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第63話
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【万能のゼス視点】
風の斬撃でワシのプロテクトはあっという間に切れた。
「プロテクト!ヒール!」
「無駄だよ!」
よけることはできんのう。
MPも底をついてきたわい。
プロテクトは消費がきつい。
体が動かなくなるのは悔しい。
すぐにMPが無くなるのが悔しい。
じゃが、
「はあ、はあ、プロテクト!はあ、はあ、そんなものかの!ガルウイン!やはりその程度の魔法しか使えんか!ワシのようなおいぼれごときを殺す事も出来んか!疾風のガルウインの名が泣いておるわ!」
最後の魔法じゃ!
もう、避ける事も、魔法で防ぐことも出来ん!
「ゼスううううううううう!うるさいなああ!」
ワシは攻撃を受け続けた。
【エステル視点】
ああ!ガルウインを挑発して、ゼス卿は魔法を使わせている。
わたくしがゲットを癒すと信じて、ゲットを生かすためにゲットの弱点を消そうとしている。
わたくしにゲットを癒すように言ったその顔を見てすぐに分かった。
ゼス卿は、死ぬ気だ。
ゲットに託して死ぬ気だ。
『おいぼれの自分だけが死んで、皆を助ける』
そう思っている。
これが、万能のゼス。
お父様が信頼するゼス・オールラウンダー卿。
わたくしは、ゲットに会った時のことを走馬灯のように思い出す。
初めて会った時から、ゲットの事が好きだった。
わたくしは魔眼の力を持っていた。
ゲットがどういう人間かはすぐに分かった。
だからすぐ好きになった。
思えば、ゲットと会う前から好きになることは決まっていたと思う。
わたくしは光魔法も中途半端で固有スキルも訓練が中途半端、王族として生まれ、基礎訓練を教わり、クレアや斥候のエマと一緒にやる気満々で村や街をめぐって思い知らされた。
『わたくしは弱い』
ゲットと会って、ゲットはすでにはるか遠くの道のりを進んでいた。
剣術に秀でたクレア、斥候も、双剣術にも優れたアリシア、4人で旅をしてからもわたくしの劣等感は消えない。
困っている皆を助けようとやる気になっていたわたくしは、おいて行かれるような焦燥感を覚えていた。
裏ダンジョンに行った時もわたくしが足を引っ張り、ゲットは悲しそうな顔でわたくしを見る。
ゲットやアリシアのおかげでレベルだけは上がる。
でも、スキルが追い付いてこない。
『ゲットに置いて行かれたくない』
その不安からわたくしはゲットを囲い込むように婚姻を迫った。
魔眼の力で嫌われていないのは分かっていた。
わたくしは焦っていた。
この醜い感情はゲットに一生言わず生きていくだろう。
そんな中で、ゼス卿と出会った。
わたくしと同じ光魔法を得意とし、ゲット・クレア・アリシアと違い、特別な戦闘用の固有スキルも持っていない。
ゼス卿の教えを受けて光魔法を球体上に保つ訓練を受ける。
「はあ、はあ、この、訓練を続ければ、ゲットに追いつけるのでしょうか?」
「どうかのう?ゲットはのう、5歳の頃からワシの訓練を受けておった。ひたすら基礎を積み上げ、メイスを振り、盾で防ぎ、炎の球体を作る訓練をひたすら続け、数えきれん魔物を倒して来たんじゃ」
わたくしはショックを受けた。
わたくしが出来ないのは戦いの固有スキルが無いから、ゲットの炎強化のような戦闘に役立つスキルが無いから仕方がない。
そう思いたかった。
でも違った。
ゲットは努力して高みに至った。
わたくしはただ努力が足りないだけ。
「エステル、安心するんじゃ。魔眼の力を持ち、光魔法を使えるならゲットについていくことは出来るんじゃ。魔眼の力は本質を見極めるんじゃ。魔眼を発動しつつ、光の球体をどうすれば維持できるか考えながら訓練を続けるんじゃ。魔眼を使いすぎたらヒールで目を治す事で、急速にLVを上げられるんじゃ」
ゼス卿の近くを見ると、魔眼の本が5冊重なって置かれていた。
わたくしを訓練するために調べ直してくれたのが分かった。
「どうして、わたくしの為にそこまでしてくださるのですか?」
「ワシは自分の為にやっているんじゃ。ワシはゲットの子供の顔が見たい。それがワシの夢じゃ。ん、失礼な事を言ってしまったの」
「い、いえ!安心して欲しいのですわ!ゲットの子を産みますわ!」
私は現実に引き戻された。
ゲットを助けたい。
ゼス卿が死のうとしている。
ゲットを癒す事が出来れば、ゼス卿は助かる!
『エクスヒールを習得しました』
エクスヒールを使う瞬間に魔眼を使う。
エクスヒールの本質を理解した。
『エクスヒールのLVが上がりました』
「エクスヒール!」
ゲットの傷が治っていく。
まだ、足りない。
後1回、ここで倒れてもいい。
足りないMPは、生命力を燃やして使えばいい。
「エクスヒール!」
ゲットは目覚めて、わたくしを抱きかかえる。
「エステル、無理をさせたな。クレア!アリシア!エステルを守ってくれ!」
【ゲット視点】
俺は前に出る。
「ゼスじい!もう大丈夫だ!」
ゼスじいはメイスを地面に突き刺して、その上に手を置いた。
俺はゼスじいを追い越して真っすぐガルウインを見る。
「こっぽー!死にかけてもまた来るんだね!」
「ガルウイン、決着をつけよう」
「こっぽー!もうついているよね!?僕が勝って終わりだよ!それはネタで言っているのかな!?」
ガルウインは剣を抜いた。
俺はメイスと盾を構える。
俺は、ガルウインに向かい、最短距離で歩いていく。
風の斬撃でワシのプロテクトはあっという間に切れた。
「プロテクト!ヒール!」
「無駄だよ!」
よけることはできんのう。
MPも底をついてきたわい。
プロテクトは消費がきつい。
体が動かなくなるのは悔しい。
すぐにMPが無くなるのが悔しい。
じゃが、
「はあ、はあ、プロテクト!はあ、はあ、そんなものかの!ガルウイン!やはりその程度の魔法しか使えんか!ワシのようなおいぼれごときを殺す事も出来んか!疾風のガルウインの名が泣いておるわ!」
最後の魔法じゃ!
