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第62話

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 うさぎ亭での大部屋会議が終わると、カインはファルナにアピールする。

「ぼ、僕が!ファルナの敵を撃つよ!」

 そう言って敵の斥候を倒しに行った。

「やはり、ハヤトの言葉でプライドを傷つけられたようですわね」
「俺が『カインでもスティンガーを倒せなかった』って言った瞬間に不機嫌な顔をしたからな」

「ですが、結果助かっていますわね」
「カインは斥候を叩いている、か」
「所でカインさんの、団員をたくさん倒したというのは、信頼できるのでしょうか?」

「いや、信頼するな。あいつはビッグマウスだ。強いけど、大げさな所がある」
「分かりましたわ」

「スティンガーはやっぱ来るよな?」
「来ますわね。恐らく夜に攻めて来るはずですわ。それがスティンガーのやり方ですわね」
「夜か。だけど、兵士は休める」

「そうですわね。間髪入れず攻められるよりはマシですわ」
「あ~!カインがスティンガーを倒してくれないかな?」
「あら、わたくしはハヤトに期待していますのよ?」

「俺?」
「ハヤトは自己評価が低すぎるのですわ。それと、深刻に考えすぎですのよ。ハヤトなら、スティンガーを討ち取れるかもしれませんわ」
「出来ればそういう状況にならない事を祈ろう」

「所で、そろそろ休んだら?」
「あら、それはこちらのセリフですわよ」

 俺とファルナは笑った。
 アオイが起きる。

「私に、異常解除の、ポーションを飲ませなさい」

 俺はためらう。
 スティンガーという悪魔を倒すために、悪魔契約を結ぶような怖さを感じた。
 後気のせいか?
 アオイが怒っているように見える。

「ハヤト、悩む暇はあるのかしら?私が居ないと、戦力は大幅にダウンするわ。ハヤトは殺されて、私たちは英雄騎士団に飼われるわ。私は捕まってスティンガーと剣聖ツヨシ、そしてカインにも女にされたわ」

「うーん」
「ヒメも、エリスも、トレイン娘も、シスターちゃんも、みんな、同じ目に合うわよ」

 ファルナがアオイに異常解除のポーションを飲ませた。

「選択肢はありませんのよ」
「そう、か。それしか、取れる手は無いか」

 余裕があればこいつを野に放つような真似をしたくなかった。

「ああ、体が、楽になるわ。後遺症は残っても、普通に動けそうね」

 アオイが笑う。
 その笑みは悪魔のように見えた。

「安心しなさい。ハヤトに危害は加えないわ」

 その言葉は、今は危害を加えないって意味だろ?
 今は安全、なのか?

 俺達はゆっくり休んだ。


 ◇



 真夜中になり英雄騎士団がやってきた。
 先頭にはスティンガーが歩き、その後ろに剣聖ツヨシも居た。

 俺達は外に出て英雄騎士団と対峙する。
 アオイとカインが近くに居るのが落ち着かない。

 エリス・ヒメ・トレイン娘・シスターちゃんはまとまって俺の後ろにいる。
 この4人は常に一緒に動いてもらうよう打ち合わせ済みだ。

「うむ、我から逃げず、対峙するか。もっとも、ダンジョンに逃げようが、上の階に行こうが関係ない!追い詰めて豚は殺し、ファルナの初物は貰う。おお、それに、アオイ、またベッドの上で懇願させてやる!ふははははは!うれしかろう!?」

「く!殺す!」

 アオイがつぶやく。

「ツヨシ!与えた9名で豚を狩れ!」
「へへへ!汗豚あああああ!お前の対策はしてある!もう逃げられねえぜ!」

「豚って言うなああ!!ぶっ殺すぞおおおお!!」

 相変わらず、みんな怖い。

 アオイはスティンガーと対峙する。
 カインはツヨシを含めた10名と対峙した。

 そして俺は、皆と一緒に残った英雄騎士団と闘う。
 俺はモブだ!
 カインがツヨシを倒して、アオイがスティンガーを倒し、俺達が英雄騎士団の残りを倒せば終わりだ。

 俺は兵を倒すために戦う!
 アオイとカイン、今だけは頑張ってくれ!
 
