見られるチャンスだ。

「さあ、蹂躙しなさい!」

 騎士団が魔法攻撃と弓攻撃でエクスファックに集中砲火を放つ。

 エクスファックが黒いオーラをまとった。
 あっという間にHPを半分にした。
 強い!

「舐めるな!インフィニティウィップ!」

 騎士団の女性が殺された。

「え!なんでよ!」

 イルナが叫ぶ。

「ははははは!我が女を殺さないと思ったか!前はそれで殺された!同じ過ちは犯さん!」

 なん、だと!

 発情ポーションが効かない!

 女性を全力で殺しに来る!

 俺達が用意した策が潰された!

「インフィニティウィップ!」

 騎士団が倒されていく。

 イルナは結界の外に出ようと結界を叩く。

「開けなさい!開けるのです!」
「よそ見をするな!」

 エクスファックに余裕が出来ると、女を触手で捉え、異次元を発生させた。
 異次元に女性をほおりこみ、最後にイルナも飲み込まれた。

 そして空中に魔法陣が展開され、異次元からガイコツが落ちてくる。

「中々にたぎる。倒した者を蹂躙するのは最高の快楽だ!」

 エクスファックが両手を広げて笑う。
 あいつ、今までのエクスファックとは違う。

 長女のアルナが叫ぶ。

「ねえ!どうしたの?早く行きなさいよお!ねえ!ファルナが諦めるなら私が王になるわ!そしてファルナを殺してあげる!ねえ!どうするのお?早く行きなさいよお!今エクスファックが弱っていてチャンスじゃない!ねえ!行きなさいよお!」

 ファルナの兵が怯えている。
 アルナは本当にファルナを殺すだろう。
 そしてファルナの陣営もすべてを殺す。
 アルナはそういう人間だ。

「皆さん!どうか、力を貸して欲しいのですわ!」

 誰も前に出ない。

 俺は、一人前に出ていた。
 結界に入る。
 俺についてくるように、他の兵も結界の中に入っていく。
 そしてファルナも中に入った。


「最初は俺が前に出る!下がっていろ!」

 今の体が硬くなった兵士ではすぐ殺されて終わりだ。
 俺が希望を見せる必要がある。

「ねえ!あのきつねのお面は馬鹿なの?ねえ!」

 俺はきつねのお面を被り、髪の色を黒から茶髪に偽装していた。
 当然ステータスも偽装している。
 そしてきゅうのエフェクトも消している。

 俺だけがエクスファックに歩いて近づく。

 俺は刀を構えた。

「くっくっく!皆怯えている!たぎる!たぎるぞ!ああいう目の者を一方的にに蹂躙するのも一興!」

「お前、HPを半分以上削られているだろ。そんなに余裕があるのか?」
「何だそのお面は……男か。男はすぐ死ね」

 エクスファックの鞭攻撃が繰り出される。

 ガキン!

 エクスファックの鞭攻撃にカウンターを合わせた。

「貴様、調子に乗るな!」

 ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!
 
