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【勇者視点】勇者パーティーの失敗続き②

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 パーティーの解散だと!
 ベリーまで何を言っている!
 足並みを乱すなよ!

「解散は無い!!輪を乱すなよ!!みんなでうまくやる方法を考えるんだ!!」

「斥候と錬金術師か運び屋が必要だと思うけど、このパーティーに入りたがる人間がいるかしら?」

「君がそこまで言うなら、探してきても構わない。ただし斥候だけだ。ベリー。君がギルドに掛け合って探すんだ。選んだ候補から俺が最終的に選別しよう」

 ベリーまで怒りを露わにする。
 俺の邪魔をせず言う通りにしろよ!
「私は解散したいと言ったはずよ!」

「解散は無い!」


 ブレイブの異常な行動がベリーを激怒させているが、ブレイブは自分だけは優秀でまともな人間だと思っている。
 ベリーの脱退を裏で圧力をかけてでも阻止し、責任だけは周りに押し付ける。
 結局ブレイブは強引に話を押し通し、自分では動かない。






【ベリー視点】
 ベリーはギルドで斥候のメンバー候補の選定を形だけで済ませようとしたが、候補者が5人も集まってしまった。
 今の勇者パーティーの現状を伝え、諦めてもらおうと思ったが、勇者のイメージは、マスコミによって操作されているため、信じてもらえない。

 ブレイブは5人の候補の中から一番顔立ちが整った若い女性を選んだ。


 斥候のシーが加入し、再び勇者パーティーは魔王城を目指すが、
案の定問題が発生した。
ブレイブは自身の剣を抜いてじっと見た。
「剣の調子が悪いんだ」

 ベリーは何も言わず黙っていた。

「お前がベリーの意見を無視して錬金術師を入れなかったからだ!」



 ガーディーは決してベリーをかばったわけではない。
 ただ、ブレイブを非難する材料として利用しただけなのだ。


「おい!ガーディー!調子に乗るなよ。」

 ガーディーとブレイブはお互いをののしりあいながら道を進んだ。

 斥候のシーは耐えかねて口を開いた。
 ベリーの方からあらかじめ勇者パーティーの現状は聞かされていたが、意を決してしゃべろうとしているのが見えた。
「お互いに批判しあうのは良くないんじゃないかな」


「黙れ!下級ジョブが!」
「俺に意見するな!新入り風情が!」
 ブレイブとガーディーが即座に怒鳴る。

「シーはみんなの為を思って言ったのにひどいわ!」
 ベリーは耐えかねて口を開くが、一切効果が無かった。

 それからしばらくまともな会話は出来ない状態になった。

 シーはガーディーとブレイブの前では口を閉ざすようになった。

しかもその後マリーはシーの事を召使いのように扱う。
「あんた紅茶くらいちゃんと淹れなさいよ。無能の斥候なんだから役に立ちなさい。私と一緒にいるだけで光栄な事なんだからもっとまじめに働きなさいよ。後あんた、露出の高い服を着て、男に媚び売ってるんじゃないわよ、気持ち悪い。手を止めないで動かしなさいよ!のろまが」

 まるで小姑のようなマリーにシーは呆れる。
 もちろん私の言う事も聞かない。

 シーはベリー以外にまともに話せるものが居なくなる。


 さらに問題が起きた。

 マリーの魔力が無くなったのだ。
 正確には、マリーは魔力が大体3割以下になると絶対に魔法を使わなくなる。
 これはウインから聞いた話なのできっと合ってる。

 理由は体調が悪くなるからだ。
「撤退よ!馬鹿な計画のせいで私だけが苦労してるじゃない!!」

「みんながそこまで言うなら撤退しよう。」
 ブレイブは責任を人のせいにしつつ撤退を決めた。




 ◇



【撤退後】

「ベリー、勇者パーティーに加入させる錬金術師候補をギルドで集めてくるんだ。候補の中から俺が選ぶ」
「ブレイブ!その前に自分の失敗を認めろ!!」
 またブレイブとガーディーの喧嘩が始まった。

 ベリーは何も言わずにギルドへと向かおうとしたが、シーもついてきた。
「ベリーさん、勇者パーティーっていつもあんな感じなのかな?」
「うーん、昔斥候がいる時はまだ良かったんだけど、今はあんな感じね」

「その人って前言ってた。フェイクニュースでひどい目に合った人かな?」
「そうね」
「ベリーさんは勇者パーティーを辞めないのかな?」
「何度も辞めようとしたけど、ギルドが申請書を受け取らないのよ!」

「それってギルドが法を破ってる……のかな」
「そうね、きっとブレイブとギルドは裏でつながっているのよ!」



 ギルドに着くと、錬金術師の募集をお願いした。
 ただ今回は前よりももっと丁寧に勇者パーティーの現状を説明した。
 それでも候補者は減らない。
 ブレイブは候補の中から、一番美人のマインを勇者パーティーに入れた。





 今度は魔王城に向かう前に問題が起きた。

 錬金術師のマインが、ポーションの素材を集める為、みんなに協力を要請したが、ブレイブ・ガーディー・マリーが協力を断った。
 更にシーとマインの装備強化の要請も断ったのだ。



