才能オールF冒険者の俺は遭難してバリア魔法が覚醒した~胸糞NTRされたヒロインが嫁になった上、むかつくあいつはざまあされる~

ぐうのすけ

文字の大きさ
上 下
47 / 48

第47話 市長の最後

しおりを挟む
 事件解決の前まで話はさかのぼる。

【A市市長・小池太一視点】

 ワシは落ち目の街から冒険者を奪い取る。

「A市で共に生きていきましょう!ここにいてはモンスターの被害を完全に防ぐことは無理でなのであります!命を賭けて戦った挙句、責任を押し付けるように責められ続け、苦しい思いを続ける事になるのです!」

 ワシはA市のメリットだけではなく、この街の問題点を指摘していく。
 コツは冒険者に寄り添う雰囲気を醸し出しつつここにいれば苦しい思いをする、そう訴えかける事で批判ではなく、心配をしているように見せかける事だ。

 スマホの電源を切っておく。
 スマホを見ているワシの顔は皆に取って邪悪に映るようだ。
 特に今は、帰ればユキナが待っている。
 この状況でスマホを見てはいけない。

 ユキナを犯す妄想が止まらなくなる。
 市長はイメージが大事なのだ。
 
 無事仕事が終わり、ホテルに泊まる。
 スマホの電源を入れると大量の着信とメッセージが送られていた。

「なんだ?何があった?」
『ユキナとカザネが、攫われました』
「何だと!すぐに奪い返せ!」
『今Aランクとジンが部下を引き連れて取り返しに向かっています』

「国にバレていないだろうな?」
『分かりません』
「なぜ確認しないのだ!無能どもがあああ」
『それが、攫った犯人をしばらく見失いまして』

 汗がダラダラと流れる。
 まずい!

 ドンドンドンドン!

「A市市長、小池太一、話を聞きたい!」

 ドンドンドンドン!

 ワシはスマホを切った。
 この会話を聞かれてはまずい。

 窓を見る。
 今はホテルの15階だ。
 窓を割って飛び降りれば生きたまま降りられるはずだ。
 魔力がワシを守ってくれる。
 異界発生前よりワシの体は丈夫になっておる。

 だがもし駄目だったらワシは……
 体が震える。

「小池太一!ドアを開けろ!」

 ドンドンドンドン!
 室内の電話が鳴った。

 出てはいけない。

 どうする?
 今どうなっている?
 スマホを回収されて調べられるのもまずい。

 鍵が開けられ、武装した集団が入って来た。

「小池太一、何故出てこなかった?」
「わ、ワシは忙しいのだ」

 武装した男のスマホが鳴った。

 男が連絡を取って話をしている。

「そうか、小池太一の家、うむ、地下室が発見されたか」
「な、何を言っている!」

「小池太一、逮捕する」
「話を聞くと言っていたではないか!」
「状況が変わった。証拠も押さえつつある」

「ぬ、濡れ衣だ」
「分かった。濡れ衣を晴らすために同行しろ!」
「わ、ワシはいかん!これは横暴だ!訴えてやる!」

 ワシは投げ飛ばされ、取り押さえられて、連行された。



 ◇



【次の日】

 ワシは1日拘束された。
 取り巻きもバラバラに取り調べを受けているようだ。

「いい加減に白状したらどうだ?」
「濡れ衣だ」

「もう証拠は揃っている」

「ワシは無実だ!ワシがいるおかげでA市は持っている!ワシがいなくなればA市は崩壊する!」
「もういい!連れていけ!お前らのような奴はまだまだたくさんいる。時間を取っていてはキリがない!」

 ワシは異界に連れて行かれ、そこから目隠しをされて輸送車で連行された。 
 目隠しを外され、丘の上で降ろされた。

「なぜここで降ろした!」
「お前は最前線送りが決まった」
「こんなことは許されん!最前線は死刑と一緒だ!ワシは冒険者ではない!武器はどこだ!防具は!?これではただの人殺しだ!」

「理解が早くて助かる」
「バカな!こんなことは許されない!法を歪めている!」

 ワシは丘の上から投げ飛ばされた。
 斜面を転がる。

「次も投げ落とせ!」

 ワシと一緒に連行された取り巻きも斜面に投げ飛ばされた。

「戻ってくるようなら発砲する!死にたくなければ走れ!煙が上がっている方向に人がいる!」

 取り巻きはワシを無視して煙が上がる方向に走り出す。

「待て!どこに行く!ワシを置いていくなあああ!!!」

 ワシの周りにスライムが集まって来た。

「スライムはタヌキをターゲットにした!今がチャンスだ!」
「タヌキがおとりになっている内に逃げるぞ!」
「あいつはもう駄目だ!おとりになってくれて最後だけは役にたったぜ!」

