上 下
34 / 179

第34話

しおりを挟む
 激戦が繰り広げられ、ハヤトは勝利する。
 アサヒは安心してその日を終えるがアサヒが報いを受けたのは次の日であった。

 アサヒ以外皆死んだと思われるパーティーの中で唯一ダンジョンの外に生きて出た者が居た。
 剣聖、ツヨシだ。
 魔物からうまく切り抜け、生き延びたのだ。

「あのやろお!俺を助けず逃げやがった。あいつの嫌がる悪い噂をばら撒いてやる。へへへへへへ!あいつの嫌がる顔が目に浮かぶ。明日楽しみにしてろよお!アサヒいいいい!俺は優しいからよお。殺さないでおいてやるよおおお!ははははははははははははははは」





【勇者アサヒ視点】

 気持ちのいい朝だ。
 借金をしていた奴らは死んだ。

 魔物を押し付けたのは僕じゃない。
 剣聖だ。
 全部剣聖のせいだ。

 さて、朝食にしよう。
 さわやかな朝を楽しむ。
 奴らはもう居ない。

 コンコン!

「勇者アサヒ様」
「どうしたんだい?」
「お話を伺いたい件がありまして」

 女の声か。
 いい声をしている。
 きっと美人だ。

 僕はドアを開けた。
 そこには、剣聖ツヨシが居た。

「よお!アサヒ、俺を見捨てて殺そうとしたアサヒいいいいい!お前の噂はばら撒いといてやったぜ!ありがたく思えよ!昨日は噂をばら撒いて疲れたぜええええええ!ここは女が多くてすぐに噂は広まる!はははははははは!」
「な!ありもしない噂はやめてくれ!」

「この世界には嘘発見器の魔道具がある。すぐそこで話をしようや」
「おまえ達!グルだな!」

「はあ、何を言ってるんだ?俺は真実を話しただけだぜ?」
「ふ、ばかばかしい。勇者である僕が行く必要は無いよ。君の罠だろう?」

「やっぱりな!こいつ何か隠してるぜ!」
「僕は何も隠していない」

「魔道具に反応がありました。嘘をついています!!」
「ぎゃははははは!やっぱりな!」

「くくくくくくくく!そうか、そうだね、君の悪い行いも全部話をしようか!僕はそこまで悪くない。でも君はどうだろう?一緒に罪を償おうじゃないか!」
「てめえ!何言ってやがる!」
「例えば君が女を無理やり連れ込んで無理やり犯した事。何回あったか覚えているかい?僕は記憶力には自信があってね」


 こうして勇者アサヒと剣聖ツヨシは連行された。
 連行中も常にお互いの悪口をやめなかった。




【裁判所】

 その日の内に判決が決まった。

「えーそれでは判決を出します。
 勇者アサヒの罰は970万魔石の支払い命令。
 剣聖ツヨシの罰は860万魔石の支払い命令とします。

 なおこれは、かなり恵まれた裁判判決となります。

 みなさん、女神エロスティア様の加護を忘れず、毎日コツコツと魔物を狩るようにしてください」


 今ダンジョンの動きが活性化している。
 危ない者でもダンジョンに潜って魔物を討伐して貰った方が都合が良いのだ。
 その結果死んだら死んだで構わない。
 それが国の方針だ。



「なんで僕が剣聖より重い罪何だい!!狂っているよ!」

「いえ、本来の借金はどちらも1000万魔石です。ですが、剣聖ツヨシへの借金を差し引き、更にポーションなどの物資を没収した上での残った金額となります。それと、高級な宿などの贅沢施設は支払い金を払い終わるまで使用できません。これにて裁判は終わりです。さあ、今すぐ魔物を狩ってすぐ皆を守る事で償うのです。何度も言いますがこれはかなり恵まれた判決となります」


 裁判が終わった後も剣聖と勇者はお互いに喧嘩をし続けた。
 この日から剣聖と勇者は完全に決別した。

 お互いがソロで活動する。




 くそ、ひどい目に会った。
 街の掲示板を眺める。
 ん?ファルナのクエスト?

 ダンジョンを進んで魔物を間引く、か。
 僕にこそふさわしい。
 しかも今日出発だ。

 募集はとっくに終了しているが僕は勇者だ。
 僕が行けば喜んでみんなが受け入れる。

 すぐに向かおう。



 ダンジョンの前には昨日と同じでクラスメートが居た。
 昨日は居なかったハヤト・アオイ・汗豚も居る。
 僕は悪くない。
 悪いのは剣聖だ。
 ボスを押し付けたのは剣聖だ。

「昨日は剣聖ツヨシが魔物を押し付けて大変だったね。このクエスト、僕が参加してあげるよ。僕は悪くないけど、同じパーティーの剣聖がやった事だよ。苦労した君たちの為に、僕もクエストに参加しよう」

「あなたは不適格ですわ。お帰りください」

 ファルナに断られた。

「な、僕は勇者だぞ!」

「もう一度言いますわ。貴方は不適格ですわ。犯罪者はお帰りください!」

 メンバーにはクラスメートの女とハヤトも居り、しかも汗豚も居る。

 汗豚が前に出る。

「さ、さっきからうるさいよ。だ、黙って帰れよ」
「黙れ!僕に命令するな!」

 汗豚が僕に命令したのか!
 しかもクラスのみんなは僕をさげすんだ目で見る。

 汗豚の胸倉を掴もうとする。
 その瞬間僕は汗豚に投げ飛ばされた。

 僕は地面に転がる。

「ざ、ざこだね」

 何が起きた?
 どうして投げ飛ばされている?
 おかしい。
 おかしいおかしいおかしいおかしい!

 僕は怒りに震える。
 汗豚にやられた?
 僕が?

 剣聖ツヨシの使い走りをしていた底辺の汗豚に負けた?
 この僕が?

 クラス最上位の僕がクラスカースト最下位の汗豚に負けた?
 簡単に転がされた?

 闘技場でハヤトにやられた。
 そして剣聖には裁判でやられた。
 今は汗豚のカインに投げ飛ばされている。

 クラスに残っている男全員にやられている。
 レベルか?レベルが違うのか?

「か、カイン、君のレベルはいくつだい?」

 笑顔を作って聞く。

「ぷっふー!君よりははるかに高いよ」

 僕の笑顔が歪むのを感じた。
 顔が引きつって来る。

 皆ダンジョンに入っていった。
 悔しい。
 汗豚に負けた。

 この世界は、狂っている。

 この世界は間違っている。

 この世界はおかしい。








しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

エロゲーの悪役に転生した俺、なぜか正ヒロインに溺愛されてしまった件。そのヒロインがヤンデレストーカー化したんだが⁉

菊池 快晴
ファンタジー
入学式当日、学園の表札を見た瞬間、前世の記憶を取り戻した藤堂充《とうどうみつる》。 自分が好きだったゲームの中に転生していたことに気づくが、それも自身は超がつくほどの悪役だった。 さらに主人公とヒロインが初めて出会うイベントも無自覚に壊してしまう。 その後、破滅を回避しようと奮闘するが、その結果、ヒロインから溺愛されてしまうことに。 更にはモブ、先生、妹、校長先生!? ヤンデレ正ヒロインストーカー、不良ヤンキーギャル、限界女子オタク、個性あるキャラクターが登場。 これは悪役としてゲーム世界に転生した俺が、前世の知識と経験を生かして破滅の運命を回避し、幸せな青春を送る為に奮闘する物語である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...