 ポーションの材料とシーとマインの装備素材集めの為、シー、ベリーが協力して素材を集めることになった。
 だが、皆笑顔だった。

 次の準備が終わるまで、ブレイブ・ガーディー・マリーと顔を合わせなくてすむ。


 素材集めに三か月以上かかるというマインの提案をブレイブ・ガーディー・マリーはあっさりと認めた。
 それほどパーティー内の不仲は深刻になっていた。

 マイン・シー・ベリーの3人での採取は実に充実しており、ついでにシーとマインのレベル上げも手伝った。





 だがまたもや問題が起きる。
 素材集め4か月目に差し掛かった頃、ギルドから勇者パーティーに合流するよう要請があったのだ。

 ブレイブ・ガーディー・マリーがギルド内で問題を多く起こすようになり、ギルド側としては、ベリーに勇者パーティーのおもりをさせたいという意図が透けて見えた。



 あの3人はギルドを脅し、よく問題を起こす。
 だがギルドは矢面に立ちたくない。
 ギルドも勇者パーティーと関わりたくないのだ。

 冒険者ギルドは、ブレイブ・マリー・ガーディーの問題行動を熟知していた。
だが、マスコミギルドによって持ち上げられている勇者パーティーに厳しい処分を下し、世論を敵に回すのを恐れた。

 しかも冒険者ギルド側で勇者パーティーをまともに相手をする労力を割きたくもない。
 結果ベリー達を盾のように使うという自らを守り、厄介払いをするような行動を選択したのだ。
 もちろんベリーのパーティー脱退は認めず、盾で居続けてほしい。
それが本音だった。

 そういう理由もあり、勇者パーティーには魔物を狩りに出かけて留守のままでいて欲しい思惑を持ったギルドが手を回した。
 皆勇者パーティーに合流する。




 マインが加わっての魔王城の攻略が始まった。
 メンバー同士でもめながらも、何とか魔王城までたどり着くが、
 女性陣4人の休憩をしたいという要望を無視して、魔王城に攻め入ることになったのだ。



 魔王城に入ってすぐに魔王が現れる。

「何の用だ?不法侵入には目をつぶる。早く帰ってくれ」

「やっとここまでたどり着いたんだ!たどり着きさえすれば俺が勝つんだ!俺一人で倒してやるよ!ブレイブタイム戦闘力2倍

 魔王がため息をついて魔法を使う。
「グラビティ!」

ブレイブは避ける事も出来ずに直撃を受け吹き飛ぶ。
「ぐおうああ!て、撤退だ!!!」

 ブレイブは我先にとブレイブモードを発動させたまま魔王城を後にした。
 ブレイブモードは一分しか発動できない。
 つまりブレイブは、戦闘開始から1分以内に魔王から逃げ出したのだ。
 残りのメンバーも後に続いて撤退する。





「勇者は惨めに惨敗か」
 ガーディーは嬉しそうに話した。

「違う!俺はベリー、マイン、シーを守ろうとしたんだ!!!」

「どういうことかな?」
「え?え?」
 新しく勇者パーティーに入ったシーとマインはブレイブの言動を理解できなかった。


「俺が素早く決断できていなければ、マインもシーも死んでいた!ほかのメンバーに攻撃が来る前に撤退を決めた」

 ベリーは我先に逃げ出したブレイブの失態には触れず、質問をした。
「魔王城の攻略はしばらくあきらめるという事で良いわね!?」
「そんなことは無い!俺一人なら倒せた!」

「私とマイン、それにシーはこのまま帰るけど、それで良いのね!ブレイブは残って魔王城を攻略するのね?」
「違う!俺はみんなを守る義務がある!町まで送り届ける!」
「いったん戻って私とマイン、シーはパーティーを脱退するってことで良いわよね!」

「それは認めない!」
「次は私たち抜きで魔王城に乗り込むんじゃないの?」
「俺一人なら倒せるが、みんなで協力して倒すことに意味があるんだ。だからみんなでまた魔王城に乗り込む」

「すぐに死ぬ私やマイン、シーを連れてもう一回ここに来るってこと?すぐに死ぬ私たちを連れて私たちを殺すの?それはおかしいわ!」
「俺はみんなを守る義務がある!町まで送り届ける!」
「だから!そうじゃなくて!!」

「もういいよ。いったん町に戻ろう。話がいつまでたっても終わらないよ」

 勇者ブレイブの異常な言動は、シーやマインも十分すぎるほど理解したのだった。
 ブレイブは自分が追い詰められるととにかく話を逸らすか人のせいにすることで乗り切ろうとする。
 結果パーティーの行動は改善されないまま、パーティーの仲が悪くなり続け、同じ失敗を何度も繰り返していた。

 パーティー内で協力する姿勢は一切なく、他者から奪う行動しか取らない。
 結果最初は勇者パーティーに協力的だった者も、どんどんブレイブ達と距離を取り、関わらないようになっていた。


 ベリーは小さな声でつぶやいた。
「ウイン……どこにいるのよ」

 ベリーは自分の首輪をそっと撫でた。
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