 すべての攻撃をカウンターで返す。

「ああ!このままでは!カウンターが失敗すればハヤトは死にます!皆さん!怯えず前に出るのです!」

 ファルナが叫ぶ。

「出るなあああ!!」

 俺はファルナの言葉に叫びで返した。

「な!なぜですか!」

 アオイがファルナの肩に手を乗せる。

「見ていなさい。あれがハヤトの本当の力よ。ハヤトは追い詰められないと本当の力が分かりにくいわ。よく見ていなさい。皆!後ろで待機しなさい!」

 俺は歩いて前に出る。

 すべての攻撃をカウンターで返す。
 ダミーファックより速い。
 でも、それだけだ。
 怖さはある。
 だが、アルナの方が怖い。

 こいつを倒す方が今は楽だ。
 時間がゆっくりと動く。
 景色の色が無くなり、エクスファックとの戦いだけに集中していた。
 
「貴様の武器は刀か、刀は同時攻撃に弱い!同時に鞭攻撃を放てばカウンターでは返せん!」

 同時に鞭攻撃が繰り出される。
 俺はステップで攻撃を避けた。
 そして前に出る。
 
 鞭攻撃が伸びきった瞬間に鞭を斬りつける。
 鋼のように高質化した鞭は斬ると金属のような手ごたえがあった。

 俺はエクスファックの刀の間合いに入った。
 あと一歩踏み込めば刀で斬れる。

「状態異常でなぶり殺しにする」

 エクスファックから黒い霧が発生する。
 これもダミーファックと同じだ。
 だが、その攻撃は隙が出来る。

 俺はエクスファックに向かって一歩踏み込む。
 そして斬りつけた。

「お前の攻撃は軽い!状態異常で死ね!」

 エクスファックは何度も状態異常の霧を発生させた。
 俺はそれを無視して何度も斬りつけた。

 俺は超人体のスキルを持っている。
 このスキルによって状態異常の耐性と回復力を併せ持つ。
『毒LV1を受けました』
『燃焼LV1を受けました』

「貴様!状態異常が効かないのか!」
「効いている!」

 何度もエクスファックを斬りつける。

『状態異常、燃焼・毒が解除されました』

「分かったぞ。お前に状態異常攻撃をしても意味が無い。我の奥義を見せる。インフィニティウィップ!」

ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

「し、信じられませんわ!全部カウンターで返したのですか!あの連撃を全部!近距離で!」

 ファルナは自分を抱きしめるように両手を組んで震えた。

「あれがハヤトの能力よ。ゾーンに入っているわね。ハヤトには、今の戦いはスローモーションに見えているはずよ」
「それはまさか!何年も戦いに生き残った者がたどり着く百戦錬磨しか到達できない領域ですわ!」

「ハヤトはそれに到達しているのよ」
「ですが、あんな近距離で戦われては、はらはらしますわ」

「ハヤトはあの距離が一番安全だと思っているのよ。刀の届く範囲が一番安心できるのね。相手のペースになる前に、こちらから攻撃を続けて追い詰めた方が安全なのよ」

 俺は何度も斬りつけた。
 何度も何度もカウンターを決め、同時攻撃が来るとステップで避ける。
 ただそれだけをエクスファックに張り付いて繰り返す。

「ぐおおおお!貴様!奥の手を、見せる。インフィニティウィップ・改!」
「やはり奥の手があったか!魔眼開放!」

 俺は闇魔導士の上級スキルを解放した。
 俺の目が赤く輝く。
 効果はターゲットにした相手の攻撃力・防御力・速度を13%減少させる。
 スキルポイントが足りず、まだLV3だが、この13%が生死を左右する。

 低レベルで運用できる上級スキルは【魔眼】だけだったのだ。
 スキルポイント不足でLVは中途半端だが、13%の能力低下はありがたい。

ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

 インフィニティウィップよりただ、少し早いだけの攻撃か。
 カースウォーを使うまでもない。
 次はどんな奥の手を隠し持っている?

 こいつのHPは高い。
 MPが無い状態で何か使われたらまずい!
 MPは温存する!
 魔眼はMPを消費しないのだ。

「インフィニティウィップ!」

 俺はすべてカウンターで返す。

 その後の連撃もすべてカウンターとステップと通常攻撃で俺が一方的にダメージを与え続けた。

『呪いLV1を受けました』

 魔眼は代償として呪いを蓄積する。
 MPの消費が無い分呪いの蓄積が早い。
 だが、

「リカバリー!」

 俺は呪いを解除した。

 そしてまた何度も斬る。

「インフィニティウィップ・改!」
「それはもう見た!」

ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!ガキン!

 すべての攻撃をカウンターで返し、エクスファックを何度も斬る。
 エクスファックが倒れ、魔石とドロップ品を吐き出した。

 俺はエクスファックの切り札を警戒し、MPを温存していた。
 だが、思っていたより、弱く感じた。

 ファルナが走って近づいてくる。
 俺に抱きつくのか!

 ファルナは俺の手を両手で握る。
 抱きつかないのか。

「ああ、心配しましたのよ!ケガはないですわね」

 そう言って俺の頭を撫でる。

「どうしましたの?」
「いや、何でもない。試練はクリアだよな?」

「そうですわ!ああ、何とお礼を言っていいか」

 ファルナは喜んで俺の手をぶんぶんと振った。
 お嬢様キャラのファルナがはしゃいでいた。


 
 ハヤトはお面を被って正体を隠した気になっていたが、ハヤトの正体はばれていた。
 ハヤトの名前を呼ばれる以前の問題でばれていたのだ。

 ハヤトがその事を知るのは少し後になってからだった。 
 


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