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第32話
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王が玉座に座り、声を上げる。
「皆の者、楽にせよ。話し方も普段通りでかまわん」
俺・アリシア・ダストは頭を上げて王を見る。
エステルとクレアは王のサイドにずらりと並ぶ重鎮と共に立つ。
「ゲット、大盗賊ギルスの討伐、そして始まりの村を発展させた功績、更には……」
王は俺が立ち寄った村や街の魔物退治とエステルのレベルアップをサポートした件を丁寧に読み上げた。
勇者ダストは『くそが!』と呟いていた。
「続いて勇者ダスト」
ダストはどや顔で俺を見た。
「お前は特に何もしていない。それどころか始まりの村を追い出されたと聞く。今後は自分の行いを反省し、皆に喜ばれる善行を積むよう心がけるのだ」
ダストの顔が怒りで歪む。
「俺は活躍してきた!」
「ほう?何をしたというのだ?」
「俺は魔物を狩ってみんなの脅威から救ってやった!」
「どこの魔物を狩ったのだ?」
「魔物を倒しつつ旅をしてきた!」
「ただ、前に出た魔物を狩っただけか?それでは救ったことにはならん」
「違う」
「どう違うのだ?」
「俺は多くの魔物を狩って来た」
「どこでどの程度狩ったのだ?誰に喜ばれる事をしたのだ?」
王はダストの発言を潰す気で言っている。
重鎮が勇者ダストを見る目が厳しい。
恐らく斥候から悪い報告を受け取ったのだろう。
王はクズ向けの対応をしている。
そして、王を守る近衛がダストから王を守るように前に出ている。
「見えない所でやっているんだ!」
「勇者ダストは皆に喜ばれる事をしていないと、そういう事で良いのだな?」
「違う!」
「才能値が上がったか見たいのだが、確かすべてBランクだったな?魔物を倒し、善行を積んだなら才能値は大きく上昇しているはずだ。ステータスを開示するのだ
「へ、俺様はこの国の秘密兵器だ。手の内を見せる気はねーよ」
なんで見せないんだよ!
強化された才能値を見せればいいだけだろ!
助けたならステータスを開示すれば済む話だ!
訳が分からない!
善行を積んでいないと言っているように見えるだろ!
その後、王は丁寧に勇者ダストと対話を続けた。
いや、対話になっていない。
王と他の重鎮はダストの言動を注意深く見ている?
いや、王が勇者ダストの人間性をみんなに教えている、そう感じた。
会議をして教えるより実際に見せた方が早い。
これでダストは王城内部でも狂人確定だな。
◇
「話にならんな。もうよい。続いては北のアイアンレッド帝国がこのマイルド王国に攻め入ってきた件に入る。
六将クグツ率いる軍が北部辺境伯の統治する城を落とした。
これにより王国北部は帝国に占領され、苦しい状況が続いておる。
人口比で10倍の国力を持つ帝国は、我らを滅ぼすつもりだ」
もうクグツが攻めてきたか。
戦争中なのはゲームと一緒だけど……
ゲームより帝国の動きが早いのかもしれない。
「へ!簡単じゃねーか。俺がクグツを倒してきやるよ!」
「……どうやって倒すのだ?」
「俺に兵をよこせ!そうすれば余裕で倒せんだよ!」
「どうやって倒すか聞いたのだが答えんか。まあ良い。兵は出せない。邪魔だけはせず黙っているのだ」
「やってやるよおおおおおおお!クグツなんて中盤に出てくる雑魚だ!俺一人で倒してやるよおおお!ゲットおおおお!勝負しろおおお!!」
「ダストよ。勝負は認めない。おとなしくしているのだ」
「やってやるよおおおお!」
ダストは怒って謁見の間を出て行った。
「……話を続ける」
王はダストを無視して話を続けた。
「ゲットはどう思う?」