もう、避ける事も、魔法で防ぐことも出来ん!
「ゼスううううううううう!うるさいなああ!」
ワシは攻撃を受け続けた。
【エステル視点】
ああ!ガルウインを挑発して、ゼス卿は魔法を使わせている。
わたくしがゲットを癒すと信じて、ゲットを生かすためにゲットの弱点を消そうとしている。
わたくしにゲットを癒すように言ったその顔を見てすぐに分かった。
ゼス卿は、死ぬ気だ。
ゲットに託して死ぬ気だ。
『おいぼれの自分だけが死んで、皆を助ける』
そう思っている。
これが、万能のゼス。
お父様が信頼するゼス・オールラウンダー卿。
わたくしは、ゲットに会った時のことを走馬灯のように思い出す。
初めて会った時から、ゲットの事が好きだった。
わたくしは魔眼の力を持っていた。
ゲットがどういう人間かはすぐに分かった。
だからすぐ好きになった。
思えば、ゲットと会う前から好きになることは決まっていたと思う。
わたくしは光魔法も中途半端で固有スキルも訓練が中途半端、王族として生まれ、基礎訓練を教わり、クレアや斥候のエマと一緒にやる気満々で村や街をめぐって思い知らされた。
『わたくしは弱い』
ゲットと会って、ゲットはすでにはるか遠くの道のりを進んでいた。
剣術に秀でたクレア、斥候も、双剣術にも優れたアリシア、4人で旅をしてからもわたくしの劣等感は消えない。
困っている皆を助けようとやる気になっていたわたくしは、おいて行かれるような焦燥感を覚えていた。
裏ダンジョンに行った時もわたくしが足を引っ張り、ゲットは悲しそうな顔でわたくしを見る。
ゲットやアリシアのおかげでレベルだけは上がる。
でも、スキルが追い付いてこない。
『ゲットに置いて行かれたくない』
その不安からわたくしはゲットを囲い込むように婚姻を迫った。
魔眼の力で嫌われていないのは分かっていた。
わたくしは焦っていた。
この醜い感情はゲットに一生言わず生きていくだろう。
そんな中で、ゼス卿と出会った。
わたくしと同じ光魔法を得意とし、ゲット・クレア・アリシアと違い、特別な戦闘用の固有スキルも持っていない。
ゼス卿の教えを受けて光魔法を球体上に保つ訓練を受ける。
「はあ、はあ、この、訓練を続ければ、ゲットに追いつけるのでしょうか?」
「どうかのう?ゲットはのう、5歳の頃からワシの訓練を受けておった。ひたすら基礎を積み上げ、メイスを振り、盾で防ぎ、炎の球体を作る訓練をひたすら続け、数えきれん魔物を倒して来たんじゃ」
わたくしはショックを受けた。
わたくしが出来ないのは戦いの固有スキルが無いから、ゲットの炎強化のような戦闘に役立つスキルが無いから仕方がない。
そう思いたかった。
でも違った。
ゲットは努力して高みに至った。
わたくしはただ努力が足りないだけ。
「エステル、安心するんじゃ。魔眼の力を持ち、光魔法を使えるならゲットについていくことは出来るんじゃ。魔眼の力は本質を見極めるんじゃ。魔眼を発動しつつ、光の球体をどうすれば維持できるか考えながら訓練を続けるんじゃ。魔眼を使いすぎたらヒールで目を治す事で、急速にLVを上げられるんじゃ」
ゼス卿の近くを見ると、魔眼の本が5冊重なって置かれていた。
わたくしを訓練するために調べ直してくれたのが分かった。
「どうして、わたくしの為にそこまでしてくださるのですか?」
「ワシは自分の為にやっているんじゃ。ワシはゲットの子供の顔が見たい。それがワシの夢じゃ。ん、失礼な事を言ってしまったの」
「い、いえ!安心して欲しいのですわ!ゲットの子を産みますわ!」
私は現実に引き戻された。
ゲットを助けたい。
ゼス卿が死のうとしている。
ゲットを癒す事が出来れば、ゼス卿は助かる!
『エクスヒールを習得しました』
エクスヒールを使う瞬間に魔眼を使う。
エクスヒールの本質を理解した。
『エクスヒールのLVが上がりました』
「エクスヒール!」
ゲットの傷が治っていく。
まだ、足りない。
後1回、ここで倒れてもいい。
足りないMPは、生命力を燃やして使えばいい。
「エクスヒール!」
ゲットは目覚めて、わたくしを抱きかかえる。
「エステル、無理をさせたな。クレア!アリシア!エステルを守ってくれ!」
【ゲット視点】
俺は前に出る。
「ゼスじい!もう大丈夫だ!」
ゼスじいはメイスを地面に突き刺して、その上に手を置いた。
俺はゼスじいを追い越して真っすぐガルウインを見る。
「こっぽー!死にかけてもまた来るんだね!」
「ガルウイン、決着をつけよう」
「こっぽー!もうついているよね!?僕が勝って終わりだよ!それはネタで言っているのかな!?」
ガルウインは剣を抜いた。
俺はメイスと盾を構える。
俺は、ガルウインに向かい、最短距離で歩いていく。
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