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第40話 ステーキ

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【トンテキ王子視点】

「暑い」
「いい天気でそこまで暑くはないかと」
「魔法使いを呼べ」
「魔法使いは氷魔法の使い過ぎで魔力切れです」

「ふー、ふー、ふー、何で僕がこんな田舎に行かなきゃいけないんだ?」
「……もし退屈でしたら外を歩いてみるのもよろしいかと。そよ風が気持ちいいですよ」
「歩くのは民の仕事だ。僕は歩かない」
「……ご自分で氷魔法を使われるのはどうでしょう?」

「僕は魔法使いの王子だ。華麗に戦い魔物を打ちのめすためにいる」
「トンテキ王子、魔物がいます。魔法使いが活躍するチャンスです」

「痩せた魔法使いゴブリンか。僕が出る必要はない」
「で、でも、背が高いですよ。雰囲気がおかしいです」

「食い物をよこせええええ!俺はロックショットだあああああああ!」
「まさか狡猾なロックショット!この国にいるゴブリンのエースです」

「は!ゴブリン!雑魚か!」
「いやいやいやいや!ゴブリンは個体差が大きいんですって!人と同じでやばい個体もいるんです!」
「お前らが倒せ。僕は気分が乗らない」

「俺の言う事を聞く気が無いか。ロックガトリング!」

 ドガガガガガガガガガガガガガガガガ!

 馬車が壊れ、中に岩が飛んでくる。
 轟音と兵の悲鳴で素早く馬車の影に隠れた。
 ロックショットが荷車を物色しながら言った。

「立ち去れ!次は殺す!」

 僕は即座に判断した。
 次撃たれたら死ぬ。

「シュバイン!」

 土で出来た豚のゴーレムが股下に出現する。

「シュバイン!逃げろ!」

「お、王子!待ってください!負傷兵がいるんです!王子!」
「王子!どこに行くんですか!?」

 僕は食料都市マリンを目指して走った。


 ◇


 シュバインの効果が切れて歩いてマリンを目指す。

「都市が見える。もう少しだ。ふー!ふー!ふー!ふー!」

 そこで7人の冒険者が歩いて来た。

「どうした?」
「ぼ、僕はリンク帝国の第三王子だ。僕をあの都市まで運べ!」
「確かに身なりは王子だ。でも、王子なのに部下はいないの?」

「感知の結果、近くに人はいないです」
「今だな」
「リーダーがやってください」

「……何の話をしている?」
「いや、気にしなくていい」

 嫌な予感がした。

「貴様ら!僕はリンク帝国第三王子!トンテキ王子だぞ!」
「知ってる」

 僕の視線が急速に回転して地面で止まった。

 何が起きた?

 首が、斬られた!刀で斬られた!?

 なんで?
 

「骨まで全部焼いといて」
「イグニッション!」

 僕が、焼ける。
 意味が分からない。
 
 意識が、無くなる。


 トンテキ王子の死は魔物と勇敢に戦い名誉の戦死を遂げた、そのように広まった。



【ユウタ視点】

 じゅうううううう!

「ステーキですよ!」

「うまい!」
「ユウタさん、喜んでくれて嬉しいです。1枚ずつ焼くのでみんなも順番にどうぞ」

「ステーキを食べるとご馳走って感じがするよな」
「まあ、牛肉じゃなくて安い豚肉なんですけどね」
「十分美味しい。こんなに快適だと、ずっとここに住めそうな気がする」

「サーラ様、お客さんです」
「中にお招きしましょう」

 女性が入って来ると言った。

「サーラ様、トンテキ王子が魔物と戦い名誉の戦死を遂げました」

 消されたか。

「そして、帝国は各国との友好を重んじる声明を出しました」

 アイアン王国を出てアクア王国に行ってトンテキ王子が死んだけど気にしなくていいよって事か。

「表に出ても問題ありません」
「準備をして食料都市マリンに帰りますわよ」
「王は皆さんの援助を続ける用意があると言っていました」

「……いえ、援助は不要ですわ」
「はい、伝えておきます」
「よろしくお願いしますわね」

「さ、皆さん、食事が終わったら準備をしますわよ」
「「はい!!」」

 俺達は地上に出て徒歩で旅を始めた。
 無駄な物を持たず、皆の負担にならないようにした。

「ユウヤ、そのバックパックはさすがに大きすぎますわ」

 俺は背負うと膝の裏から頭の上までの大きさがあるバックパックを背負っている。

「皆のテントと調理器具だけは俺が持ちたいから」
「馬を1頭だけでも買い直しますわ」
「もったいないもったいない。それにさ、俺体力不足でもっと鍛えておきたいから。さあ、行こう!」
「……お願いしますわね。はあ、商人が欲しいですわね」

「サーラ様、援助は本当に良かったんですか?」
「ええ、今ならみんな冒険者として立派にやって行けますわ」
「皆立派になったと思う」

「そう言えば、スキルをまだ使っていませんわね?」
「使っていいのか?音が出て魔物が寄って来るかもしれないけど?」
「やめておいた方が良いですわね」
「皆で無事に帰ろう!そうなったらスキルを使う!」

 俺は元気に歩き出した。
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