「水門が使えれば、川を決壊させてその隙に攻め入る」
「どのように攻めるのだ?」
「隠し通路があればそこから奇襲を仕掛けたい」
ちなみにこれはゲームのストーリーに出てくるイベントだ。
「素晴らしい。
あの地は水門を決壊させることで城に打撃を与えることが出来る。
更に隠し通路の存在まで知っているとは、さすがゼスの厳しい訓練を10年以上受けただけはある。
うむ、水門の決壊と隠し通路からの奇襲、これなら行けるかもしれん」
王の言葉にすぐクレアが動く。
「すぐに物資の準備を進めます!」
「おお!さすがゼス殿の弟子だ!」
「いや、ゼス殿以上かもしれん」
「しかも、上級魔法のエクスファイアまで使いこなすらしいですぞ!」
「なんと、それは頼もしい」
重鎮たちが話を始めた。
俺が褒められるよりゼスじいが尊敬されているのが伝わってきて嬉しい。
「今から会議を始める!会議室に移動する!ゲットにもぜひ参加をお願いしたい」
俺は会議に参加した。
次の日にはクグツに取られた城を取り返すため軍が編成されて俺達はクグツ戦の占拠する城攻めに参加する事になった。
俺はクグツ戦とため軍と一緒にクグツの元に向かって歩いている。
「さすがですわね」
「何がだ?」
「会議での発言も、どう攻めるかの発想も素晴らしいですわ」
「ゼスじいから習ったことを言っただけだ」
ゲームの知識で攻略法は知っていたし、ゼスじいに色々学んでいた。
『城攻めには3倍の兵力が必要じゃ』とか『相手の虚を突くのが大事じゃ』と、暇があると色んな事を教えてくれたし、戦い方も教えてくれた。
ゲーム知識&ゼスじいの歴史や兵法のおかげで会議の発言は簡単に出来た。
「私はゲットが何を言っているか良く分からなかったにゃあ。難しい事は苦手だにゃあ」
「ゼスじいのおかげだ」
俺は、褒められつつクグツ戦に向かうが、城に到着してから知ることになる。
勇者が俺達の足を引っ張っている事を。
「皆の者、楽にせよ。話し方も普段通りでかまわん」
俺・アリシア・ダストは頭を上げて王を見る。
エステルとクレアは王のサイドにずらりと並ぶ重鎮と共に立つ。
「ゲット、大盗賊ギルスの討伐、そして始まりの村を発展させた功績、更には……」
王は俺が立ち寄った村や街の魔物退治とエステルのレベルアップをサポートした件を丁寧に読み上げた。
勇者ダストは『くそが!』と呟いていた。
「続いて勇者ダスト」
ダストはどや顔で俺を見た。
「お前は特に何もしていない。それどころか始まりの村を追い出されたと聞く。今後は自分の行いを反省し、皆に喜ばれる善行を積むよう心がけるのだ」
ダストの顔が怒りで歪む。
「俺は活躍してきた!」
「ほう?何をしたというのだ?」
「俺は魔物を狩ってみんなの脅威から救ってやった!」
「どこの魔物を狩ったのだ?」
「魔物を倒しつつ旅をしてきた!」
「ただ、前に出た魔物を狩っただけか?それでは救ったことにはならん」
「違う」
「どう違うのだ?」
「俺は多くの魔物を狩って来た」
「どこでどの程度狩ったのだ?誰に喜ばれる事をしたのだ?」
王はダストの発言を潰す気で言っている。
重鎮が勇者ダストを見る目が厳しい。
恐らく斥候から悪い報告を受け取ったのだろう。
王はクズ向けの対応をしている。
そして、王を守る近衛がダストから王を守るように前に出ている。
「見えない所でやっているんだ!」
「勇者ダストは皆に喜ばれる事をしていないと、そういう事で良いのだな?」
「違う!」
「才能値が上がったか見たいのだが、確かすべてBランクだったな?魔物を倒し、善行を積んだなら才能値は大きく上昇しているはずだ。ステータスを開示するのだ
「へ、俺様はこの国の秘密兵器だ。手の内を見せる気はねーよ」
なんで見せないんだよ!
