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第40話

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 トレイン娘は地面に寝ころびながら、空気を求めるように大きく呼吸する。
 スケルトンの効果が消えたのだ。

「はあ!はあ!んあ、温泉の時は、手加減していたんですね」
「そうか?」
「そうですよ。私の弱い所だけ、何度も何度も執拗に、凄すぎます」

「水浴びしよう。俺が洗おうか?」
「い、いえ、何とか、立てます」
「そうか」

 二人、無言で体を洗う。

 ゲームで、どこが弱いか知っているんだよなー。
 分かっていたら、そこを狙うだろ?

 少し体が濡れたまま2人は紋章装備を身にまとった。

「これからは別行動です」
「入り口まで送って行こうか?」
「大丈夫です。でも、たまにまた時間を取ってくださいね」
「分かった」
 
 俺達は手を振って別れた。

「スケルトン!」

 俺の左右に刀を持ったスケルトンが現れる。
 きゅうは俺の肩に乗る。
 俺はダンジョンの上に向かった。



【ダンジョン3階】

「まだ3階でちまちまやっているのかい?」
「アサヒか」

 アサヒが現れ、後ろには男の兵士が5人、黙ってこちらを見ていた。
 英雄騎士団か!

「君は本当にせこいね。いや、君にはそれが精一杯なんだろう。僕はこれから5階に行くんだ」

 アサヒは満足そうに俺を見て笑い、見下す。

「君は結局1人かい?化けの皮がはがれてヒメたちから相手にされなくなったのかい?」
「……」

 こいつ早くいかないかな?
 言葉を話すと長くなる。

 スケルトンの時間は1時間しか持たない。
 時間がもったいない。
 
 しかし運が悪い。
 こんなに何回も遭遇するって当たりすぎじゃね?
 あ、俺アサヒの話を聞いてないわ。
 飽きてる。
 
「次はスキル有りで君を倒してあげるよ」
「そうか」

 俺は適当に相槌を打った。
 
 勇者アサヒは満足したのか、上の階に続く魔法陣のある方向に向かって行った。
 英雄騎士団のレベルは高い。
 英雄騎士団のサポートを受けた勇者は強くなるだろう。

 もしレベルが上がり、勇者の固有スキルをLV5に上げ、スキが出た瞬間に一気にブレイブアーツを使われたら、俺はやられるかもしれない。

 トレイン娘とダンジョンでしている場合ではなかった。
 そういうのは後にしよう。
 今は強くなる。

 だが、また誘われたら、俺は誘惑に勝てるのか?
 トレイン娘のあの赤くなった顔。
 いつもの冗談を言うトレイン娘の顔とは全く違っていた。

 ……皆の前で宣言しよう。
 俺は数日ソロで頑張ると。
 そうしないと、トレイン娘の魅力に打ち勝つことは出来ない。
 トレイン娘のあの声、肌の感触、あの顔を思い出すと体が熱くなる。

「進む!奥に進む!」

 自分に言い聞かせるように言って3階ダンジョンの奥に進んだ。





 グオオオオオオオオオオオオオオオ!

 でかい猪が居る。
 アサルトボアのボス!
 しかも速攻で見つかった。

 厄介な仲間を呼ぶタイプか。
 もう呼んでるし。

「カースウォー!」

 カースウォーで攻撃力・防御力・速度を40%引き上げる。
 突撃して斬月のアーツスキルを叩きこむ。

 その後通常攻撃の連撃を加える。
 斬月のクールタイムは10秒。

 もう一回!

「斬月!」

 
 アサルトボアのボスが倒れた。
 ソロでも問題無く行ける!
 一人で簡単に倒せる。
 だが、これをやるとMPがほぼ無くなる。
 そして呪いの状態異常だ。
 
 その後遅れて雑魚が集まってきた。
 ある程度のターゲットをスケルトンが取る。

 ステップで素早く踏み位置取りをする。
 ステップは回避の為だけじゃなく、位置取りの為にも使う。
 囲まれて一斉に攻撃されるのを防ぎつつ1体ずつ斬りつける。

 刀はタイマンに強い武器だ。
 複数との戦いは得意ではない。
 
 その対策としてきゅうの能力値アップを俊敏につぎ込んだ。
 常に1対1を何度も高速で繰り返す。
 そして雑魚は必ず1撃で倒す。

 更に俊敏を上げる事で刀の攻撃力が上がり、動きが早くなり、スタミナも多くなる。
 

 カースウォーの効果が切れる前に一気に畳みかける!

