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第56話 ジョーカーの思惑

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【ジョーカー視点】

 ゴブリンの本拠地。
 ゴブリンキングの前に僕とゴッズオが立ち、その後ろには小隊長クラスが並ぶ。

 遅れて血を流したゴブリンが到着した。

「はあ、はあ、遅れて、すいません」
「……何があった?」
「人間どもに、後れを取ってしまいました」

 その瞬間にキングのひざ掛けに力が入りみしみしと軋み割れていった。

「無事で何よりだ。休め」
「問題ありません」
「休め」
「大丈夫です」
「3度言わせるな」

 ゴッズオが叫ぶ。

「休め! キングの言葉に従え!」

 負傷したゴブリンが後ろに下がってい行く。
 いいタイミングでキングを怒らせることが出来た。

 人間どもを誘導しておいて良かった。
 あのゴブリンは最高の仕事をした。
 これでキングは首を縦に振る、もう小細工は必要無いか。


「ソウコウゲキヲシカケヨウ」
「……」

 キングは黙って話を聞いた。

「俺も賛成だ」

 ゴッズオも僕の言葉に同意する。

「オーク、リザードマンとキョウリョクシテイッキニセメヨウ」
「……総攻撃を仕掛ける、だがゴブリンだけでやる」

 全員が頭を下げてキングの言葉に従った。
 ち、思ったようには行かないか。
 だが、総攻撃の決断は悪くない。

 ロックショットの様な戦力の小出しはしない。
 殺る時は圧倒的な物量で一気に叩く。
 これだけで多くの戦術を無効化出来る。

「サイゴニ1ツダケホウコクガアルヨ」

 キングは黙って話を促した。

「テンセイシャノアソビニンハヤッカイダ。キサクヲツカウ」
「……お前とどっちが厄介だと思う?」

 力も、知略も今は僕の方が上ではある。
 だが、転生して間もないはずのあの遊び人は急速に力をつけている。
 戦う頃にはもっと強く、ずる賢くなっている可能性もある。
 遊び人ユウタは油断できない。

「ボクヨリ、ヤッカイカモシレナイ」

 その瞬間にキングのオーラが膨れ上がり、不気味に笑った。
 後ろにいたゴブリンが恐怖でザワザワと動く音がした。

「俺にやらせて欲しい」
「ジョーカーより厄介かもしれない相手に、お前だけでか?」
「奇策ではジョーカーには劣る。だが戦いで後れを取りはしない!」

「ハナシガナガクナリソウダ。ボクハゴブリンヲシュウケツサセルヨ」

 キングとゴッズオは似ている。
 こうなれば最後には殴り合いで決めるか、それともキングが譲るかどっちかだ。
 遊び人ユウタ、僕が倒す必要は無い。
 僕が倒してもいいしそうでなくてもいい、要は倒せればいいのだ。

 僕はだらだらと汗をかくゴブリンに命令した。

「スベテノゴブリンヲツレテコイ!」

 ゴッズオとキングのオーラにひるんだゴブリンは喜んでここを出て行った。

 遊び人ユウタ、あいつだけは油断できない。
 確実に殺す!!



 あとがき
 1章が長すぎて反省しております。
 次からもっと短めの章をいくつも作る予定です。
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