強化された才能値を見せればいいだけだろ!
助けたならステータスを開示すれば済む話だ!
訳が分からない!
善行を積んでいないと言っているように見えるだろ!
その後、王は丁寧に勇者ダストと対話を続けた。
いや、対話になっていない。
王と他の重鎮はダストの言動を注意深く見ている?
いや、王が勇者ダストの人間性をみんなに教えている、そう感じた。
会議をして教えるより実際に見せた方が早い。
これでダストは王城内部でも狂人確定だな。
◇
「話にならんな。もうよい。続いては北のアイアンレッド帝国がこのマイルド王国に攻め入ってきた件に入る。
六将クグツ率いる軍が北部辺境伯の統治する城を落とした。
これにより王国北部は帝国に占領され、苦しい状況が続いておる。
人口比で10倍の国力を持つ帝国は、我らを滅ぼすつもりだ」
もうクグツが攻めてきたか。
戦争中なのはゲームと一緒だけど……
ゲームより帝国の動きが早いのかもしれない。
「へ!簡単じゃねーか。俺がクグツを倒してきやるよ!」
「……どうやって倒すのだ?」
「俺に兵をよこせ!そうすれば余裕で倒せんだよ!」
「どうやって倒すか聞いたのだが答えんか。まあ良い。兵は出せない。邪魔だけはせず黙っているのだ」
「やってやるよおおおおおおお!クグツなんて中盤に出てくる雑魚だ!俺一人で倒してやるよおおお!ゲットおおおお!勝負しろおおお!!」
「ダストよ。勝負は認めない。おとなしくしているのだ」
「やってやるよおおおお!」
ダストは怒って謁見の間を出て行った。
「……話を続ける」
王はダストを無視して話を続けた。
「ゲットはどう思う?」
「水門が使えれば、川を決壊させてその隙に攻め入る」
「どのように攻めるのだ?」
「隠し通路があればそこから奇襲を仕掛けたい」
ちなみにこれはゲームのストーリーに出てくるイベントだ。
「素晴らしい。
あの地は水門を決壊させることで城に打撃を与えることが出来る。
更に隠し通路の存在まで知っているとは、さすがゼスの厳しい訓練を10年以上受けただけはある。
うむ、水門の決壊と隠し通路からの奇襲、これなら行けるかもしれん」
王の言葉にすぐクレアが動く。
「すぐに物資の準備を進めます!」
「おお!さすがゼス殿の弟子だ!」
「いや、ゼス殿以上かもしれん」
「しかも、上級魔法のエクスファイアまで使いこなすらしいですぞ!」
「なんと、それは頼もしい」
重鎮たちが話を始めた。
俺が褒められるよりゼスじいが尊敬されているのが伝わってきて嬉しい。
「今から会議を始める!会議室に移動する!ゲットにもぜひ参加をお願いしたい」
俺は会議に参加した。
次の日にはクグツに取られた城を取り返すため軍が編成されて俺達はクグツ戦の占拠する城攻めに参加する事になった。
俺はクグツ戦とため軍と一緒にクグツの元に向かって歩いている。
「さすがですわね」
「何がだ?」
「会議での発言も、どう攻めるかの発想も素晴らしいですわ」
「ゼスじいから習ったことを言っただけだ」
ゲームの知識で攻略法は知っていたし、ゼスじいに色々学んでいた。
『城攻めには3倍の兵力が必要じゃ』とか『相手の虚を突くのが大事じゃ』と、暇があると色んな事を教えてくれたし、戦い方も教えてくれた。
ゲーム知識&ゼスじいの歴史や兵法のおかげで会議の発言は簡単に出来た。
「私はゲットが何を言っているか良く分からなかったにゃあ。難しい事は苦手だにゃあ」
「ゼスじいのおかげだ」
俺は、褒められつつクグツ戦に向かうが、城に到着してから知ることになる。
勇者が俺達の足を引っ張っている事を。
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