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ビックピヨ

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 俺達は順調に魔物を倒し、また海岸に出た。
 居た!
 見つけた!

「エビだ!おい!エビだぞ!」
「そ、そうですわね」
 ルナの反応が悪い。
 スイーツの食材以外興味無しか。

 いや、燃え尽き症候群か。
 ハイペースでスイーツ素材を狩りすぎたのだ。

「倒しましょう」
 ベリーの反応はいいが、ルナの反応はとても悪い。
 ルナは確実にエビを倒していくが反応は普通だ。

 いや、俺だってエビとカニに反応しすぎている。
 ルナに責任はない。
 エビのボスがたくさん出て来てもエビを食べてもルナの反応はいま一つだった。

 いや、にこにこしてはいるんだよ。
 でもおしとやかというか、反応が薄いのだ。
 俺達は毎日エビを狩った。



 だが、ある日ルナの反応が変わった。
 豹変したと言っていい。
「あ、あれは!ビックぴよです!ビックぴよの産む卵は大きく、味が濃厚で貴重です。卵はお菓子作りには欠かせない材料です。手に入れるべきです!」
 卵が大きいけどめったに出回らないのか?ルナの言う通りにしよう。
 いつもは天使のようなルナだが、スイーツの事になると周りが見えなくなるのだ。


「手に入れるのは良いんだけど、卵ってビックぴよの腹の中にあるのか?それとも産んだのをもらうのか?」
「卵は産んだものをもらいましょう。ビックぴよの生息地中心に卵を守るための護衛がいるはずです。そこを強襲します!」

 俺達はまるで村を襲う前の盗賊のようだ。
 ルナは今輝いている。

「分かったけど、まずは周りのビックぴよをある程度倒そう。乱戦になったら卵を割ってしまいそうだ」
「分かりました。エッグ作戦を始めましょう」
 いつの間にかエッグ作戦になってるし。

 盗賊じゃなく軍隊だった。


 始めてみて気づいた。ビックぴよの群れが10万を超えていることに。
 俺たちはゲリラ戦を開始していた。
 東西南北あらゆる方向から強襲を行う。
 ビックぴよはすぐに仲間を呼ぶ。そしてビックぴよのレベルも高かった。
 もう10回以上突撃と撤退を繰り返していた。

 ルナは明らかに疲弊していたし、ベリーとエムルも疲れの色が見えた。
「ルナ?そろそろ休まないか?」
「今日はもう一回行きましょう」
「いや、休もう」

「もう一回行きましょう!」
 俺は全く疲れてないから良いんだけど。
「みんなには休んでてもらって俺がその間に数を減らしておこうか?」

 一番倒れそうなのはルナだ。
 ルナを休ませたい。

「ではエムルとベリーに休んでもらって、二人で行きましょう」
「僕は大丈夫だよ」
「私も大丈夫よ」

 一番疲れてるのはルナなんだけどな。
「わかった。この一回で今日は休みな!」
「分かりました!もう一回お願いします」
 こうしてビックぴよ狩りはしばらく続き、ついに俺たちは卵まで迫った。

「残念なお知らせがある。群れの中に100体以上のボスがいる。一番楽なのは、エムルにブラックホールで卵もろともつぶしてもらう事なんだけどどうだろ?」

「駄目です!」
 ルナは言った。
「それじゃ、俺がおびき出してエムルにブラックホールで倒してもらおう。ビックぴよ本体の素材は諦めることになるけど良いよな?」

「分かりましたわ」
「俺がおびき寄せるから、エムル、頼むぞ」
「分かったよ」

 ボスがばらけた場合を考えて、ベリーも構えておいて欲しい。
「わかったわ」
「頑張りますわ……




 俺は気配を消してビックぴよに近づいた。
 そして、
「魔物呼び!」

 ある程度集まったところで、
「挑発!」



 俺は逃げながら思った。
 あ、ダメだ。魔物がばらける。
「ブラックホール!……ブラックホール!」

 黒い球体にビックぴよが吸い込まれ、圧縮される。
「すまん。ばらけた!サイクロン!サイクロン!サイクロン!サイクロン!」
 俺は範囲魔法で出来るだけ敵を倒した。

「ぴいいいいいい!」
 まずい!ビックぴよが仲間を呼んだぞ!
「ベリー!ルナを守るぞ!」
「分かったわ!」

「うぉおおおお!挑発!」
「フレイムソード!」
 俺は必至でビックぴよを引き付け戦う。

 ベリーはフレイムソードとフレイムダンスのスキルを両方使う全力の攻めを見せた。




「……」

「みんな大丈夫かい?」
「卵は無事です」
「もうダメ!限界」
 ベリーとルナは倒れこんでいた。
 大量の卵を手に入れたが、国民全体にお菓子を振舞える量の卵が手に入った。
 1個の卵が大きいのに大量にゲットしたのだ。
 俺は何も言わずストレージに収納した。
「ここにキャンプハウスを建てる。今日は終わりだ。もう休め!」

 俺は倒れこんでいるルナとベリーの埃を払い、ログハウスのベッドに運ぶが、エムルが騒ぎ出す。


「僕もベッドまで運んでくれないかい?ルナとベリーだけずるいよ!」
「エムルだけは余裕があるだろ?レベルが高いし」
 3人の中でエムルのレベルが高いのだ。

「そういう問題じゃないんだよ!運んでもらうプレイに意味があるんだ!」

 プレイじゃないし。
 ……手早く済ませよう。
 俺はエムルを担いでベッドまで運ぼうとした。
 もちろんやる気は無く、適当に済ませる気満々だ。

「ウイン、君は分かっていないよ。外で僕が倒れている所からが始まりなんだ」
 エムルのこだわりは良く分からないが、エムルの機嫌は悪い。
 こいつの怒るポイントが分からない。

「分かった分かった」
 俺たちは外に戻った。

 エムルは寝ころびゴロゴロと自分の体に葉っぱやほこりをまとわせていた。
 俺は無言で埃を払い、ログハウス内のベッドに運んだ。

 俺のやる気の無い顔を見てエムルは悟ったような表情でしゃべりだす。
「ウイン、人生に無駄なことなんて一つもないんだ。」
 良く分からない名言のようなことを言ってくるが、俺はスルーした。
 
「みんな!今日は休むぞ!休息は大事だ!」
 このままだとルナが倒れる。
 休ませるのだ。

 それに、アーサー王国周辺の未開地はほぼ探索した。
 結局俺達は未開地の魔物を殲滅していたのだ。
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