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最強魔法

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 俺は魔王の撃ったブラックホーㇽの直撃を受けた。
 そしてそれは、俺を助ける為だとすぐに分かった。

 ブラックホールが消えた瞬間にセイラが竜の状態で空中から滑空し、俺を咥えて後ろに下げる。
 エムルが俺の傷を癒しつつ、口移しで俺にポーションを飲ませる。

 セイラが矢の雨から俺を防ぐように盾になり、竜化が解け倒れる。
 更にエムルが俺に覆いかぶさるようにしながら回復魔法を使い、エムルの背中には矢が何本も刺さっていく。

 遠くを見ると、ウォールとルナを先頭に、兵のみんなが我先にと前に出て行く。

 体制を立て直したバグズが兵を斬り倒していく。
 体が動かない。

 メギドも使えない。
 2発全部使い果たした。
 
 俺は、前もこんな感じで、死んだ。
 カムイだったころの記憶。

 フレア、フレアが、今のベリーか。
 俺が死んだせいで、魂が3つに割れたフレア。

 フレアの、いや、ベリーの優しい炎を感じる。

『&&%#&%#を発動します』

『失敗しました』

『再&%炎を発動します』

 ベリー、やめてくれ。
 不完全な状態で力を使ったら駄目だ。

『再生&¥%の炎を発動します』

『不完全な状態の発動により、完全回復に失敗しました』

 俺は泣いていた。

 メギドは使えない。
 
 体がまだ重い。

 関係ない。

 エムルが矢を受けて倒れている。
 ルナも倒れて兵に運ばれている。

 俺が前に出よう。

 俺はバグズに迫る。

「キャンプファイア!キャンプファイア!」

 2発のキャンプファイアが発動する。

「ウインんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!キングタイムううううううううううううううううううううううう!!」

 俺とバグズが打ち合う。

 俺は打ち負けて何度も吹き飛ばされるが剣の直撃は何とかクサナギで防ぐ。

 ミラクルアップの魔法で俺の動きをブーストするがキングタイムを使ったバグズには届かない。

 マリーが遠くから俺にダークヒールを使おうと構える。

「うおおおおおおおおおお!」

 ウォールが代わりに攻撃を受け、更に突撃してマリーを斬る。
 マリーの体が黒いオーラで包まれた。

「バグズ!てったいだ!!もうきんぐたいむがきれる!ころされるぞ!!!」

 グラブは叫ぶ。
 ブレイブは我先に逃げ出していた。

「ち!マリーをおとりにして引く!!次は殺すうううううううう!」

 マリー以外のゴブリンは撤退していった。

「あんたああああああ!私を殺したわねええええええええええええええええええ!!!」

 ウォールが杖で後ろに吹き飛ばされる!

「何てことしてくれるのよ!!!殺す!ころしてやるわああああああああ!」

 マリーに向かって矢の雨が降り注ぎ、マリーに矢が刺さる。
 だが時間を撒き戻したようにマリーの傷が治り矢が抜けていく。

「ダークヒールミスト!」

 広範囲に黒い闇の霧が広がる。
 霧に触れた者の体が腐って倒れていった。

 俺は風魔法でマリーを吹き飛ばす。

「サイクロン!サイクロン!サイクロン!」
「無駄よおおおお!私の体はすぐに治るのよ!!」

「全員撤退しろ!策がある」

 俺の叫びで全員が撤退を始める。

「あんた、私を吹き飛ばした程度で勝てると思ってんの?」

 俺は無言でマリーを斬りつけた。
 何度も斬りつけた。

「きゃはははははははは!あんた弱ってんじゃないの!もう死にかけてるのよねえ!この霧を吸ったら内側から腐ってあんたは死ぬのよ!!」

「そうか、そろそろ限界だ。じゃあな」

 俺はマリーから背を向けて逃げ去ろうとした。

「な、何逃げてんのよ!限界だじゃないわよ!」

 マリーが追ってくる。
 だがマリーの体に異変が起こった。
 マリーの指が崩れ始めたのだ。

「お前の活動限界だ」

「う、嘘よ!わ、私はどんな傷を受けても回復するのよ!崩れた指も治す、治す、治りなさいよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 マリーの体が崩れ、消えていった。
 俺は地面に座り込み、気を失った。



 ◇



【ウォール視点】

 俺は、倒れたウインを抱きかかえて、後方に下がった。
 メアに治療を頼んだが命に別状はないようだ。

 ルナ様も、エムルも、ウインもセイラもベッドで眠っている。
 主力のほとんどが力を尽くした。

 だが俺は無事。
 俺だけが無事だった。

 俺はウインに貰ったエクスカリバーを見つめる。

 ウインに聖剣を貰った時の事を思い出していた。



 俺はベリーが居なくなったウインに声をかけようとしたが、出来なかった。
 あまりにも悲しそうな顔を見ていられなかった。

 ルナ様からベリーがウインの中で眠っている事は聞いていた。
 だが、何を言えばいい?
 何も言えない。
 俺はその場を離れようとしたが、ウインの方から話しかけてきた。

「ウォール、久しぶりだな」
「ああ」
「ウォールに渡したいものがある」

 ウインは聖剣エクスカリバーを取り出した。
 この国から失われた聖剣。
 受け取れない。
 これは、ウインが持つべきものだ。

「受け取れない」

 だがウインは強引に聖剣を渡して来た。

「俺にはこれがある。クサナギ」

 ウインの手に一瞬で刀が握られていた。
 その刀を悲しそうに見つめる。
 そして刀を消すと、肩に乗ったきゅうを撫でる。

「俺には、力不足だ」
「ウォールには、守る力を持っていて欲しい。その守る力が聖剣だ」

 聖剣、俺の憧れ。
 だが、俺が持つのは違う。

 ウインは絶対に聖剣を受け取らなかった。
 決め手になったのがこの言葉だった。

「しばらく、一人になりたい」

 俺は何も言えなかった。

 俺はウインに託された聖剣を持ちながら多くの者を死なせた。

『みんなの壁になれる大きな男になれ』

 ゼスじいの言葉を思い出す。

 ゼスじい、俺は、弱いんだ。




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