 取り巻きが走り去っていった。

「待てえええええ!ワシが世話してやった!ワシのおかげでいい思いを出来たはずだ!」

 ワシが叫べば叫ぶほどモンスターが集まって来る。

「ここは異界の最前線だ。国民の役に立ってモンスターを倒せ!出来なければ死ぬだけだ!」
「違法だ!これでは異界が発生する前の日本と変わらん!失われた30年と同じことを繰り返すのか!政治改革をしようとした途端にルールを守らずよく分からん理由で起業家を逮捕し、日本の発展を妨げてきた!」

「お前は何も発展させていない!お前が言うな!」

「何か都合の悪い事があると芸能人や政治家のスキャンダルをタイミングよくリークして国民の目を逸らす!ワシを国民の生贄にするな!」
「失われた30年と一緒にするな!お前はどう考えても悪人だ!」
「違う!ワシではない!ワシを逮捕する暇があったら悪人を逮捕しろ!」

「それはお前だ、この刑務所で反省しろ!」
「ここが!?違う!これは最前線の異界だ!実質死刑だ!ルールを歪めている!人権を何だと思っている!」
「お前が言うな!」

 スライムが集まって来る。

 ワシは横からスライムの攻撃を受けて転んだ。

「助けろ!助けんか!」

 起き上がろうとするとスライムに肩を攻撃されまた転んだ。

「わ、ワシはモンスターの生命力を吸って強くなっている!負けはせん!」

 スライムを殴った。
 だが避けられ倒せない。

「無理だ!少し冒険者の後ろをこそこそついていき楽をしてレベルを上げただけで簡単に強くなれると思うな!スキルを磨いていないからスキルが育っていない!立ち回りを磨いていないから判断が悪い!」

「た、助けろおおお!」
「苦しい思いを人に押し付け、人を苦しめてきた罰だ!お前はスライムすら倒せない!」
「助けろおおお!武器いいいいいいい!武器をよこせええええええ!」
「助かりたければ煙の方まで走れ!錬金術師の罪人もいる!生きていれば武器を作って貰え!」

 後ろからスライムに攻撃された。
 起き上がろうとするとまたスライムに攻撃された。
 スライムに囲まれ、ワシは何度も攻撃を受けていく。

「助けろ!ワシは市長だ!特別な人間なのだ!家畜とは違う!ワシは選ばれたぐぼおおおお!」

 丘の上を見ると輸送車が離れて行く。
 その後、小池太一を見た者は、誰もいない。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

月額ダンジョン~才能ナシからの最強~

山椒
ファンタジー
世界各地にダンジョンが出現して約三年。ダンジョンに一歩入ればステータスが与えられ冒険者の資格を与えられる。 だがその中にも能力を与えられる人がいた。与えられたものを才能アリと称され、何も与えられなかったものを才能ナシと呼ばれていた。 才能ナシでレベルアップのために必要な経験値すら膨大な男が飽きずに千体目のスライムを倒したことでダンジョン都市のカギを手に入れた。 面白いことが好きな男とダンジョン都市のシステムが噛み合ったことで最強になるお話。

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない

みずがめ
恋愛
 宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。  葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。  なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。  その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。  そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。  幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。  ……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ゲームにステータスが反映されるので、現実のダンジョンで必死にレベルアップして最強ゲーマーになります。―冒険者兼探索者で二つの世界を謳歌する―

椿紅颯
ファンタジー
あらすじ 旭加沢 暁はゲーマー兼探索者である。 暁は、待望の新作ゲームが発売されるのをずっと心待ちにしていた。 そしてその日がいよいよ訪れる。 わくわくドキドキでゲームを始めるも、悲しいことに現実世界で金欠だったことを思い出してしまう。 ゲーマーなら、お金なんて気にしないでゲームをしろよ、という葛藤を抱きつつもダンジョンで金策をすることに。 ちなみにダンジョンへ向かうのは初めてではなく、モンスターとの戦闘も慣れている。 しかも、アシスタントAIの力を借りることもでき、スムーズに狩りをすることが可能。 そんな日々を送っているのだから、学業は当然の如く怠っている。 テストの点数は赤点ギリギリ、授業中は授業に専念せずゲームのことばかり考え、友人を増やすこともない。 見事に学生の本分を忘れているわけだが、そんな暁にも話ができる人達はいる。 そして、暁を気に掛ける人物も。 一風変わった学園生活とゲーム世界、そしてダンジョンという舞台で様々な出来事を通して、今までなんとなく生きてきた暁の周りに変化が起きていく。 しかし、何でもかんでもゲーム至高、ゲーマー思考の暁は、何を考え、どう変わっていくのか――。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

処理中です...