ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

ぐうのすけ

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第99話

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 俺達が転移陣に乗りワープすると、そこには白い翼を持った天使のような女性がいた。
 多分天使だ。

「久しぶりの到達者ですね。私はこのダンジョンを管理する天使です」
「周りのみんなは?」

「同時に1人ずつ話を聞いていますよ」

 天使は皆と同時に話をする力があるのか?

「ここに来れば何かが手に入ると聞いたんだ」
「手に入ると言うより、世界の法則を少しだけ変える事が出来ます。それだけですよ」
「みんなの意見も聞いているんだよな?ここに来た人数分、8つの願いが叶うのか?」

「いえ、叶うのは1つの願いだけです。願いをイメージしてください」

 俺は、願いをイメージした。
 他のみんなの願いも混ざり合っていく。

 そう、アイデアが出なかったけど、俺がやりたいのはこういう事だ。


 ◇


 皆のアイデアが混ざり合い、新しいイメージが生まれ、形になっていった。
 話をしていないのにみんなの想いが伝わって来て、分かりにくい願いはシンプルな思いに集約されていった。

「祈りの時は終わりました。世界の法則を変える為には、時間がかかります」
「ああ、それでいい。この想いが形になるなら素晴らしい事だ」

「ふー、はい!決まっている儀式は終わりました。退屈なので話をしましょう」

 急に天使の言葉が砕けた感じになった。

「話か、でも天使は何でも出来そうだし話しても面白くないだろ?」
「世界を色々見る事は出来ますが退屈なんですよ。万年単位でここにいるんですよ?」
「あ、そうだ!俺とライターはどうしてこの世界に転生してきたんだ?」

「あー、それはただの偶然です。たまに魂が時空を飛び越えて交換されて定着する事があるんですよ。あっちの世界とこっちの世界は無意識で繋がってますからね。たまに未来が見えたり、異世界が見えたりするんです」
「そう、なのか」

「そうなんです。ゲームのメインキャラになったのは思い入れの強い人間に乗り移りやすいからです」
「あれ?元あった人格の魂は元の俺の体と入れ替わったのか?」
「そうなりますね」

 急に複雑なあの世界に行ったら大変だろ。
 焚火とかして捕まらないか?

「大丈夫ですよ。魂が入れ替わる際にあなたの記憶を共有しています」
「それならよかった」

 天使は心が読めるのか?
 単に俺が分かりやすいだけなのかもしれない。

 そうか。
 俺は、いや、俺だけじゃない。
 皆がモブだったんだ。
 皆が選ばれた存在じゃない。

 俺は偶然ここにいるんだ。
 考えてみれば誰の元に生まれてどの親の元で生きるかは完全に運だ。
 元の世界と何も変わらない。

「魔王とゴールデンオークの特性も聞きたい」
「そうですね。魔王もゴールデンオークも文献通りの特性を持っています。昔それを教えたのは私ですから。あなたが気になっている部分だけ言いますね。魔王は力を使えば使うほど寿命が短くなり、特に変身能力を維持する事で大きく寿命は減っていきます。魔王の寿命が残り少なくなった合図は髪が真っ白になり、目が赤くなったタイミングですよ」

「強い力を使うほど一気に寿命を削る、か。ありがとう。聞きたいことは全部聞けた」

 天使がニコッと笑った。

「話をしましょう。聞いてくださいよ。天使って本当に暇なんですよ。その気になればずっと寝ないで起きている事も出来るんですよ?でもやる事無いじゃないですか?だから寝るんですよ。起きても何も食べなくても良くて体も綺麗なままなのでひたすら座ってるんですよ。異世界からゲームの情報を引っ張って来てやってもすぐ飽きちゃいますよね。まあやり続けるんですけど。あ、私一応ゲームのランカーで強いんですよ。暇ですから時間はあ有り余ってます!」

 その後天使はひたすら話始めた。

 長い。

 

