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第21話

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 俺はトレイン娘の今までの行動を考えてみた。

 エクスファックとの戦いでは口では『私狙われるほど魅力があるんです』と言っているが顔は赤く、肌を見られると恥ずかしがる。

 俺の恋人になる道を取らず、どこか諦めているような所がある。
 エリスとヒメに道を譲り、自分はただのトレイン娘で居ようとしているように見えた。

 トイレでは俺の求めに従うように必死だった。
 
 ゲームでトレイン娘のエロイベントは全部コンプした。
 トレイン娘はモブキャラの中でも人気でエチエチシーンが追加でアップデートされていた。

 このゲームはモブキャラでも人気のキャラが何人かいるのだ。

 俺はトレイン娘がうさぎに追われる前の背景を思い出す。
 うさぎ肉が足りなくなり、うさぎ亭の経営が苦しくなった。
 みんなの為に自分だけが危険を冒してダンジョンに行ってエチエチな目に会うトレイン娘を思い出す。

 無理してひどい目に会って救出されてもまた皆の為にうさぎ肉を取りに行く。
 そしてエチエチな目に会う。

 強引に見える部分もあったが、ゲームではうさぎ亭のみんなの為に必死だった。
 うさぎ肉の時は必死だったが、それ以外は気を使う。

 俺はトレイン娘の本当の姿をゲームで知っていた。
 思い出して来た。

 トレイン娘は俺が何を言っても気を使い続ける。
 トレイン娘は気を使い続け、変わらないだろう。
 そう思った。

 トレイン娘は本当にうっかりな部分もあるが、よく人を見ている。
 そういえば勇者アサヒの事も、一目見ただけで嫌っていた。
 一瞬で性格を見抜いていた。

 面白い事を言って場を盛り上げようとしていたのかもしれない。
 自分が笑われても皆を笑顔にしたいと願うトレイン娘を思い出した。
 あくまでゲームの内容としてだが。

「少しのぼせて疲れました。寝ながら大部屋の交渉をしましょう」

「大丈夫かい?」
「明日でもいいよ?」

「皆でここに寝ますか」

 ここを契約しよう。
 1人でもいい。
 皆住んでくれなくてもここで契約しよう。

「ヒメ、ここならアサヒと出会う心配は少ない。うさぎ肉のシチューの行列は出来るけど、裏から入ればみんなの視界に入りにくくなる」

 ここはうさぎ亭の裏の廊下を挟んだ離れのような場所になっている。
 廊下の扉を閉めれば独立した状態になる。
 更にうさぎ亭の立地も木に囲まれている。

「そうかも」
「それと、アサヒに見つかったら、ヒメはアレな目に会うと思う」
「あれな目?」

「体を犯されますよね?」

 トレイン娘がストレートに言った。
 トレイン娘はヒメの事を心配して問題に向き合おうとしているように見えた。
 ヒメの顔が引きつる。

「勇者アサヒは、僕も怖いと思ったよ」
「ヒメはお金を持っていますか?無ければハヤトさんに養ってもらいましょう!」

「無い、けど、でも、さっきも助けてもらってまた助けて貰ったら、返しきれなくなっちゃう」
「返すんじゃないんです。ただで住ませてもらえばいいんですよ。そうですね、
10日ほど試しに生活してみましょう。うまくいかなくなったら違う道を考えればいいだけですよ」

「ごめん、ハヤト君、お願い出来る?」
「喜んで」

「次はエリスですね。エリスもハヤトさんにお世話になりましょう。エリスが成長したら紋章スキルで返していくのがいいと思います!」
「エリスも10日間お世話になってくれ。俺が初めてこの世界に来て世話になったのはエリスだ。色々教えてくれたのもエリスだ」

「今なら3人素泊まり10泊で5万魔石ですが、お食事運搬サービスもついて10万魔石です。そしてこの大部屋はお風呂もあります!」
「安くなると思ったら高くなるのかよ!でも俺は1人でも借りるぞ。トレイン娘にも世話になったからな」

 実際ストレージのカードを貰っている。
 前どうして売らなかったか聞いたら売っても半値の50万魔石になるから俺に使って貰い、うさぎ肉を取ってきて欲しいと言っていた。

 俺は、少しだけど助けになろう。
 10万魔石をトレイン娘に渡した。

「これだと、エリスとヒメが泊まらないと食事とお部屋が無駄になりますね」
「サミ……トレイン娘、ハヤト、ありがとう」

 トレイン娘の名前はサミーか?
 もう突っ込まない事にしよう。

 こうして俺達3人はうさぎ亭の大部屋に住むことになった。


「少し元気になりました。食事を持ってきます。私も一緒に食べますね!」

 食べていいですか?ではなく食べますね!と決めるトレイン娘に俺達は笑った。
 人を見た上で嫌がらない事は頼るのがトレイン娘だ。


 テーブルで食事を囲みながら話す。

「気になっている事がある。ヒメのレベルっていくつなんだ?」
「10だよ?」

「う~ん」
「どうしたんだい?」

「いや、【魅力】の値が分からない。レベルが低くて明らかに魅力の値が低いエリスとヒメの魅力があるように感じた。今日のエクスファックとの戦いでも他の魅力の値が高そうな人間よりみんなが狙われていた」

「そうです!私も魅力はあるんですよ!」
「そうだな、で、魅力の値って当てにならないのか?」

 エリスとヒメが真っ赤になる。

「個人の持つ魅力を割り増しするのが魅力値です!私もエクスファックに選ばれましたね!」
「そこは喜んじゃ駄目なとこだろ?危なくエクスファックにあれな目に会わされる所だった」

 そうか、個人の持つルックスやモテ度はリアルと同じ。
 その上で魅力を上げる事で、魅力が割り増しされていくのか。

「俺魅力を上げたけど変化が分からない」
「変わってる、よ」
「変わってますよ!」
「気づいていないのかい!」

「ハヤトさん、まず目がきりっとするようになりました。そして肌や目に潤いが増してます。いつも鏡を見てませんね?」

「見てない」

 そういう事か。
 魅力の値が低い時は不健康な状態で魅力の値が上がれば健康的に見える、か。
 健康的な男女がモテるって話はたまに聞く。

「ハヤトさん、気づいてます?」
「何がだ?」

「さっきの『レベルが低くて明らかに魅力の値が低いエリスとヒメの魅力があるように感じた』の所です」

 トレイン娘は出来るだけ低い声で笑顔を消して言った。
 だが我慢できず少し笑いそうになっている。

「それ俺のマネ?」

 エリスとヒメの顔がさっきから赤い。

「告白みたいなことをしてしまった、のか?」 
「正解です!!」

「うあ!恥ずかしい事をした!まじでか!!」

「僕の事が、本当に好きなのかな?」
「そうだけど、恥ずかしい」

「私疲れたからそろそろ眠るね」

 ヒメは顔を隠すようにベッドに横になった。
 子供のように布団を被る。

 エリスの顔はゲームで好感度MAXの時と同じ顔になっている。
 いや、超えている。

「さすが、よ!モテモテ!」
「やめてくれ!」

 この日はトレイン娘も大部屋で寝た。
 トレイン娘とのトイレの件が脳裏によぎった。
 眠ろう。考えがまとまらない。

 今日は色々あった。
 本当に色々。











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