上 下
10 / 48

第10話 勇也はフルボッコにされる

しおりを挟む
 俺の名は山田太郎。
 A市高校に通う男子生徒だ。
 見た目も成績もすべて普通だ。
 みんなからはよくモブと言われている。


 今から鬼道勇也の宿題を回収をしに行く。
 あいつに話しかけたくはない。

 理由はあいつの冷たすぎる性格だ。
 あいつの性格はかなり特殊で、自衛隊に引率してもらい異界の奥を探索した時、逃げ遅れた優也を見てあいつは笑っていた。
 優也に助けて貰ったのにだ!
 
 同じクラスメートが死んでいくのを見て普通笑うか?

 多少仲が悪くてもあんな顔をするか!?
 
 俺は鬼道勇也を信用していない。

 話しかけても答えではなく批判が返って来るし、とにかく人を下に見ている。
 自分に甘くて他人に厳しく、それでいて成績は良いからそれも厄介だ。
 勘違いして天狗状態になっている。
 俺は勇也が嫌いだ。

 だが、行くしかないか。
 俺は勇也に近づいた。

「鬼道、宿題のプリントを回収しに来た。出してくれ」

 鬼道は無視してゲームをしている。
 聞こえていないわけじゃない。
 聞こえているのに無視をしているのだ。

「鬼道、宿題のプリントを出してくれ」

 鬼道はさらに無視する。
 俺はその後3回同じ言葉を繰り返したが、鬼道は無視を続けた。



 鬼道が顔を上げる。

「山田、いつも思うんだけど、ファイターとして前に出る時はもっと回りを見てくれ」

 出たー!
 曖昧な駄目だし!
 しかも関係ないタイミングで俺の言った事には一切答えず批判か駄目だしがくるいつものやつうううううう!


「プリントを出してくれに対しての答えがそれか?」
「山田の立ち回りが悪い」

 俺は深呼吸をして感情を殺した。

「そうか、成績表でも判断の迷いは指摘されていた」

 お前と同じパーティーだと後ろから斬られそうで落ち着かなかったんだよ!
 先生にそれは話してある!
 
「気を付けてくれ」

 そう言って鬼道はゲームに目を戻し、俺が何度も話しかけても無視し続けた。
 鬼道の奴……

 本当に気色悪い。

 感情を込めるな。
 あった事をそのまま先生に伝えてプリントの件は終了だ。
 先生も鬼道の性格はよく分かっている。

 先生に言いに行けば『そうか、分かった。すまなかったな』で終わる。
 俺は先生にあった事をそのまま連絡して用件を済ませた。

 

 冬休みが終わり、優也がいなくなった事で鬼道の向けられていた批判が他のクラスメートに移った。
 そのことで鬼道は更に嫌われていた。



 ◇



「午後の訓練は実戦だ!第三次モンスターパレードの発生により、特にスライムの被害が増えている!4人チームで行動してもらうが、鬼道、いつもパーティーメンバーへの批判が多いが、一人の方がやりやすいか?」

 先生の指摘を鬼道は勘違いして受け取った。
 気持ちの悪い笑みを浮かべてクラスメート全員をバカにするような目で見た。

「皆が俺の動きに合わせられない。いつも絶対にミスをしてくる」

 鬼道は自分が褒められたと思ったのか?
 どう考えても先生から注意されている。

「はあ~。そういう意味じゃないんだがなあ。鬼道、そこまで言うならソロでやった方がマシだと、そう言っているようなものだ」
「一人の方がうまく出来る」

「分かった!鬼道の強い要望に応える!鬼道のパーティーは他のパーティーに割り振る!ソロのモンスター狩りを体験してもらう!!」

 あ、先生は鬼道に失敗して痛い目に合ってもらう気だ。
 先生は完全に怒っている。
 鬼道を見ると不気味な笑顔を浮かべていた。

 気色悪い。



 パーティーを組むと言ってもクラスの皆でまとまって行動する。
 実質クラスメート全員でまとまって戦う事になる。
 だが、スライムの群れを発見するとみんなが鬼道から離れた。