 何時間経ったか分からない。
 でも聞こう。

 話を聞いていると天使は俺達より万能で、神にから命を受けた役目をひたすらこなしているらしい。

 試練を乗り越えた者の願いをかなえる使命。

 いつ来るか分からない者をひたすら待ち続ける苦行。

 人間なら寿命が無限にあっても心が壊れてしまうだろう。


 睡眠も食事も入浴も必要無く、それらを行うのは趣味らしい。
 俺はしばらくしてその場を後にすると、皆同時に転移陣から出てきた。

「帰ろう」

 皆が返事をして、俺達はダンジョンの外を目指す。



 ダンジョンから出た瞬間エムルが笑顔で俺に抱きついた。

「ゲット、君は忘れていないよね?今すぐ7日間高級宿屋で過ごすんだ。これは契約だよ」
「……分かっている」

 俺とエムルは高級宿屋に向かった。


 
 ◇



 エムルと7日過ごすと、次はアリシア・クレア・エステルと過ごした。



 ◇



 更に7日後、今度はダイヤが俺に相談を持ち掛けてきた。

「実は頼みがあるのだ」
「出来る事ならやるぞ」

「我の人見知りを直したいのだ」
「人見知りか、難しいな」

 ダイヤの人見知りはかなりひどい。
 色々考える必要があるだろう。

「やりたいことは決まっているのだ。今から高級宿屋でしばらく過ごして欲しい」
「そのくらいなら大丈夫だ」

 俺とダイヤは高級宿屋に向かった。



 部屋を7日間予約し、2人で部屋に入ると、ダイヤが土魔法を解除した。

「だ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫ですぅ」

 ダイヤの落ち着きが無くなった。
 人見知りを克服するために無理をしているのだろう。

 ダイヤの髪は光の反射で7色に輝き、目は宝石のダイヤのように輝いている。
 今は少し涙目なせいか余計にそう感じる。
 長い髪をサイドテールでまとめ、真っ白い肌に黒いビキニを付けている。
 土魔法の鎧をつける時普通の服が邪魔になる為だ。

 胸は膨らみ、それ以外の上半身は少し華奢だが、お尻と太ももはしっかりしており、しきりに髪をいじり、顔を隠す姿はとても女性的だ。

「い、一緒に、さ、サウナに入るのですぅ!」
「大丈夫か?もう辛そうだけど?」

「大丈夫なのですぅ」

 ダイヤは生まれたままの姿になり、一緒にサウナに入る。
 何段階も飛ばして無理をしすぎだと思うけど、大丈夫かな?

 2人でサウナに入るが、ダイヤは俺に見られるたびに反射的に顔を手で覆って、それから手を後ろで組んだ。

「あの、体は隠さないのか?」
「体より顔が恥ずかしい、ですぅ」
「そろそろ出ないか?」

「大丈夫……です」
「いや、出よう」

「大丈夫、ですぅ」

 そう言いながらダイヤの体が倒れていく。
 俺はダイヤを抱きかかえて、ベッドに眠らせた。



 ダイヤが目を覚ます。

「迷惑をかけました。すみません」
「いや、良いんだ今日は休もう」

 俺がベッドから離れようとすると、ダイヤが俺の手を掴んだ。

「……え?」
「エムルに聞いたです。女は、男に○○××して貰えば本当の顔を見せても大丈夫だと」
「エムルの言う事は信じない方がいい!」
「間違っているかも、しれないです。でも、ここで出来る可能性はすべて試す、です!」

 それから俺とダイヤは何度も1つに重なった。



 ◇


 終わってみて思うのは、明らかにエムルの思想が入りすぎている。
 ダイヤはベッドですやすやと眠っている。

 朝日に照らされてダイヤの髪が7色に輝き、乱れた髪がきれいに反射する。
 ダイヤ、可愛かったな。
 鎧を解除したダイヤはとても従順で、ずっと恥ずかしがりながらも俺と1つになろうとし続けた。
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