「うおおおおおおお!!」


 辺りにアサルトボアの魔石とドロップ品が転がる。

「もう、余裕で倒せる、か」

 MPが無くなる課題はある。
 だが余裕で倒せる。

 カースウォー無しでもボスを倒せるんじゃね?

 さっきは雑魚を呼ぶタイプだった。
 安全の為に雑魚が集まる前に一気に畳みかけるようにカースウォーで倒した。

 だが、カースウォーは消費MPが多くて呪いを蓄積する。
 仲間がいて何度も状態異常解除の魔法をかけて貰えるなら呪いを気にせず戦える。
 だが、今はソロだ。

 呪いを受け、MPが底をついた状態でボスが数匹出て来て全個体が仲間を呼ぶタイプだったらまずい。
 そんな事はめったに起きないが、1回起きたら死ぬ可能性がある。

 次はカースウォーと斬月無しでボスを倒す。
 俺はボスを探すように徘徊した。
 もちろん途中で出てくる雑魚は全部倒す。


 居た。
 アサルトボアのボスだ。

 アサルトボアの後ろから飛び掛かり、通常攻撃を連発する。
 ボスがこっちに向きを変えてくる。

「振り向くのが遅い!おりゃああ!」

 何度も刀で斬る。
 ボスのHPが半分以下になり、体から黒い魔法の触手が出てくる。
 触手の攻撃をステップで避け攻撃を続ける。

 ボスが足で蹴り上げてくるがそれもステップで避けて張り付くように攻撃を続けた。

 アサルトボアが倒れ、ドロップ品と魔石を吐き出す。

「通常攻撃だけでも、ボスとタイマンなら余裕か」

 刀の耐久力が下がっている。
 刀は威力がそこそこあり連撃できるため高火力の近接武器だがほかにも
弱点がある。
 刀は耐久力が低いのだ。

 このゲームはこれだけやっていればいいという作りにはなっていない。
 例えば闇魔法は強力だが代償が大きい。
 斥候のスキルを全部取得すればスキル統合できるが簡単にスキル統合を出来ないようにスキルの数が多くなっている。
 聖魔法も同じ理由でスキル数が多い。
 
 そんなわけで耐久力の弱点を持つ刀は、ボス2体と大量の雑魚狩りで耐久力は減っている。

 しかも黒の刀は攻撃力は高いが耐久力が低い。

「黒装備の弱点だな」

 すぐにダンジョンの外に走った。



 俺はダンジョン外のベンチに座ってステータスを開く。
 武器の耐久力が減って外に出たが、スキルが気になるのだ。



 ハヤト 男
 レベル:1
 固有スキル きゅう:LV5
 ジョブ:サムライ
 体力:1+100  
 魔力:1+100  
 敏捷:7+300  
 技量:1+100  
 魅力:0+100 
 名声:0+100  
 スキル・闇魔法:LV10・全能力アップ:LV10・全自動回復:LV10・罠感知:LV10・敵感知:LV10・偽装:LV10・呪い耐性:LV10・刀:LV10・斬月:LV10・ステップ:LV10 
 武器 黒の刀:150 ・防具 黒の衣:100 
 斥候の紋章 ・耐性の紋章



