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第1話

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 高校の休憩時間。
 俺【黒野 速人】は机を枕に寝ていた。
 その時周りが騒がしくなる。
 起きて周りを見渡すと周りが黒く染まっていく。


 そして突然明るくなり視界が開ける。
 急にメガネの度が合わなくなりメガネを外した。
 目が良くなっているのか?
 辺りが良く見える。

 俺は城のような大部屋に居た。
 まるでゲームのようだ
 さっきまで教室に居たクラスメートも一緒にいる。

 俺達を取り囲むように兵士が槍を地面に立てて立っている。
 何故か兵士は全員女性でスカートを履いている。
 全員太ももが見える。
 さらにその奥には王冠をつけた太った男と、その横に4人の女性が顔を隠すようにヴェールを付けて立っていた。

 俺は恐怖を感じた。
 急に景色が変わり、武器を持った兵士に囲まれている。
 落ち着かず辺りを見回すが、考えがまとまらない。

 王冠を付けた太った男が声を上げる。

「ワシはこの国の王!ネトラだ!皆、ワシの言葉を分かる者は手をあげてくれ」

 クラスメートと一緒に俺は手を上げる。

「おお!異世界転移の召喚は成功のようだ!」

 クラスメートの男が声を上げる。

「ここは!!?どこですか!!?」
「うむ、今から説明をさせてもらう」

 改めてクラスメートの顔を見渡す。
 皆もきょろきょろと落ち着かないようだ。

 休憩時間だった為か違うクラスの者も居る。
 そして髪と瞳の色が皆変わっているようだ。
 黒目黒髪の者がいない。

「皆は異世界からこの世界に転移の魔法で呼び寄せた。理由はこの国にあるダンジョンから我が民を守る為、転移者の力が必要だったのだ。この中でリーダーは居るか?」

 多くの者が1人の男に目を向ける。
 源氏朝陽、このクラスメートのリーダーだ。
 こいつの性格は良くない。
 だが顔が良く、スポーツ万能、成績優秀で常に笑顔だ。
 女性人気は高い。

「ちょっと待ってくれないか?目の調子が悪いんだ」
「メガネを外すのだ」

 朝陽がメガネを外す。
「見えるよ!目が良くなっている!」

 あいつ、どこか抜けてるんだよな。
 普通急に度が合わなくなったらすぐメガネを外すだろ?

「何か気になることはあるか?」
「僕たちは元の世界に帰れますか?」

「残念だが、帰ることは出来ん。こちらの世界に召喚することは出来ても戻すことは出来ないのだ」

 クラスメートたちがざわつく。

「皆、静かにするんだ!今は現状把握が大事だ!僕と王の話を聞いて欲しい」
「さすがリーダーだ。これからの活躍が期待できそうだ」

「ダンジョンから民を守る為と言っていましたが、僕たちは普通の人間です」

「いや、転移者は召喚時に異界の門を渡る段階で固有スキル授かるのだ。通常の者なら1つの固有スキルしか授かることは出来んが、転移者は3つの固有スキルを授かる上、多くの場合授かる固有スキルは強力なのだ」

「そのスキルで戦えと?」
「そうだ。英雄の力で魔物から皆を守って欲しい。どうかこの通りじゃ」

 王は頭を下げた。

「わ、私達は戦った事が無いわ!」
「そうだ!俺達の世界は平和なんだ!1度も戦った事が無い!」

 クラスメートがまた騒ぎ出す。

「皆、静かにしてくれ!僕と王の話を見守って欲しいんだ!」
「こちらとしてはダンジョンで戦って欲しいと頼むしかない。召喚されるのは皆成人したばかりの18歳の若者だ。まだ若く心配もあるだろう。だが安心して欲しい。兵の護衛を付け、万全の体制で協力させてもらう。その状態で死ぬことは無い。決して死なせはしない」