「女を奪い!男は殺せ!総員突撃いいいいいいいい!」
 
 スティンガーの号令で、戦いが始まった。


 


【カイン視点】

「ファイア!ファイア!ファイア!ファイア!い、1体だ!!」

 ファイアの連撃で兵士の1人が倒れる。

「お前らああ!散開して取り囲め!豚はただの豚だ!包囲されれば終わりだ!」
 
 ツヨシと8人の兵士が走って近づく。
 動きが早い。
 その中の2人は弓を撃ってくる。

「豚あああ!お前は魔力が無くなれば逃げる!もうわかってんだよ!ワンパターンが!取り囲めええ!あいつはビビりだ!敏捷の高い俺達で一気に追い詰めれば怖くねーよ!」

 くう!弓攻撃がきつい!
 しかもみんな動きが速い!
 ツヨシも動きが速くなっている!

「見ろよ!豚がビビってやがるぜ!ぎゃはははははは!これはただの豚狩りだ!豚を狩れえええええ!」

 僕は後ろに下がる。

「見ろよ!豚がブヒブヒ言いながら逃げていくぜ!」

 ツヨシのやつ!
 これは僕を殺すための挑発だ!
 ツヨシの策には乗らない!

 僕は全力で後ろに下がった。

「追え!全力で豚を追えええええええ!」

 僕は全力で逃げ出す。
 左肩に弓が刺さる。
 急いで抜いてポーションを飲んだ。

 弓の攻撃を避ける度に逃げる速度が遅くなる。
 意図的の僕の足を止めるように矢を放ってくる!

「取り囲め!よーし、一気に倒す!攻撃開始いいいいいい!」

 ツヨシを合わせた7人が一気に僕に迫る。
 まずい!

「この時を待っていたよ!ブレイブクロス!」

 僕も含めた7人に向けてアサヒの放った十字の斬撃が迫る。
 僕は咄嗟に避け、4人が直撃を食らった。

「ブレイブボム!」

 僕と7人が爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされる。

「カイン!今の内に立て直すんだ!ブレイブショット!」

 アサヒに弓攻撃を始めた弓兵がブレイブショットで1人倒された。
 ブレイブショットを撃ちながら弓兵に近づいたアサヒは、双剣を出現させて一気に残った弓兵を斬る。

「うああああ!ファイア!ファイア!ファイア!ファイア!」

 僕は倒れた兵士に攻撃を放つ。
 ツヨシ以外の敵をすべて倒した。

「残るはお前だけだあああ!!!!ファイア!ファイア!ファイア!ファイア!ファイア!ファイア!ファイア!はあ!はあ!ファイア!……」

 ツヨシがファイアを食らい、息を荒げる。
 ツヨシが、速くなってるいる!
 結構避けられた。

 魔力が、切れた。
 急いでマジックポーションを飲む。

「は、は、はははは!魔力切れか!俺の勝ちだ!斬り殺す!」

「僕を忘れていないかい?ファイア!ファイア!ファイア!ファイア!」

 アサヒはツヨシの死角から何度もファイアを撃ち込んだ。

「がは!」

 ツヨシが倒れる瞬間に、アサヒは双剣で何度も何度も斬りつけた。
 ツヨシは、もう生きていないのが分かった。

「はあ!はあ!はあ!大丈夫かい?」
「う、うん。だ、大丈夫だよ」
「ブレイブボムを当ててしまって、悪かったね。でも、最強のカインなら大丈夫だと思ったんだ。余裕が無くてこれしか手が無かったんだ」

「ぼ、僕は、さ、最強だからね。大丈夫だよ」
「そうか、良かった。まだ戦えるかい?このままじゃ、スティンガーにみんながやられてしまうよ。ファルナが連れ去られてしまう。僕は、少し休むよ」

 勇者アサヒは地面に腰を下ろした。
 ファルナ!
 そうだ!
 僕がファルナを守って、ファルナを貰うんだ!!

 僕は走ってスティンガーの元へ向かった。



【勇者アサヒ視点】

 汗豚が、精々頑張って僕の望み通りスティンガーを倒すんだ!
 豚はこれだから使いやすいよ。
 ツヨシは殺した。
 僕は、ゆっくり休憩しよう。


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