ゲーム序盤で死ぬモブ炎使いに転生したので、主人公に先回りしてイベントをクリアしたらヒロインが俺について来た

ぐうのすけ

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第73話

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【ルンバ視点】

 ゲットは金無しか。
 来て損をした。

 まったく、折角ライターをあの時助けてやったのにお礼が無いのか。
 私に金を渡すのが当然なのに。

 後ろを歩くゴールデンオークがぶつぶつと声を出す。

「食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!わせろ!食わせろ!」

 こいつは燃費が悪い。
 魔物を倒して手に入れられる金を食べさせ続けないと、テイムの効力を超えて私を攻撃するようになる。

 ゲームでは気にしていなかったけど、代償が大きい。
 金が欲しいのにこいつは金を食いすぎる。
 金を与えないと私を殺して食おうとする。

 ゴールデンオークの戦闘力はかなり高いのに、私も魔物を狩って食べさせないとこいつは狂化したように俺を攻撃しだす。
 金、私とこいつに食べさせて余るほどの金が必要だ。

 だが、時間が無い。

「食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!食わせろ!わせろ!食わせろ!」

 王都に行く前に、ゴールデンオークに食わせる金が尽きてしまう。
 一旦中継地点のノースシティで魔物を狩るか。

 しかし、ゲームと違って、ノースシティが遠い。
 ゴールデンオークはよだれを垂らして私を見る。

 寒気がした。
 そろそろまずい!後ろから噛みつかれて食い殺されてしまう!



 ルンバは強力な使い魔を手に入れたが、大きな代償を受けていた。




【ゲット視点】

「奪う者をノースシティに移住させる案だったな」
「そうなのだ、もう根回しは終わっているのだ」

 もうすでに『奪う者』の選別は終わっている。
 エステルの魔眼・ライターとの面接・エムルのスケルトンでの監視・更に村のみんなの元に出来るだけ足を運ぶことで、誰がズルをしているかはすぐに分かった。

 最も、母さんの情報網だけで、大体の事は分かるが、ミスがあってはいけない。
 ズルをする奪う者は慎重に見極めた。

  その上で奪う者の給金を下げ、この領地が貧乏であることを伝え、更にノースシティの方が給金が高い点も伝えた。
 そして移住してくれれば30万ゴールドの支度金を支払う事も約束した。


 更に、ノースシティに向かう無料の馬車とエムルのスケルトン護衛もつけ、『奪う者』を乗せた馬車はノースシティに向けて旅立った。

 俺は馬車を見送りため息をついた。

「はあ、やっと終わったか。思ったよりノースシティへの移民反対者が少なかったな」

 ライターが答える。

「奪う者の特徴なのだが、自分だけはまともで、他人は仕事をしていないと思っている。そして、うまくいかなければ他人のせいにするのだ。奪う者はこう思っているのだろう。自分が評価されないのはこの村が悪いと。そして、自分では努力せず、人をあごで使おうとするのだ」

 ライターは不思議そうに俺の顔を見た。

「どうした?」
「ノースシティに奪う者を追い出す件は反対されると思っていたのだ」

「それか、そうだな。俺は転生前も奪う者の被害にあって、転生してからはダストの対処に失敗してゼスじいを失った。そして、ダストの記憶でも奪う者を放置する事で会社が動物園のようになっているのを知った。それと、ゼスじいの言葉が大きい」

「自分と、その家族だけは守ってほしい、か」
「そうだ、ノースシティに奪う者を押し付ける結果になっても、どんなことをしてでも家族を守ろうと思った。レベルを上げて、修行してみても、俺はそこまで強いわけじゃない」

「強くないと言う事は無いと思うのだが?」
「失敗しているからな。出来る事は何でもやる。俺は与える者ではない。バランスを取る者だからな。善と悪、両方を持っているし、悪には悪で対応させてもらう。俺は今まで甘かったんだと思う。日本は法律がしっかりしているけど、それでも奪う者がいて被害を受けてきた。日本のやり方じゃダメだ」

「この村をどうするか答えは出たのかね?」
「奪う者を排除する。そしてその悪役は俺が引き受けて強引に進める。それだけだ」

 奪う者がいなければ組織はうまくいく。
 ライターから教わったがそれが組織において重要だ。

 『能力を持った奪う者』と、『新入で能力を持っていない与える者』がいた場合、新人を教育して働いてもらった方が組織はうまくいくらしい。
 何故なら、能力を持った奪う者はその能力を自分の利益を総取りするために使い、組織を疲弊させ、利益を上げる事をしないからだ。

 自分だけはまともだと思い込み、人を批判するだけで何もしないダストの様な者を排除し続ける。
 幸い、そのような者は奪うべきパイがある所に群がる。
 
 俺は奪う者には居心地が悪く、それ以外の者には居心地の良い村を作ろう。




 その頃、ノースシティ行きとなった奪う者たちはご機嫌だった。

 冒険者の男たちが馬車の中で笑い声を上げる。

「がはははは!俺達にも運が向いてきたぜ!始まりの村、ありゃ駄目だな。魔物を倒してもクエスト報酬を貰えねえ。ったく、俺様が魔物を折角倒してやってるのによお!魔物を倒した時の金だけじゃ割に合わねえぜ。普通なら追加で謝礼があるのが当然だぜ。体を張って魔物を倒している俺様に対する敬意が足りねえんだよ!」

「それ以前に冒険者が多すぎるんだ!おかげで村を出ても魔物が中々出てこねえぜ!魔物を狩る為には、奥地まで進んでキャンプしねーとまともに狩りも出来ねえ!」

「英雄が村を統治するって聞いて来て見りゃ全く儲けがでねえぜ。ゲットか、あいつは無能だな」
「だがよお、1人30万ゴールドを貰って、ノースシティまで無料で馬車まで出すと言ってるが、金が足りねえよな。始まりの村にいるよりゃマシだから受け取りはしたがよお!」

「まったくだぜ、300万は欲しい所だぜ、桁が1つ小さいんだよ!」



 こうして、ノースシティに移民した冒険者はゲットの悪口を言い続けてノースシティに到着した。

 だが、冒険者はそこで現実を突きつけられる。
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