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第23話

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【王国歴999年冬の月65日】

 俺は早起きした。
 早く寝すぎたのだ。

 昨日は色々あった。
 エクスファックと戦闘し、何とか勝利した。
 その後みんなと温泉に入れて、トレイン娘と……

 トレイン娘の雰囲気はトイレではいつもと違っていた。
 いつもの笑顔ではなく、切ない様な顔を、いや、考えるのは後でもできる。

 今はダンジョンだ。
 俺は夜明け前にダンジョンの1階に向かった。


 ダンジョンに着くと魔物を狩りながら考える。
 1階は死ぬような敵は出てこない。
 淡々と作業のように魔物を狩っていく。

 昨日の闘技場で、俺のステータスが見られていた。
 嫌だな。
 見られているのは気持ち悪い。
 スキルポイントを貯めて対策を取る。
 明るくなる頃には対策の為のスキルポイントは貯まる。

 トレイン娘のうさぎ肉の事も考えていつものラビット地帯で魔物を狩る。
 ラビットの中ボスが2体出て来た。

 数日前の俺なら危なかった。
 だが今は1人でも余裕だ。

 1体の中ボスにロングナイフを投げ込む。
 あっという間に中ボスの1体を倒すと、2体目も同じ要領で倒した。
 あっけない。

 うさぎ肉がたくさんドロップした。
 そろそろ次の紋章装備が欲しい。
 ダンジョンの上の階を目指すとこの装備だとすぐ武器の耐久力は無くなるだろう。

 なんせ装備しているのは初心者卒業セットだ。
 強くはない。
 やる事の順番を決めよう。

 ①エクスファックの報酬分配をする
 ②ステータスを見られる対策とダンジョン2階に行く用意
 ③装備の買い替え
 
 トレイン娘とのエチエチイベントも気になるが今は強くなりたい。
 強くなるのを優先するのだ!

 俺はうさぎ亭に戻った。



 うさぎ亭に戻ると、皆起きていた。

「皆、集まって欲しい。エクスファックのドロップ品を山分けしたい」
「あの時パーティーは組んでないよ。報酬は全部君のものだよ」
「そうですよ!」

「いや、皆をおとりにしてターゲットを取らせた。受け取って欲しい」

 俺はテーブルに魔石を4つに分ける。
 そして次の話に進める。

「エクスファックの粘液のドロップはどうする?」
「私に頂戴。私全部のスキルをポーションに振っているから。ポーションにして後で返すわ」
「ん?」
「え?」

 ヒメ、騙されてないか?
 ポーションを作る能力は大事だが、最初はスライムポーションで戦闘力をあげるのがポーション錬金術師のレベル上げの定石だ。

 ヒメは王に狙われていた。
 王にとってヒメは力を持たない方が都合が良かったのか?
 それしか考えられない。

「ヒメ、君は騙されているよ。君を奴隷にする為戦闘スキルを教えなかったんだ。まず最初に上げるのはスライムポーションなんだ」

 ヒメが汗をかく。

「ど、どうしよう、私」
「大丈夫だ。今日のクラス会議が終わったらレベル上げに行こう。皆でな」
「ごめんなさい」

 ヒメは俯いた。

「気にするな。それにポーションのスキルは無駄じゃない。スライムポーションのスキルを上げれば何の問題もないんだ」
「う、うん」

「ハヤト、今日はすっきりした顔をしているね」
「そうですね。まったく迷いがないです」
「ダンジョンでやる事の優先順位を考えていた。自分を強化してみんなを助けるのを優先する」


「温泉や私とのうさぎ狩りダンジョンは後回しですか?」
「そ、そうだな」

 俺は内心ドキドキした。
 またトイレやダンジョンでイキましょうにも聞こえる。

「そうだ、うさぎ肉も取って来た」
「ありがとうございます!みんなでシチューを食べて元気になりましょう!」

 トレイン娘の普通の言葉にドキドキしてしまう。
 何が元気になるのか考えてしまう。
 思春期か!?
 思春期だな、うん。

 俺達はとろとろのシチューをみんなで食べた。

 ヒメが俺の服を掴む。

「一緒にクラス会議に来て」

 ヒメのしぐさが可愛い。
 優しく服を掴む動作もいい。

「そうだな、そろそろ出発しよう」

 俺とヒメはクラス会議の場所に向かう。
 日時は今日の午前で、学校に登校していた頃を思い出す。

「昨日は色々ありがとね。それと、お風呂に入った時に怒ってごめん」

 ヒメ、日本の感覚だと女性が風呂に入っている時に俺が入って行ったら怒るのは当然だ。
 ヒメはこの世界の常識に流されつつある。
 そう感じた。

「気にするな」


 クラス会議の場所は宿屋の飲食スペースだった。
 皆がテーブルの椅子に座る。
 全員が俺とヒメの顔を見た。

「みんな、おはよ」
「おはよう」

 俺は短く言って席につく。
 クラス会議が始まった。

 
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