 スキルポイントを大量に貯めていた。
 スキル枠10枠全部を使っている。

 スキル統合が必要だ。
 サムライのスキルを全部取る。

 刀スキルで刀の攻撃モーションスピードはアップした。
 斬月は近距離の高威力攻撃。

 その他に中距離に斬撃を飛ばす【三日月】、そして15秒間攻撃力をアップする【月光】を取得する。
 もちろんLV10で取る。

 これでも空きは1枠だけ。
 何を取るかは決めてある。




 ハヤト 男
 レベル:1
 固有スキル きゅう:LV5
 ジョブ:サムライ
 体力:1+100  
 魔力:1+100  
 敏捷:7+300  
 技量:1+100  
 魅力:0+100 
 名声:0+100  
 スキル・闇魔法:LV10・刀剣術:LV10【NEW!】・全能力アップ:LV10・全自動回復:LV10・罠感知:LV10・敵感知:LV10・偽装:LV10・呪い耐性:LV10・ステップ:LV10・カウンター:LV10【NEW!】 
 武器 黒の刀:150 ・防具 黒の衣:100 
 斥候の紋章 ・耐性の紋章



 サムライスキル4種を取り、剣術にスキル統合された。
 空いた枠にはカウンターを入れた。

 カウンターとステップ、そして武器スキルは近接ジョブの基本だ。
 俺は闇魔法を使うが闇魔法は近接戦闘で真価を発揮する。

 ステップとカウンターが無い状態で戦ったがしっくりこない。
 いや、イライラするの方が正しいか。
 思うように動けない感覚があった。

 ナイフを投げている内は雑魚狩りでそこまで気にならなかった。
 ほとんど雑魚としか戦わなかったからだ。

 だが刀はリーチが短く、魔物と張り付くように接近して戦う。
 ステップとカウンターがあれば思うように動けるはずだ。

 それにステップを使った時、その強さを実感している。
 俺の予想通りなら、カウンターもゲーム以上に強い。

 早く武器の耐久力を回復したい。
 うさぎ亭に帰ろう。



 うさぎ亭に着くと、エリスが出迎えた。
 エリスがもじもじしている。

「お、おかえりぃ」
「ただいま」

「あ、あの、明日教会まで付き合って欲しいんだ」
「いいけど、どういう用事なんだ?」
「ひ、避妊の紋章をつけたいんだよ」

「大事だよな、明日行こう」
「そ、それでね、プレゼントがあるんだ」

 エリスはリペアのカードを俺に手渡した。
 武具の耐久力を回復できるアイテムだ。
 使用に隙が出来る為戦闘中は使いにくいが、ダンジョンで武具の耐久力を回復できる。

「おお!ありがたく使わせてもらう」
「もし、欲しかったら、毎日1枚あげるよ」
「いいのか?作るのが大変だろ?ある程度金を出そう」

「いいよ、僕は紋章作りに戻るよ」

 エリスは恥ずかしがるように奥に戻って行こうとする。

「紋章のチャージを頼みたい」
「あ、ごめんね」

 エリスは赤くなりながら紋章をチャージして奥に戻っていく。
 料金の魔石を渡していないんだけど。
 いつもミスをしないエリスが今日は落ち着かない様子だ。

「エリス、チャージの料金と、追加で3枚リペアのカードを欲しい。その分だ」
「あ、ごめんね。うん、明日あげる1枚と追加で3枚のリペアカードだね。明日までに用意するよ」

「助かる」

 リペアのカードは高い。
 1枚10万魔石だ。
 金が無くなるが、明日は用事が終わったらダンジョンに籠るのだ。

 俺は気づかない振りをしていた。

 まず避妊の紋章を付けると1日体が熱くなる副作用がある。
 なのでよく夫婦で一緒に付けに行って教会で一夜を過ごす事もある。
 エリスが子供だったら良かったが今は年頃だ。
 絶対に副作用が出る。

 更にこのリペアのカード。
 ゲームではエリスと結ばれる事で発生するイベントだ。

 俺の体が熱くなる。
 俺は体の熱さを闘争本能に変えるように走ってダンジョンに向かった。
 エチエチ体験はしばらく封印すると決めたが、俺は我慢できるのか?
 いや、ここはゲームとは違う。
 エリスは不安で俺に付き添いをお願いしただけかもしれない。

 ぬか喜び、ダメ!絶対!






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