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第95話
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俺達は3階に入った。
「この階はスキルの試練を受けられる、と書いてあったのだ」
辺りを見渡すと白いタイル張りの空間が広がっており、ベッドが1つ置かれてある。
「あのベッドに横になることで試練を受ける事が出来るのだ。だが、失敗すれば心を壊すとも書いてあったのだ。最初は私がやるのだ」
「いや、俺が行く」
俺は走ってベッドに向かった。
後ろで皆が騒ぐが、俺は気にせずベッドに入る。
俺は、こういう事以外出来る事が無い。
ベッドに入ると一瞬で意識を失う。
これは、転生前の記憶。
俺は物心ついたころから親に怒られていた。
父や母は自分では出来ない割に俺には厳しい、そう言う人間だった。
両親はテレビを見ては政治の悪口を言い、芸能人の悪口を言い、会社の悪口を言う。
俺は両親に褒められた記憶があまりなく、親は俺の事を道具のように見ている。
そう思えた。
おじいちゃんの家に行くと俺は可愛がられた。
おじいちゃんにだけは心を開いていたが、中学校に上がる時、おじいちゃんは病気で亡くなった。
俺は大学に行けず、それでも何とかサラリーマンになって、転勤になったタイミングで何とか家を脱出した。
親のストレスが無くなると、会社のストレスに目が向くようになっていた。
「おい!ノルマが遅れている!どうするんだ!」
上司が怒鳴る。
『どうするんだ!』
その言葉は日付が変わるまで残業をつけずに働けと言う意味だ。
俺は残業も休日出勤の申請も出来ないまま働いた。
毎日働き、目立たないようにする事で上司に目を付けられないようにする。
力を発揮できないが、会社の拘束時間はあまりに長い。
日本によくある体質の会社だ。
最悪ではない。
もっとつらい目に合っている人はいっぱいいる。
そう思いながら上司に怒りを溜め、ついに爆発した。
「おい!どうするんだ!」
その瞬間に俺は言い返した。
「ああ!どうするんだってなんだ!お前がやらない仕事をいつものように俺にやらせたいんだろ?ならそう言えよクズが!」
そして俺は左遷された。
新しい白髪交じりの上司が出迎える。
お互いに自己紹介を終えると新しい上司が言った。
「君はパワハラ部長に噛みついたようだね」
「はい、組織であればどんなに理不尽でも謝るのが当然ですが、感情を制御できませんでした」
俺が頭を下げると上司が笑って言った。
「褒めているんだよ。確かに出世するならそうする方がいい。でも、出世しても給料が2倍、3倍になるわけじゃないんだ」
「はあ、そうですね」
「いきなりこんな話は良くなかったね。これからよろしく頼むよ」
「よろしくお願いします」
新しい上司はやりやすかった。
サービス残業が毎日2時間ほどあるけれど、それ以上は残らせないし、休日出勤もさせなかった。
新しい上司はパソコンが苦手ではあったが、うまく仕事を割り振りして、上司の仕事をこなしていた。
孫とおじいちゃんほど年齢は離れていたが、上司とは一緒に食事に行くほど仲が良くなっていた。
ある日俺が両親の話をすると、上司の顔が曇った。
「俺、おかしい事言いました?」
「いや、批判ではないんだ。分かってもらえるように説明できるか分からないんだよ」
「言って欲しいです」
上司は少し考えて、コーヒーを啜ってから話し出した。
「確かに政治や世の中には問題があるんだ。でも、原因を自分の物として考えないと苦しくなってくるんだよ。分かるかな?」
「……いえ」
「うん、そうだね。例えば政治が悪いと言い続ける人生だと、自分で何かできる事があってもそれをしない人生になってしまうんだ。でも、自分のせいと考えると、自分で出来る事を探して変えて行けるようになるんだ。人のせいにするなとかそう言う話じゃないんだ。人のせいにすると苦しくなるんだよ」