 若いから心配もあるとか、そういう問題じゃないだろ?
 論点をすり替えていないか?
 30才でも40才でも急に異世界に召喚されて戦えと言われたら怖い。

 さっきから聞いていたがこの王は胡散臭い。
 いや、俺は恐怖で冷静じゃないかもしれない。
 俺は自分の心臓が早く動くのを感じた。
 深呼吸をする。

 もう少し話を聞こう。
 
「僕たちの固有スキルというのはどういった物なのでしょうか?」
「おお、そうじゃな。皆ステータスと唱えるのじゃ」

 俺は心の中で唱える。
 すると目の前にステータスが出て来た。
 俺がやっているゲームと同じ画面?
 まさかな、気のせいだ。

「皆の英雄としての力を教えて欲しいのだ。紙とペンを持った兵に自分の名前、そして固有スキル、更にジョブを言って欲しい」

「僕は、アサヒ、固有スキルは勇者でジョブも勇者だよ」

 兵士全員が驚き、周りが騒がしくなる。

「ま、待つのだ!今勇者と言ったか?」
「はい」
「素晴らしい!!勇者は限られた者しか持ちえない強力なレアスキルだ!固有スキルの枠を3枠使用する転移者だけが持ちうる英雄の力!」

 その後も王は驚いていく。

 賢者や剣聖などの固有スキル3枠を使うレアスキルを持つ者が現れる度、歓声が上がる。

「皆に戦ってもらえば、すぐに魔物の脅威を取り除くことが出来るだろう!残りは後2人か」

 兵士の書く文字も異世界の言葉も分かる。
 皆名前がカタカナに変わっていた。

 残ったのは俺と姫野 姫だ。
 名前は皆カタカナに変わっているから今はヒメか。
 この世界には漢字が無いからその影響だろう。

 ヒメはクラス、いや、学校の男子一番人気だ。

 アイドルよりも見た目がいい。
 と俺は思っている。
 髪と瞳の色は黒から亜麻色に変わったが似合っている。

「わ、私はヒメです。固有スキルは、料理・スライムアップ・ポーション強化の3つでポーション錬金術師です」

 王が微妙な顔をした。

「うーむ、微妙な固有スキルとジョブ」

 そう言った瞬間王はヒメの顔をじっくりと観察する。
 つま先から頭までなめまわすように見た後に言う。

「いや、サポートは必要だ!必要な人員と言える。うむ、必要だ」
「え、え??」
「才能あるポーション錬金術師が増えたと考えれば、悪くないだろう」

「ヒメ、気にしなくていいんだ。僕が養ってあげるよ。なんせ僕は勇者だからね」

 ヒメは引きつった顔でアサヒを見ていた。
 露骨に嫌がっている。
 分かりやすい。

「さて、最後に残ったのはそこの黒い者、早く言うのだ」

 俺の髪を見ると黒い。
 俺だけ髪色が変わっていないのか?

「俺はハヤトです。固有スキルは【訓練】で、ジョブは闇魔導士です」

「は?」
「え?」

「固有スキルの効果を言ってくれ」

「はい。固有スキル枠を3枠使用します。レベルアップ時にレベルを1に、リセットします。スキルポイントやステータスポイントを0にリセットします」

 スキルポイントはスキルの取得に必要なポイントだ。
 ステータスポイントは体力・魔力・敏捷などの能力値をアップさせるためのポイントとなる。

 通常のレベルアップでレベルが上がると、
 ステータスポイントを10ポイント分、
 スキルポイントを5ポイント取得できる。

 周りの兵士の顔が曇る。
 王の顔が怒りに歪んでいく。

「お前の固有スキルはレベルアップ時にレベルとスキルポイントをリセットする。つまり強くなることは出来ん!そしてジョブだが、闇魔導士は弱い!!魔法を使う事でデメリットとして呪いの効果を受け使い物にならんのだ!!!!お前はこの国の民より弱い!!強くなることも出来ん!!呪いだ!!これは祝福ではなくただの呪いだ!!!!!!」

 王は徐々に怒りを吐き出すように語気を強くした。
 王から権力を持った子供のような危うさを感じる。
 
 自分の身に危険を感じた。








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