 俺も鬼道から離れる。
 全員がジェスチャーを送って鬼道から距離を取った。

 スライムの数が多い、乱戦になるだろう。
 鬼道の近くにいると責任を押し付けるように文句や批判が飛んでくる。
 こちらの言い分は聞かず、質問には一切答えず、何に対しても文句と批判だけが返って来るのだ。

 鬼道に何か言われるとイライラしてペースが乱れ、ミスをしてまた文句を言われる悪循環に陥る。
 基本この繰り返しになってしまう。

 鬼道の周りには結界を張ったように人が寄り付かなくなった。

 当然スライムは鬼道を包囲した。
 鬼道の成績は良い。
 だが、口で言うほど鬼道が優秀なわけじゃない。
 自分がDランクな事をいつも自慢するが他にもDランクのクラスメートはいる。

 鬼道は自分に甘くて他人に厳しいのだ。


 スライムが鬼道の背中にタックルを食らわせた。
 そこで鬼道はバランスを崩し、バリアが解除された。

「バリア!くうう!」

 更に横からタックルを受けてバリアが解除される。

「バリア!」

 鬼道はペースを崩しつつスライムに攻撃され続け、奇声を上げる。

「ひぎいいい!あっがああ!」

 それでも俺達は鬼道から距離を取る。
 助けた瞬間に批判が飛んでくるからだ。

「援護しろよ!!」
「鬼道!ソロはきついか!?きついなら自分の間違いを認めろ!」

 鬼道は先生の問いかけに答えない。

「クラスの援護おおおおおおおおお!!」
「鬼道、ソロが無理なら謝って助けて貰え!!」

「援護しろよ!!」
「鬼道!ソロで戦う力が無いなら自分の判断ミスを認めろ!」
「何で俺ばかり戦っているんだ!!」
「みんな戦っている!鬼道、助けて欲しいなら自分のミスを認めて助けて貰え!それだけでいいんだ!!」

 先生と鬼道の話が全くかみ合わない。
 先生はミスを認めて謝ればそれで済ませようとしている。
 だが鬼道は先生の問いに一切答えず、自分のミスは一切認めず、人のせいにし続けた。



 鬼道がスライムを倒し終わると頭からダラダラと血を流す。
 モンスターを倒す事は出来たが鬼道は何度もスライムの攻撃を受けて血を流し、戦闘が終わるまでクラスメートに責任を押し付けるように叫び続けた。


「鬼道、何故みんなに謝って援護をお願いしなかった!?死にたいのか」
「問題無い。俺なら問題無く倒せる」

 鬼道は戦闘中と戦闘後で態度が豹変した。
 戦闘中はあれだけ無様に叫んでいた。
 だが戦闘が終わると『俺は余裕で倒した』そんな態度に変わった。

「さっきは散々叫んでいただろ!?」」

 鬼道は自分の事を把握できない。
 自分だけは特別だと思っている。

「それよりもクラスの動きが悪すぎる」
「鬼道、俺はなぜ謝って援護をお願いしなかったかと聞いている!ソロでやると言ったのは鬼道!お前だ!!」
「周りの動きが悪い」

「はあ~。実技授業は終わりだ。学校に帰る。皆にも言っておく。全員仲良くしろとは言わん。だが、人に喧嘩を売るな!誰からも助けて貰えなくなるぞ!先生からは以上だ!!」

 先生は怒っている。
 そして先生は鬼道を見て話していた。
 先生は、鬼道が早く卒業していなくなってほしいと、そうおもっているのが分かった。

 俺も早く高校を卒業して、鬼道と関わらずに生きていきたい。
 そう思った。

 でも、今日はいい気味だった。
 もっと痛い目に合わないと鬼道は変わらないだろう。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら弱いものまね士になったけど結局活躍した。それはいいとして、英雄になったら隣に住んでたエルフとベッドの上でファンタジーが始まった