「なんとなく、分かってきましたが、まだもやっとしています」
「うん、具体的に僕の話をするよ。僕は政治や世の中には問題があると思っている。でも、この日本に住むと決めたのは自分なんだ。だから日本で自分の人生が良くなる為に出来る事を考えたんだ。妻が死んでからは車を手放し、安くて小さいアパートに引っ越して、ネットで契約できる安いプランのスマホに契約を変えたんだ。いらない物を捨てて持ち物も生活費も身軽になっていった」
上司はコーヒーを飲む。
俺は上司の言葉を黙って聞いた。
その話が、俺にとってとても大事なことに思えた。
「次に投資を始めたんだ。今動画で調べると誰でもできるNISAやインデックス投資、高配当投資のやり方は分かるようになっているから調べて実践したよ。そして副業を始めたんだ。昔に始めたのが良かったのか、月5万円程度ではあるけど稼ぐことが出来ているよ」
「人のせいにせず、自分の責任にした方が苦しくないし、そのおかげで経済的に身軽になれた、と言う事ですね?」
「うん、そうだよ。人を責め立てる快楽もあるけど、それは一瞬なんだ。人の足を引っ張って引きずり下ろしても終われば貧乏な自分がいるだけなんだ。人を引きずり下ろしても自分が上に行けるわけじゃないんだよ」
「俺は、自分を変えようと思ってこなかったです。今まで政治が悪いと思っていましたが、自分の責任で何が出来るか考えてみようと思います。すぐに調べ物をしたい気分です」
「うん、その気持ちは大事だよ。国が悪い、政治が悪い、ではないんだ。自分がどう豊かに生きて行けるかを考えて行動すると、本当に変わっていくんだ。今日は解散にしよう」
俺はすぐ家に帰ってネットで調べた。
スマホの契約、今住んでいる賃貸住宅、俺にも変えられる事はある!
俺はその日のうちにスマホの契約変更を進め、部屋にある使っていない物をかたずけ、掃除して行く。
気が付けば、朝になっていた。
「この階はスキルの試練を受けられる、と書いてあったのだ」
辺りを見渡すと白いタイル張りの空間が広がっており、ベッドが1つ置かれてある。
「あのベッドに横になることで試練を受ける事が出来るのだ。だが、失敗すれば心を壊すとも書いてあったのだ。最初は私がやるのだ」
「いや、俺が行く」
俺は走ってベッドに向かった。
後ろで皆が騒ぐが、俺は気にせずベッドに入る。
俺は、こういう事以外出来る事が無い。
ベッドに入ると一瞬で意識を失う。
これは、転生前の記憶。
俺は物心ついたころから親に怒られていた。
父や母は自分では出来ない割に俺には厳しい、そう言う人間だった。
両親はテレビを見ては政治の悪口を言い、芸能人の悪口を言い、会社の悪口を言う。
俺は両親に褒められた記憶があまりなく、親は俺の事を道具のように見ている。
そう思えた。
おじいちゃんの家に行くと俺は可愛がられた。
おじいちゃんにだけは心を開いていたが、中学校に上がる時、おじいちゃんは病気で亡くなった。
俺は大学に行けず、それでも何とかサラリーマンになって、転勤になったタイミングで何とか家を脱出した。
親のストレスが無くなると、会社のストレスに目が向くようになっていた。
「おい!ノルマが遅れている!どうするんだ!」
上司が怒鳴る。
『どうするんだ!』
その言葉は日付が変わるまで残業をつけずに働けと言う意味だ。
俺は残業も休日出勤の申請も出来ないまま働いた。
毎日働き、目立たないようにする事で上司に目を付けられないようにする。
力を発揮できないが、会社の拘束時間はあまりに長い。
日本によくある体質の会社だ。
最悪ではない。
もっとつらい目に合っている人はいっぱいいる。
そう思いながら上司に怒りを溜め、ついに爆発した。
「おい!どうするんだ!」
その瞬間に俺は言い返した。
「ああ!どうするんだってなんだ!お前がやらない仕事をいつものように俺にやらせたいんだろ?ならそう言えよクズが!」
そして俺は左遷された。
新しい白髪交じりの上司が出迎える。
お互いに自己紹介を終えると新しい上司が言った。
「君はパワハラ部長に噛みついたようだね」
「はい、組織であればどんなに理不尽でも謝るのが当然ですが、感情を制御できませんでした」
俺が頭を下げると上司が笑って言った。
「褒めているんだよ。確かに出世するならそうする方がいい。でも、出世しても給料が2倍、3倍になるわけじゃないんだ」
「はあ、そうですね」
「いきなりこんな話は良くなかったね。これからよろしく頼むよ」
「よろしくお願いします」
新しい上司はやりやすかった。
サービス残業が毎日2時間ほどあるけれど、それ以上は残らせないし、休日出勤もさせなかった。
新しい上司はパソコンが苦手ではあったが、うまく仕事を割り振りして、上司の仕事をこなしていた。
孫とおじいちゃんほど年齢は離れていたが、上司とは一緒に食事に行くほど仲が良くなっていた。
ある日俺が両親の話をすると、上司の顔が曇った。
「俺、おかしい事言いました?」
「いや、批判ではないんだ。分かってもらえるように説明できるか分からないんだよ」
「言って欲しいです」
上司は少し考えて、コーヒーを啜ってから話し出した。
「確かに政治や世の中には問題があるんだ。でも、原因を自分の物として考えないと苦しくなってくるんだよ。分かるかな?」
「……いえ」
「うん、そうだね。例えば政治が悪いと言い続ける人生だと、自分で何かできる事があってもそれをしない人生になってしまうんだ。でも、自分のせいと考えると、自分で出来る事を探して変えて行けるようになるんだ。人のせいにするなとかそう言う話じゃないんだ。人のせいにすると苦しくなるんだよ」
「なんとなく、分かってきましたが、まだもやっとしています」
「うん、具体的に僕の話をするよ。僕は政治や世の中には問題があると思っている。でも、この日本に住むと決めたのは自分なんだ。だから日本で自分の人生が良くなる為に出来る事を考えたんだ。妻が死んでからは車を手放し、安くて小さいアパートに引っ越して、ネットで契約できる安いプランのスマホに契約を変えたんだ。いらない物を捨てて持ち物も生活費も身軽になっていった」
上司はコーヒーを飲む。
俺は上司の言葉を黙って聞いた。
その話が、俺にとってとても大事なことに思えた。
「次に投資を始めたんだ。今動画で調べると誰でもできるNISAやインデックス投資、高配当投資のやり方は分かるようになっているから調べて実践したよ。そして副業を始めたんだ。昔に始めたのが良かったのか、月5万円程度ではあるけど稼ぐことが出来ているよ」
「人のせいにせず、自分の責任にした方が苦しくないし、そのおかげで経済的に身軽になれた、と言う事ですね?」
「うん、そうだよ。人を責め立てる快楽もあるけど、それは一瞬なんだ。人の足を引っ張って引きずり下ろしても終われば貧乏な自分がいるだけなんだ。人を引きずり下ろしても自分が上に行けるわけじゃないんだよ」
「俺は、自分を変えようと思ってこなかったです。今まで政治が悪いと思っていましたが、自分の責任で何が出来るか考えてみようと思います。すぐに調べ物をしたい気分です」
「うん、その気持ちは大事だよ。国が悪い、政治が悪い、ではないんだ。自分がどう豊かに生きて行けるかを考えて行動すると、本当に変わっていくんだ。今日は解散にしよう」
俺はすぐ家に帰ってネットで調べた。
スマホの契約、今住んでいる賃貸住宅、俺にも変えられる事はある!
俺はその日のうちにスマホの契約変更を進め、部屋にある使っていない物をかたずけ、掃除して行く。
気が付けば、朝になっていた。
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