ぐうのすけ
ファンタジー
会社帰り、俺は突然異世界に転生した。 転生した異世界は貴族屋敷……の隣にあるボロ屋の息子だった。 10才で弱いと言われるものまね士のジョブを授かるが、それでも俺は冒険者を目指す。 所で隣のメイドさん、俺をからかうの、やめてもらえますか? やめて貰えないと幼馴染のお嬢様が頬をぷっくりさせて睨んでくるんですけど? そう言えば俺をバカにしていたライダーはどんどんボロボロになっていくけど、生きておるのか? まあ、そんな事はどうでもいいんだけど、俺が英雄になった後隣に住んでいたエルフメイドがベッドの上では弱すぎる。

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

深刻な女神パワー不足によりチートスキルを貰えず転移した俺だが、そのおかげで敵からマークされなかった

ぐうのすけ
ファンタジー
日本の社会人として暮らす|大倉潤《おおくらじゅん》は女神に英雄【ジュン】として18才に若返り異世界に召喚される。 ジュンがチートスキルを持たず、他の転移者はチートスキルを保持している為、転移してすぐにジュンはパーティーを追放された。 ジュンは最弱ジョブの投資家でロクなスキルが無いと絶望するが【経験値投資】スキルは規格外の力を持っていた。 この力でレベルを上げつつ助けたみんなに感謝され、更に超絶美少女が俺の眷属になっていく。 一方俺を追放した勇者パーティーは横暴な態度で味方に嫌われ、素行の悪さから幸運値が下がり、敵にマークされる事で衰退していく。 女神から英雄の役目は世界を救う事で、どんな手を使っても構わないし人格は問わないと聞くが、ジュンは気づく。 あのゆるふわ女神の世界管理に問題があるんじゃね? あの女神の完璧な美貌と笑顔に騙されていたが、あいつの性格はゆるふわJKだ! あいつの管理を変えないと世界が滅びる! ゲームのように普通の動きをしたら駄目だ! ジュンは世界を救う為【深刻な女神力不足】の改善を進める。 念のためR15にしてます。 カクヨムにも先行投稿中

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。 遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。 「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。 「異世界転生に興味はありますか?」 こうして遊太は異世界転生を選択する。 異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。 「最弱なんだから努力は必要だよな!」 こうして雄太は修行を開始するのだが……

強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない

ぐうのすけ
ファンタジー
朝起きると美人予言者が俺を訪ねて来る。 「どうも、予言者です。あなたがダンジョンで配信をしないと日本人の半分近くが死にます。さあ、行きましょう」 そして俺は黒服マッチョに両脇を抱えられて黒塗りの車に乗せられ、日本に1つしかないダンジョンに移動する。 『ダンジョン配信の義務さえ果たせばハーレムをお約束します』 『ダンジョン配信の義務さえ果たせば一生お金の心配はいりません』 「いや、それより自由をください!!」 俺は進化して力を手に入れるが、その力にはトラップがあった。 「吸血鬼、だと!バンパイア=エロだと相場は決まっている!」

ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで日間・週間・月間総合1位獲得!ありがとうございます。 社畜として働き、いつものように寝て起きると、俺はゲーム『ブレイブクエストファンタジー』とよく似た世界のモブ『ゲット』に転生していた。俺は物語序盤で盗賊に襲われて死ぬ運命だ。しかも主人公のダストは俺を手下のようにこき使う。 「主人公にこき使われるのはもうごめんだ!死ぬのもごめんだ!俺がゲームのストーリーを覆してやる!」 幼いころから努力を続けていると、ゲームヒロインが俺に好意を寄せている? いや、気のせいだ。俺はしょせんモブ! 今は死亡フラグを解決する!そして次のステップに進む! 一方、同じく転生したダストは主人公キャラを利用して成り上がろうとするが、ダンジョンのお宝はすでに無く、仲間にするはずの美人キャラには見限られ、努力を嫌ったことでどんどん衰退していく。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...